ラグジュアリーからエコノミーまでさまざまなグレードのホテルでハウスキーピングを担ってきたグローバルゲイツ。新型コロナウイルスの感染拡大当初から高い清掃技術で防疫対策に取り組んできた経験を生かし、米国の清掃業界が制定した感染症対策の国際認証制度「GBAC STAR」の普及にも取り組んでいる。清掃会社として新型コロナ対策の最前線を見てきた梅村真行代表取締役社長に、世界基準の感染対策を聞いた。
パンデミックの最前線で得た自信
同社が感染症対策に乗り出すきっかけは2020年2月、国内で最初に新型コロナの集団感染が発生したクルーズ船の乗組員が地上で宿泊するホテルの清掃を担当したことだった。当時、作業していた自衛隊や保健所、医師らから話を聞き、感染症対策マニュアルを作成し、その後、単なるハウスキーピングだけではなく新型コロナに対応する防疫・除菌業務の事業を独自で始めた。
さまざまな施設の除菌作業を行った実績から、21年に開催された国際スポーツイベントで、選手の宿泊施設や競技会場の除菌や清掃、さらに感染症対策についてのレクチャーも行った。梅村社長は「どの施設においてもクラスターを出さずに済んだことが自信につながっている」と胸を張る。
梅村社長が感染防止対策と同時に経済活動を進めるウィズコロナ時代のカギになると注目したのが、世界的な感染症対策の認証制度「GBAC STAR」だ。「GBAC STAR」は、米国の清掃業界団体「国際衛生供給協会(ISSA)」で、施設の感染症対策の運営基準を提唱する「GBAC」が新型コロナ対策として創設したもので、ホテルや会議場などの施設が新型コロナウイルスなどのリスクを最小限に抑え、事業運営するためのプログラムで、コンベンションセンターなどの大規模な施設だけでなく、飲食店といった小規模施設まで業種別にチェック項目が細分化されているのも特徴だという。
新型コロナ対策として始めた防疫事業から「GBAC STAR」を知り、日本での正式代理店として認証申請のサポートなどをスタートした。「多くの人が、自分たちはきちんと対策を行っているといわれると思いますが、世界基準と照らし合わせて認証を取ることで、それを証明することが可能ですし、客から見た感染対策のバロメーターにもなります。
新たな感染症の情報共有などもあり、より早く対応できるのも強みです。変異株が生まれるたびに経済を止めるくらいなら、ウィズコロナでリスクを減らすための感染対策をより強度に行っていくしかない。そういった対策の基準を目に見える形で表示できる」と認証制度の意義を語る。
キレイを創るソリューションを提供し続けたい
日本代理店として、「GBAC STAR」の普及に努める同社では、防火責任者が必要な施設全てが認証を取得することが将来的なビジョンだ。梅村社長は「どの施設でも同じような感染対策ができれば、陽性者やクラスターは減っていくはず。そうした対策がウィズコロナ時代の日本には必要です。予防だけでなく、発生した際の対応やリカバリー作業までの基準が定められているので、施設内で感染が広まってしまった場合も営業再開できるめどを明確に示せる。導入する企業が増えれば経済活動が停滞しない」と強調する。
元々総合商社として設立された同社は約10年前から清掃事業を手がけるようになった。コロナ禍を経て新たに医療業界にも参入した。「キレイを創るソリューションを提供し続けたい」と語る梅村代表は、「設立当初からのポリシーは“人と環境にいい商材しか扱わない”ことです。新しい分野でチャレンジできるように、“キレイを創る会社”としてドメインを広げました。
“清掃会社”と固定してしまうと、若い社員のやりたいことの芽を摘み取ってしまう可能性がある。ドメインを広げておけば、今回のコロナ禍で防疫・除菌作業の事業を始めたように、さまざまなジャンルでの“キレイ”が作れるのではないかと思っています」と語る。
旅行サイトへのプロモーションなどで「GBAC STAR」認証の認知向上に取り組むなど、世界基準の感染対策を日本のスタンダードにするための挑戦は続く。
※週刊エコノミストWEB企画『ビジネスクロニクル』から転載。
元記事:https://chronicle.weekly-economist.com/person/global-gates.php
■プロフィール
株式会社グローバルゲイツ
https://www.g-gates.com/
代表取締役社長
梅村 真行
1964年、福岡県出身。ニューヨーク大学大学院ホテル経営学修士課程修了後、現地の旅行会社勤務を経て帰国し、ホテル業界や不動産開発などに携わる。2007年、株式会社グローバルゲイツを設立。代表取締役に就任。