熊本地震発生時に「かかりつけ医院」を利用できなかった人は約5人に1人! 災害時に心強い「くまもとメディカルネットワーク」とは?

2019/03/22
マガジンサミット編集部

医療・看護・介護等の施設をネットワークで結びサービスに活かす「くまもとメディカルネットワーク」の事業主体である熊本県医師会は、10~70代の熊本県民500名を対象に2016年に発生した「熊本地震」に関する調査を実施。2度にわたって最大震度7を記録した「熊本地震」からまもなく3年が経過しようとしている今、あらためて「災害医療」について考えるための県民の声を紹介している。

地震発生時に「かかりつけ医院」

同調査では、はじめに「熊本地震の発生後2週間以内に、ご自身または周囲(家族・友人・知人)で医療機関を利用した人はいましたか?」と質問したところ、約3人に1人(34%)が「いた」と回答。そのうち「自分自身が医療機関を利用した」人は32%、「家族が医療機関を利用した」人は37%にのぼった。

また、自分や家族が震災発生後に利用した医療機関について聞くと、「かかりつけ医療機関以外を受診した」と回答した人が約5人に1人(19%)という結果に。その理由としては「かかりつけの医療機関自体が被災していて医療サービスが受けられない状況だった」が57%で最多となり、「混雑していて受診をあきらめたから」(19%)、「かかりつけの医療機関が、その時いた場所から遠かったから」(19%)、「かかりつけの医療機関とは診療内容が異なったから」(14%)、「救急搬送など重篤な患者が優先されたから」(10%)といった回答も見られた。

災害時に「かかりつけの医療機関を利用できなかった」という経験を持つ人が少なくなかった状況が浮き彫りになっている。

震災後の「体調不良」率は約6割も…

さらに、震災時にケガなどだけではなく「体調不良」を感じた人の割合も58%と約6割にのぼった。具体的な症状としては「不眠」(65%)、「地震酔い」(62%)がツートップとなり、以下は「頭痛」(19%)、「食欲不振」(19%)と続いている。また、車中泊や避難所生活の影響などで「エコノミー症候群」を発症した人も6%にのぼっている。

体調不良を感じた人が多いにもかかわらず、その約9割(88%)は「医療機関に行かなかった」と回答。その理由としては、「自分よりも優先すべき重篤な患者がいると思った」(45歳・男性)、「出先で地震に見舞われる不安や恐怖があった」(52歳・女性)、「電気が復旧せず、どの医療機関が使えるかの情報が届かなかった」(18歳・女性)などの声が上がっている。

子どもの4人に1人が体調不良

また、18歳未満の子どもを持つパパ・ママからは「子どもが体調不良を訴えた」という声も約4人に1人(26%)にのぼった。体の不調だけでなく「心の不調が心配になった」と答えた人も60%と多く、震災後はさまざまな面で医療・看護のケアが重要になることがうかがえる。

震災後は被災者に対して、医療的ケアを必要とする子どもを中心とした小児在宅支援などのケアを国が実施していたが、こうした取り組みに対して住民からは、「子どもは心がナイーブだが、どういうケアをしたらいいかわからないのでこういった取り組みは心強く、重要だと思う」(31歳・女性)、「子どもたちを第一にケアしてもらえるのは、親として一番ありがたく心強い」(50歳・女性)、「実際に、避難所にいた孫のところにもスタッフの人が聴き取りに来てくれた。話を聞いてもらうだけでも安心する部分があった」(71歳・男性)と評価する意見が寄せられた。

最後に「熊本地震」から3年が経過しようとしている今、あらためて「震災により、医療の重要性を実感しましたか?」と聞くと、75%が「そう思う」と回答。震災をはじめとした有事の際にも、各機関がスムーズな連携を行い、被害に迅速に対応できる医療提供体制が求められているようだ。

各医療機関が連携する「くまもとメディカルネットワーク」を強化

熊本県では震災を機に「災害医療」が進化しており、そのひとつが、医療・看護・介護等の施設をネットワークで結びサービスに活かすシステム「くまもとメディカルネットワーク」の強化。

「くまもとメディカルネットワーク」とは、地域包括ケアシステム実現のために病院・診療所・歯科診療所・介護施設・訪問看護ステーション・薬局などの利用施設をネットワークで結び、患者である参加者の診療・調剤・介護に必要な情報を共有することで、医療・介護サービスに活かすシステム。熊本県医師会のほか、熊本県、熊本大学医学部附属病院から成る「熊本県地域医療等情報ネットワーク連絡協議会」が運営している。

熊本在住であれば加入施設に「同意書」を提出するだけで参加が可能。申し込みの費用も無料(診療費・調剤費・介護費等の自己負担分は通常と同様)。

同ネットワークでは「県民の皆様には、有事の前に『くまもとメディカルネットワーク』に加入していただくことで、災害時でも、事故や救急の時でも、より適切かつスピーディーな処置を受けることが可能に。また、平時はかかりつけ医と専門医との連携や、在宅医療介護の現場で担当者どうしのスムーズな連携協力につながります。さらに、自分の医療機関受診や検診のデータを蓄積する『パーソナルヘルスレコード』の役割も果たします」と、災害時でも適切かつスピーディーな処置を実現する地域包括ケアシステムの重要性を説明している。

▼「くまもとメディカルネットワーク」ホームページ 

http://kmn.kumamoto.med.or.jp/

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