衛星画像とAIで自然を「見える化」。NTTグループ、ネイチャーポジティブ事業ビジョンで自然再興をビジネスへ

2026/05/29
マガジンサミット編集部

5月28日、フェアモントホテル東京にて「第13回 NTTグループ サステナビリティカンファレンス表彰式」が開催。2013年から続くこのカンファレンスは、世界17カ国・地域から集まった161の施策の中から、持続可能な社会の実現に貢献する優れた事例を共有し、グループ全社員がサステナビリティ経営を「自分事」として捉えることを目的としている。

今回の表彰式では、厳正な審査を通過した10施策のプレゼンテーションが行われたほか、島田明代表取締役社長より、自然を回復軌道に乗せ、持続可能な社会の実現をめざす「ネイチャーポジティブ」分野において、今後のサービス・事業を推進するためのビジョン「NTTネイチャーポジティブ事業ビジョン」が策定されたことが発表された。

島田社長が発表した「NTTネイチャーポジティブ事業ビジョン」の背景には、世界のGDPの約半分にあたる44兆米ドルが自然資本に依存し、生物多様性の劣化が深刻な経済的リスクを招くという強い危機感がある。NTTグループが掲げたキャッチコピーは「見えなかった自然を、知に換えろ」だ。これは、身近でありながら未知の部分が多い自然の状態を、最新のICT技術で多面的に「見える化」し、ビジネスや社会の意思決定に役立つ情報へと変換することで、自然の回復と経済発展の両立を目指すものである。

具体的なソリューションとして、島田社長は「自然資本モニタリングソリューション」を紹介した。これは衛星画像とAI解析を組み合わせ、現地を訪れることなく広域の植生や動物の分布状況を推定する技術である。既に飲料メーカーが工場の水源となる森の保全計画に活用し、生態系に配慮した森林管理と調査コストの低減を同時に実現している。また、風力発電所における鳥類の衝突(バードストライク)を防ぐため、AIによる検知・識別を自動化するアクション支援も展開する。

発表後の報道陣による質疑応答では、担当者より2030年までに数百億円規模の事業を目指すという具体的な目標が示された。本ビジョンは、若手社員による「社長塾」での提案がきっかけで1年半の歳月をかけて策定されたものであり、若手の熱意がグループ全体の戦略へと昇華された形だ。

市場としては、日本国内だけでなく、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)への対応が先行する欧州を中心としたグローバル展開を視野に入れている。TNFDの枠組みにおける「リスク」の管理はもちろん、NTTの強みである宇宙事業やAI技術を掛け合わせることで、ネイチャーポジティブを「機会」と捉えた新たなビジネス市場を創出していく方針だ。

表彰式のハイライトであるMVPには、優勝賞5施策の内から2つの施策が選出された。一つ目は、NTTデータの「ケアラケア~介護もキャリアも、うまくいく~」である。2030年に約9兆円の経済損失が懸念される「仕事と介護の両立」という社会課題に対し、生成AIを用いた実態調査や介護専門員による伴走支援を提供し、「介護離職ゼロ」という新常識の構築に挑んでいる。

二つ目は、NTTデータ イタリアの「都市計画(Territory Digital Twin)」だ。対象地域をデジタルツイン化してAI分析を行うことで、インフラ開発や投資判断を最適化し、よりサステナブルな都市開発をサポートするプラットフォームである。

閉会の挨拶にて島田社長は、今回発表されたソリューションの多くがAIやデータを活用していることに触れ、AI時代では「いかに人に優しくできるか、人の役に立てるかが重要である」と語った。そして、NTTグループの核心となるコンセプト「Innovating a Sustainable Future for People and Planet(人と地球のための、サステナブルな未来を革新する)」を改めて強調した。

人類が誕生してから約40万年、地球が誕生してから約46億年という壮大な歴史の中で、我々が次の40万年も地球で健やかに過ごし続けるための環境を維持し、次世代へつなげていくこと。そのために、テクノロジーを通じて人と地球の幸福に貢献し続けるという強い決意を示し、式典を締めくくった。

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