南海トラフ地震の危機意識高まるも…災害後の生活再建に備えているのは約30%未満 防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024

2024/12/24
佐藤 勇馬

避けることのできない台風や地震などの災害が続発している昨今、日ごろから防災意識を高めることの重要度が高まっています。

防災・減災活動にも取り組む「こくみん共済 coop〈全労済〉」は2024年11月に防災・災害に関する全国都道府県別意識調査を実施。その結果が12月19日に発表され、自宅近隣の防災訓練において「ほぼ毎回参加する」と回答したのはわずか4.4%、災害後の再建のための備えをしていると回答した人は約30%未満だと判明しました。

■災害に関する意識について

「あなたが一番不安に感じている災害は何ですか」と聞くと、「地震」が68.8%、次いで「洪水や豪雨等の水災」が 8.8%、「台風や竜巻等の風災」が7.9% と、予測が難しい「地震」が圧倒的に高い結果となりました。

どのようなタイミングで在宅時の災害に対する備えを意識するかと尋ねると、一番多かったのが「災害発生の報道を見て」が41%で、「身の回りでの災害発生時」が18.3%、「平時から」14.6%という結果に。都道府県別で「平時から」意識していると回答が多かったのは、静岡・和歌山が22.9%、次いで東京が21.9%、新潟・大分が20%という結果となりました。

直近1年以内に「在宅時」と「外出時」に災害が発生したことを想定した防災対策を行いましたかと聞くと、在宅時の防災対策を「行った」が20.3%、「行っていない」が79.7%となり、外出時の防災対策を「行った」が11.4% で「行っていない」が88.6%といずれも半数以上が「行っていない」との回答。なお「行った」と回答が多かった上位の都道府県は以下の通りです。

「自助」「共助」「公助」のうち、災害時に一番重要だと思うものを聞いたところ「自助(自分の身を自身で守る)」が46.7%、「共助(周りの人と協力し合う)」が39.4%、「公助(国や自治体による公的支援)」が13.9%の結果となりました。

■災害への対策

災害が発生した際の防災対策について項目別に聞いたところ、「平時に備える(災害前に事前に備えたり防災に関する知識の習得や対策を行う)」は全体の27.8%が「できている」と回答。「発災時に守る(災害場所において命を守るべき行動や、避難時に活用できる知識を把握できている)」についてもほぼ同率の28.8%が「できている」と答えました。

一方、「災害後に再建する(災害後、元の生活に再建するために必要な情報を把握できている)」に対して「できている」と回答したのは14.2%で、対策が不足していることが分かりました。

現在、在宅時の災害に対して備えができていると思いますかと聞いたところ「できている」と回答したのは全体の26.6%。都道府県別にみると高い順に和歌山が40%、東京・愛知が39%、次いで熊本が36.2%でした。一方、「できていない」と回答が多かったのは、長崎が68.6%、秋田が65.7%、次いで広島が61.9%という結果になりました。

在宅時の災害の備えについて最も大切だと思うものについては「水や食料の備蓄」が突出して多く44.4%。次いで「家族との連絡手段の確認」が20.8%。以降は「室内での安全確保」12.7%、「防災グッズの用意」9.8%と続きました。全国的に見てもほぼ同様の結果がみられ、全ての都道府県で「水や食料の備蓄」が最も多く選ばれました。

災害後について、保険や共済などによる生活(被災した住宅・家財・車などの資産)再建のための備えをしていますかと質問すると、全体の46.0%が「できていない」と回答。特に20代は55.4%が「できていない」と答えました。

「できている」と回答した理由(複数回答)で最も多かったのは「災害後の生活が不安だから」49.0%、次いで「国や自治体からの支援では不十分だと思うから」が29.9%に。一方「できていない/どちらともいえない」と回答した理由(複数回答)で最も多かったのは「お金がかかるから」46.0%と、経済的な負担を理由にする人が半数近くとなりました。

■コミュニケーションと防災訓練の現状

自宅の地域やマンション等で実施される防災訓練に参加したことはありますかと聞いたところ、「ほぼ毎回参加する」と回答した人はわずか4.4%。全体の64.5%が「一度も参加したことがない」と回答しました。賃貸マンションに住む人は77.2%が「一度も参加したことがない」と答えています。

災害が発生した時に、周囲の人を手助けする(できる)と思いますかと聞いたところ「率先して行うと思う」が全体の8.3%、「余裕があれば行うと思う」が69.0%、「行えないと思う」が22.6%という結果になりました。一方、災害が発生した時に、周囲の人から助けてもらえると思いますかと聞いたところ「助けてもらえると思う」が全体の3.4%、「余裕があれば助けてもらえると思う」が60.2%でした。災害時の「たすけあい」を実現するためには各自が“余裕”を持つことが重要と言えそうです。

■ハザードマップと情報収集

直近1年以内にハザードマップを見ましたかと聞いたところ、全体の47.0%が「見た」と回答。居住地別でみると、愛知が61.9%と最も高く、次いで岡山60.0%、石川59.0%、福岡58.1%、大分57.1%と、直近で自然災害に見舞われた地域が上位に並びました。一方、「見た」割合が最も低かったのは神奈川の36.2%でした。

また、発災時にハザードマップに記載のある避難行動ができると思いますかと聞いたところ、全体の42.5%が「できると思う」と回答。「直近1年以内に、外出時に災害が発生したことを想定した防災対策をした」という人に限れば、64.7%が「できると思う」と回答しており、事前に防災対策を行うことが自信につながる傾向がうかがえます。

