創業から100年続く企業の生存率は、わずか0.03%程度と言われています。1万社のうち、わずか3社。これは極めて厳しくも、ロマンに溢れた経営の現実です。
創業55周年という大きな節目を迎える東海住宅グループは、今まさに「地域に深く愛され続ける企業」への進化を目指しています。その揺るぎない指針となるのが、新理念「20年後のありがとうをめざして」です。
この理念を次世代へとつなぐ挑戦の核となるのが、グループ会社「東海住宅MTC」の存在です。親会社が守り抜くべき信頼と、子会社に託された市場を切り拓くチャレンジ。本記事では、分社化に込められた意図と、グループの未来を見据える両代表の真意に深く迫ります
【対談者プロフィール】
松田 亜古(まつだ あこ)
東海住宅株式会社 代表取締役社長(グループ代表)

入社以来20年以上にわたり、不動産営業の最前線と組織運営の要職を歴任。2013年に副社長、2023年に代表取締役社長に就任。創業以来の文化を継承しつつ、経営理念を「20年後の“ありがとう”をめざして」と再定義し、ミッション・ビジョン・バリューへと体系化した。言語化された理念を軸に、持続可能な組織づくりと人材育成、地域価値の創出に情熱を注ぐ。創業者の遺した「東海住宅をつぶさないでくれ」という言葉を胸に、社員が誇りを持てる「地域に愛される企業」の礎を築くべく奔走中。
須浦 宏樹(すうら ひろき)
東海住宅MTC株式会社 代表取締役社長

起業経験を経て独学でITスキルを習得した、異色の経歴を持つ「現場叩き上げ」の不動産プロフェッショナル。東海住宅入社後は、アナログな業界慣習が根強い中で支店長としてIT化を強烈に推進。その実績が認められ、グループ全体のDX推進・ブランディング担当を歴任した。2022年、グループの機動力を極限まで高めるべく設立された「東海住宅MTC」の代表に就任。「デジタルは手段、目的はあくまで人」という信念のもと、リフォーム事業を軸とした「一生涯の顧客伴走モデル」を構築。地元の商店会理事も務めるなど、地域密着を体現する。
「分社化」という攻めの布陣。その根底にある深い信頼
須浦さん: 松田社長、私がMTCの社長に就任して2年が経ちましたね。振り返れば、私が入社した20年前は、共有PCが1台あるだけというアナログな環境に驚き、勝手にパソコンを買い揃えては当時の社長(創業者)に「無駄遣いするな!」と怒鳴られていました(笑)。
松田さん: あの頃の須浦さんの行動力には、父も驚いていました。ですが、その「先見性」があったからこそ、今の私たちのDX基盤がある。2年前、グループの機動力を高めるために分社化する際、須浦さんに代表をお願いしたのは、その「破壊と創造」の力を信じていたからです。
須浦さん: ありがとうございます。当時は「今のままそばで支える形でもいいのでは」と迷いもありましたが、一人の経営者として外に出たからこそ、松田社長が掲げた「20年後の“ありがとう”をめざして」という理念の重みが、より鮮明に理解できるようになりました。
松田さん: 当時は役員の間でも「ずっと一緒にやってきたのだから、今のままでもいいのでは」という意見もありましたね。ですが、今こうして振り返ると、この「適切な距離感」こそが今のグループに必要だったと感じています。
須浦さん: 確かにそうですね。同じ組織の一員としてではなく、今は一人の「経営者」という立場で、松田社長と本音で議論を交わすことができています。経営者ならではの孤独や決断の重みを分かち合える「戦友」のような関係になれた気がいたします。
松田さん: 須浦さんがMTCという機動力のある組織で、リフォーム強化といった新しい試みに挑戦してくださっているからこそ、私は東海住宅本体を含めたグループ全体の「基盤作り」に専念できています。お互いが違う持ち場を守りながら、同じ未来を目指す。理想的な布陣になりましたね。

