大人絵本の嗜み 村上春樹が翻訳したいと思った絵本を読み漁る

2019/11/11
N田 N昌

毎年ノーベル文学賞の発表が近づくと、にわかに注目を集めるのが村上春樹さまでございます。受賞は逃したものの、春樹さまの作品は出版されると必ずベストセラーとなり、世界中で翻訳されております。

つい先日も、春樹さまの作品を20年以上にわたってデンマーク語に翻訳してきた翻訳家のメッテ・ホルムさまの活動を追ったドキュメンタリー映画「ドリーミング村上春樹」が日本で公開になりました。

春樹さまの小説は世界で50を超える言語に訳されているとか。春樹さまが翻訳文学に果たした役割はゴイスーに大きいのでございます。

そんな春樹さま、実は翻訳されてばかりではございません!

春樹さまが絵本の翻訳をされているのをご存知でございましょうか……。

ご存知の方は、きっとこの絵本では。

「おおきな木」(作・絵:シェル・シルヴァスタイン 訳:村上春樹 出版社:あすなろ書房)

ロングセラー絵本でございます。木と少年が同じ時間を過ごし、それぞれ成長していく姿を哲学的に表現した絵本でございます。

出版社の紹介文には、「いつでもそこにある木。成長し、変わっていく少年。それでも木は、少年に惜しみない愛を与え続けた・・・何度でも読み返したい、シルヴァスタインのロングセラー絵本」、こう綴られております。

絵に描いたような“大人絵本”でございます。人によって、また、読んだタイミングによって様々な解釈、感じ方のできる絵本でございます。

同じ映画を二度見た時、違った感想を持つことがございますが、あの感覚が楽しめる絵本でございます。春樹さまも訳者あとがきで、こう綴っておられます。

「物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。」と。

ちなみに、こちらの「おおきな木」を読まれたことのある方は是非、翻訳が春樹さまではない方の「おおきな木」と読み比べて頂きたいのでございます。

「おおきな木」(作・絵:シェル・シルヴァスタイン 訳:ほんだ きんいちろう 出版社:篠崎書林)

こちらは、ほんだきんいちろう翻訳の「おおきな木」。1976年に篠崎書林より出版されております。春樹さまの新訳「おおきな木」が出版される34年前でございます。

ほんだきんいちろう翻訳の「おおきな木」は、図書館に行けば置いてあるはずでございます。もちろん、村上春樹翻訳も置いてあります。

翻訳(テキスト)で、どのくらい伝わり方が違うのか楽しむのも、大人絵本の楽しみ方のひとつでございます。

ちなみに、ほんだきんいちろう翻訳の方が子供に寄せて翻訳している感じがいたしました。是非、ご自身の目でお確かめくださいませ。

ほんだきんいちろう翻訳本は、書店で買うことができませんが、古本はネット上で購入可能でございます。本棚に2冊並べて置いておくのが大人の贅沢でございます。もちろん、原書がその隣にあれば、さらにシャレオツかと。

そうそう、原作は1964年にアメリカで出版されております。38か国で販売、累計売上部数は、900万部。世界的なロングセラーでございます。

原作者のシェル・シルヴァシュタインは、作家とイラストレーターだけでなく、グラミー賞受賞歴もあるシンガーソングライターでもございます。

村上春樹翻訳の絵本は、これだけではございません。

アメリカで最も権威のある児童書の賞「コールデコット賞」を2度も受賞しているアメリカの絵本作家で、映画化された「ジュマンジ」「ポーラー・エクスプレス(急行「北極号」)」の作者でもあるクリス・ヴァン・オールズバーグの絵本の翻訳も数多く手がけておられます。

いかにも春樹さまらしい作品でございます。春樹さまが翻訳したいと思うような絵本でございます。大人が楽しめる、大人だから楽しめる絵本でございます。

是非、“オールズバーグ”“春樹”“絵本”で検索してみてくださいませ。

大人にオススメな春樹翻訳絵本、秋の夜長のお供にいかがでございましょう。

(文:絵本トレンドライター N田N昌)

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この記事を書いた人

N田 N昌

放送作家・ナンセンス絵本マニア 「有田とマツコと男と女」「レゴニンジャゴー(アニメ)」 「天才テレビくんMAX」「小島慶子のオールナイトニッポンGOLD」 など、テレビ・ラジオ番組の構成脚本を担当。

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