
音楽制作を軸に、映像作品向けの音楽制作、アーティストプロデュース、ライブ活動まで領域を広げる株式会社彩クリエイション。代表取締役CEO・宮崎諒氏は、エンジニアから音楽家へと転身し、自らの表現をビジネスへと昇華させてきた。「個性で勝つ」という思想のもと、クリエイターの力を最大化する組織づくりにも挑戦している。音楽に魅了された原体験から起業に至るまで、その軌跡と未来像に迫る。
音楽に魅了された原体験と表現の原点
音楽との出会いは、私の人生にとって決定的な転換点でした。中学生の頃に聴いた音楽に強い衝撃を受け、「自分もこの表現の世界に関わりたい」と切望したのがすべての原点です。それまで漠然としていた将来のイメージが、その瞬間に一気に輪郭を持った感覚がありました。
そこからバンド活動にのめり込み、地元・長野のライブハウスで開催したワンマンライブは、見事ソールドアウトを記録しました。あのとき初めて、音楽で人の感情を動かせるという手応えをつかみ、「これで生きていきたい」と本気で決意したのです。
同時に、映画から受けた影響も無視できません。私自身、映画に救われた経験が何度もありました。落ち込んでいるときや前を向けないときに、スクリーンの向こう側に背中を押され、次第に「自分もこの世界を構成する側に回りたい」と願うようになったのです。音楽は単なる娯楽ではなく、人生に寄り添い、映画という作品全体の印象を決定づける重要な役割を担っている。その事実は、今の私の創作活動の根底にあります。
大学で情報工学を専攻し、その後はソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを歩みました。そこで培った論理的思考や構造的な設計視点は、現在の音楽制作にも確実に活きています。技術と感性。その両方を持つことが表現の幅を広げ、ビジネスにおける大きな武器になっています。

エンジニアから起業へ、選択の積み重ね
2020年、フリーランスの作曲家として活動を始めました。しかし、最初から順風満帆だったわけではありません。案件は定着せず、収入面でも不安定な時期が続きました。一度は会社員として働きながら音楽を続ける道を選んだこともあります。不安が常につきまとい、「このままでいいのか」という葛藤が消えることはありませんでした。
それでも歩みを止めなかったのは、「音楽で生きていきたい」という思いが揺らがなかったからです。どんな状況下でも、創作の手を止めることだけはしませんでした。
転機となったのは、少しずつ実績が積み上がり、個人では対応しきれない規模の案件に直面したときです。クライアントの期待値が高まるにつれ、より高次元なクオリティとスピードが求められるようになりました。そこで初めて、個人の限界を超えた「チームによる制作体制」の必要性を痛感したのです。より大きな価値を世の中に提供するため、私は2024年に会社を設立しました。
法人化は単なる形式的な手続きではなく、挑戦のフェーズを引き上げるための大きな決断でした。背負う責任は増大しましたが、それに比例して、実現できる可能性も大きく広がりました。現在は少人数のコアチームで動いていますが、外部のクリエイターとも柔軟に連携しながら、案件ごとに最適なチームを組成しています。個人のクリエイティビティと組織の機動力を掛け合わせることで、より大きな成果を創出できる体制が整いつつあります。
「個性」が武器になる組織と、その先の未来像
組織づくりにおいて私が最も大切にしているのは、「個性の最大化」です。使用するツールや表現スタイル、制作における優先順位は、クリエイターによって千差万別です。それらを無理に型にはめてしまうと、本来の強みが損なわれてしまいかねません。だからこそ、メンバーそれぞれが最高のパフォーマンスを発揮できる環境構築を徹底しています。個性を抑えるのではなく、むしろ研ぎ澄ますことこそが、企業の強力な競争力になると信じているからです。
一方で、チーム共通の指針としているのが「期待を上回る提案」です。単にオーダーに応えるだけではなく、クライアントに「そこまで踏み込んでくれるのか」と驚きを与えられるアウトプットを目指しています。その実現のため、制作前段階のヒアリングやコンセプト設計には惜しみなく時間を割きます。クライアントの言葉の裏にある潜在的なニーズまで深くくみ取ることが、本質的な価値提供の第一歩となるからです。こうした積み重ねが深い信頼を生み、継続的なパートナーシップへと発展していくのだと考えています。
現在は映像音楽やアーティストプロデュース、ライブ活動と多角的な展開に注力しています。異なる文化や価値観の中で、自分たちの音楽がどう響くのかを探究することは、大きな糧となっています。今後は、個性を持つクリエイターが集まり、より大きな社会的インパクトを生み出せる組織へと成長させていきたいです。「音楽を通じて世界を彩る」。このミッションを胸に、私たちは常に進化しながら挑戦を続けます。

【取材協力】
株式会社彩クリエイション
代表取締役CEO 宮崎 諒
https://irodori-creation.com/