「見える化」と「理念」。組織を動かす二つの刃
松田さん: 須浦さんは昔から「見える化」にこだわってきましたよね。営業成績の可視化を導入する際も、当初は反対意見もありましたが、結果的には全体の底上げにつながりました。
須浦さん: そうでしたよね。当時から私は、頑張っている人が正当に評価され、課題がある人がそれを自覚できる環境こそが健全だと思っていました。それは今の理念経営にも通じますよね。松田社長が理念を改めて「可視化」し、体系化されたことで、私たちは「何のために働くのか」という拠りどころを得ることができました。
松田さん: 理念は「分かっているつもり」が一番危険です。だからこそ言語化し、再現性を持たせなければならない。「住宅はモノではなく、人生の選択である」という私たちの信念を、いかに現場の行動に落とし込むかが重要です。最近、社員の方から「未来のありがとうを意識して仕事をしたいです」というメールをいただく機会が増え、少しずつですが手応えを感じています。
須浦さん: その「意志」をしっかりと形にしていくのもMTCの役割です。私は、MTCをグループにおける「成功事例」にしたい。現場のニーズを吸い上げ、良いと思ったことは即座に形にする。一方で、松田社長にはグループの羅針盤として、「社長としての意志」をより明確に発信していただきたいと、常々お伝えしています。
松田さん: 須浦さんからはいつも「社員は社長の決断、言葉を待っています。もっと発信してください」と、背筋が伸びるようなアドバイスをいただいています(笑)。

「大企業のような階層」ではない、理想のグループ像を目指して
松田さん: 私が理想としているのは、大企業にあるような「親会社の言うことは絶対」といった階層構造ではありません。出向、転籍したらキャリアが終わる、といったような場所には絶対にしたくないのです。
須浦さん: その点、今の私たちのグループは非常に柔軟ですね。今回も東海住宅からリフォーム拡大のために役員としてMTCへ転籍してくれたメンバーがいますが、会社という箱が違っても、「仲間のために、地域のために働く」という基本姿勢に隔たりはないと思いますね。
松田さん: どちらが偉いということではなく、それぞれがプロとして活躍できる場でありたい。例えば、若手が「新しい事業に挑戦したい」と手を挙げたとき、社長として「わかった、サポートするからやってみなさい」と背中を押せる環境も、これから一緒に創っていきたいと考えています。
須浦さん: 実際に、現場を離れたベテランの方が、今もご自身の好きな時間で働きながら、お客様から「あなたにお願いしたい」と指名を受けているケースが多々あります。そうした「個」が輝き続けられる場所を、MTCでは守り続けていきたいです。

20年後、社員が「この会社で良かった」と思える未来を
須浦さん: 松田社長は今、改めて経営理念の浸透に心血を注いでいらっしゃいます。これは20年先を見据えた「残る組織」にするための、極めて重要な仕事だと感じています。
松田さん: はい。仮に一時的に数字が揺らぐことがあっても、理念という基礎を固めない限り、組織は長く続きません。私にはこの会社を継がせる子どもがいるわけではありません。だからこそ、10年、15年と尽くしてくれた社員たちが、将来「一番いい形」で活躍し続けられる出口を作ってあげたい。それが私の責任だと思っています。
須浦さん:同感です。 「会社を売却して終わり」といった選択ではなく、社員の皆さんの生活と、築いてきた文化を守りながら次世代へ継承していく。松田社長が今、あえてご自身を追い込んで基盤を練り直しているのは、すべて社員の皆さんの未来のためなのですね。
松田さん: 須浦さんという、同じ志を持つ戦友がいるからこそ、この難しい改革もやり遂げられると思っています。
須浦さん: 20年後も、笑顔で「あの時の決断は正しかった」と言い合えるように。これからも松田社長の良きパートナーとして、共に走らせてください。
二人の関係は単なる序列ではなく、同じ志を抱く「戦友」そのもの。「20年後のありがとうをめざして」という言葉を、単なるスローガンで終わらせないための力強い歩みが、そこにはありました。







