あと10分歩くだけで健康も医療費も変わる?18万人データが示した「プラス1,000歩」の意外な効果

2026/06/01
マガジンサミット編集部

2026年5月29日、住友生命保険相互会社と株式会社JMDCは、共同で作成した『プラス1,000歩がもたらす健康増進白書』を発表した。

約59万人分の歩数データと約18万人分の医療・健診データを組み合わせた国内最大級の分析により、「1日1,000歩増やすだけでも健康診断の数値改善や医療費の低減につながる可能性」が示された。

発表会では歩数と健康の関係に加え、運動を習慣化する仕組みや、歩くことで寄付につながるユニークな取り組みも紹介された。

18万人のデータが示した「歩く人」と「歩かない人」の差

住友生命データサイエンスオフィサーの藤澤陽介氏は、今回の分析の特徴について「日本人の実データを用いて大規模に検証した点にある」と説明した。

一般的に健康診断の数値は加齢とともに悪化していく傾向がある。しかし、歩数が増加した人とそうでない人を比較すると、BMIや血圧、脂質、血糖値、肝機能などの項目で明確な差が現れたという。

歩数が1,000歩増加した人は、各種健診値の改善割合が高く、逆に歩数が増えていない人は数値が悪化する傾向が見られた。藤澤氏は「BMI、血圧だけでなく脂質、肝機能、血糖値、尿蛋白など、ほぼすべての項目で改善が確認された」と語る。

さらに医療費との関係も明らかになった。年間平均歩数が5,000〜6,000歩未満の人と、8,000〜9,000歩未満の人を比較すると、自己負担医療費には年間8,000円以上の差があった。1万歩以上歩く人では、その差はさらに広がるという。

発表資料によると、歩数の増加は健診値の改善だけでなく、三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)の入院発生率や入院医療費を約4割低減する可能性も示された。

「あと1,000歩ならできそう」が行動変容の鍵

発表会では、なぜ「1,000歩」に着目したのかも紹介された。

藤澤氏は、国内外の研究で「1,000歩の増加」が健康リスク低減につながる可能性が示されていることを紹介。その上で今回、日本人約18万人のデータを用いて検証を行ったと説明した。

一方、JMDC 執行役員の坂井康展氏は、「いきなり8000歩や1万歩を目標にすると続かない人が多い。しかし1000歩なら現実的に取り組める」と話す。

1,000歩はおよそ10分、距離にすると600〜700m程度。住友生命 上席執行役員の工藤征夫氏は「銀座から新橋まで歩くくらいの距離」と例えた。

健康づくりというと高い目標を掲げがちだが、今回の分析結果は「少しだけ歩く量を増やすこと」の積み重ねでも十分な効果が期待できることを示している。

また、住友生命とJMDCが連携して実施したウォーキングイベントでは、参加者の平均歩数が1日あたり約1,200歩増加したという。イベント終了後も歩数は大きく落ち込まず、一定程度維持されていたことから、継続的な取り組みが習慣化につながる可能性も見えてきた。

健康づくりを支える「ごほうび」の仕組み

住友生命が展開する健康増進プログラム「Vitality」では、歩数や運動量に応じてポイントを獲得できる。

利用者は週ごとの目標を達成するとルーレットに挑戦でき、スターバックスのドリンクチケットやコンビニ商品の引換券などの特典を受け取ることができる。こうした仕組みは、運動を「やらなければならないこと」ではなく、「続けたくなること」に変える工夫だ。

工藤氏は、保険でリスクに備えるだけでなく、「健康になる行動そのものを後押しすることが重要」と説明する。

パネルディスカッションに登壇したランニングアプリ「Runtrip」を運営するラントリップ代表取締役の大森英一郎氏は、「我慢して健康になるのではなく、楽しんだ結果として健康になる世界をつくりたい」と語った。

歩数や運動量に応じて達成感やごほうびを得られる仕組みは、健康行動を継続するための工夫の一つといえそうだ。

歩くことが寄付にもつながる

Vitalityには、獲得した特典相当額を寄付に回せる機能も用意されている。

例えば、カフェチケットや商品引換券を受け取る代わりに、日本赤十字社やWWFなどへ寄付できる仕組みだ。この取り組みによる累計寄付額は、すでに10億円を突破したという。

藤澤氏は、「自分のお金を直接支払うのではなく、運動によって得た特典を寄付できるため、心理的な負担が少ない」と分析する。

2024年の能登半島地震の後には寄付人数や寄付額が大きく増加したことも紹介され、日常の健康行動が社会貢献につながる仕組みとして機能していることが示された。

健康を続けたくなる仕組みづくり

今回の発表では、歩数と健康の関係だけでなく、運動を継続するための仕組みづくりにも焦点が当てられた。

住友生命が展開するVitalityでは、運動の継続を後押しする仕組みや、累計10億円を超える寄付機能を展開している点も特徴的だ。

健康づくりを「我慢」ではなく「続けたくなる仕組み」で支える。今回の発表は、そんな新しい健康増進のあり方を示す内容だった。

住友生命「Vitality」特設ページ:https://vitality.sumitomolife.co.jp/

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