■避難所での生活について

災害時にどこへ避難をする予定ですか?と聞いたところ、「地域指定の避難所」の44.8%、「在宅避難(自宅)」の39.7%が大半を占めていました。「在宅避難(自宅)」では、20代が29.4%、30代が38.1%、40代が42.1%、50代が43.4%、60代が45.3%と、年代が上がるにつれの割合が増える結果となりました。

また、熊本は18.1%、新潟や茨城は17.1%と、「車中」の割合が17%を超えています。「親戚や知人宅」との回答は全体では4.4%ですが、多かったのは熊本で11.4%、広島で9.5%でした。東京では1.9%と低い結果となりました。

「地域指定の避難所」と「在宅避難(自宅)」のどちらの割合が高いかを都道府県別に比較したところ、「地域指定の避難所」が高い地域が多く見られましたが、首都圏や東北の太平洋側、九州南部では「在宅避難(自宅)」の割合が高くなりました。

■生活の再建について

災害後も現在住んでいる場所で生活(被災した住宅・家財・車などの資産)再建をしたいと思うか聞いたところ、全体で43.9%が「そう思う」と回答。「そう思わない」は19.4%でした。年代別では、20代は38.9%、60代は52.0%が「そう思う」と回答しました。また、都道府県別で「そう思う」と回答が多かったのは、愛知で59.0%、奈良で55.2%、福島・山口で53.3%でした。

災害後、国や自治体から生活再建に必要な支援が受けられると思うか聞くと、全体では「十分とはいえないが必要最低限の支援が受けられる」が最も多く44.2%。特に、熊本は56.2%、愛知は53.3%、宮城と兵庫は51.4%と災害の被害に遭った地域では高くなる傾向がみられました。

■保険に関する正しい知識について

地震で火災が発生した場合、火災保険の対象になると思いますかと聞いたところ、全体では「対象になると思う」が53.3%、「対象にならないと思う」が46.7%でした。地震が原因による火災は火災保険の対象ではなく、地震保険が(での)対象となるため、半数以上が正しい知識を知らないという結果となりました。

また、地震保険について、正しいものはどれだと思いますかという問いでは、「地震保険単体でも加入できる」「持家しか加入することができない」「地震保険や共済に加入すれば被害が100%カバーできる」「どれも正しくない」「わからない」の5つの選択肢から1つを選ぶ方式で、以下のような結果となりました。

一般的に、地震保険は火災保険に付帯する方式の契約となるため単体では加入できません。地震保険は賃貸物件でも加入することができます。また、地震保険や共済に加入するだけでは被害を100%カバーすることはできません(※地震保険は火災保険の50%まで補償。特約で上乗せすることで100%カバーすることは可能)。

よって正しい回答は「どれも正しくない」となり、全体では22.3%でした。一方、「わからない」は41.8%で、地震保険についての理解度が低い傾向がみられました。年代別に見ると、「どれも正しくない」を選んだ割合は、20代が13.5%と一番低く60代が32.6%と一番高い結果となりました。

■南海トラフ地震について

お住まいの地域の、南海トラフ地震が発生した際の災害予想規模(危険度)を知っていますかと聞いたところ、「知っている」と回答したのは全体の45.2%。「知っている」の割合が高かった都道府県は、和歌山・愛媛が64.8%、高知が62.9%、大分が61.0%でした。

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表に際して、南海トラフ地震を想定した防災対策を家族や職場で議論したことはありますかと聞くと、家族との議論については、全体の21.0%が「発表前から議論していた」、28.4%が「発表前は議論していなかったが、発表後に議論をした」、50.7%が「一度も議論していない」と回答。

職場での議論は全体の13.7%が「発表前から議論していた」、18.8%が「発表前は議論していなかったが、発表後に議論をした」、67.4%が「一度も議論していない」と回答しました。南海トラフに近い地域では議論をしている割合が高く、北海道や東北、関東地方では低い傾向がみられました。

■調査結果総括

調査結果を受けて、こくみん共済 coopは「今回の調査では、被災後の『再建』についても調査しました。その結果、多くの方が住んでいる場所での再建を望んでいるが、保険や共済には経済的な理由などから加入できていないということも分かりました」とコメント。

続けて「また『地震保険』については、持ち家率の高いシニア層においても、正しい知識を持って保険加入などを行っている方は少ないばかりではなく、多くの方が誤認していることも伺えます。災害保障については、正しい知識とライフステージに沿ったプロのサポートの重要性を感じました」と分析しました。

さらに「『共済』とは『みんなでたすけあうことで、誰かの万一に備える』という仕組みです。こくみん共済 coop は、『たすけあい』の考え方や仕組みを通じて『みんなでたすけあい、豊かで安心できる社会づくり』にむけ、皆さまと共に歩み続けます。また『もしも』を予防し、『もしも』から速やかに生活を再建する、そんな取り組みを今後も組合員、生活者、さまざまな団体の皆さまと進めていきます」としています。

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佐藤 勇馬
この記事を書いた人

佐藤 勇馬

新宿・大久保在住のフリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にスカウトされて以来、芸能、事件、ネットの話題、サブカル、漫画、プロレスなど幅広い分野で記事や書籍を執筆。著書に「ケータイ廃人」(データハウス)「新潟あるある」(TOブックス)など。 Twitter:ローリングクレイドル

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