
例年、12~3月が流行シーズンとされるインフルエンザ。しかし、今年は8月からすでにインフルエンザの流行が始まっており、「オフピーク」に流行する「オフピークインフルエンザ」に注意が必要です。
オフピークにインフルエンザが流行する要因には様々なものが考えられますが、外国から日本へ観光客が来るインバウンドの増加などが原因の一つと考えられます。
今回は医師の寺嶋毅先生に「オフピークインフルエンザ」の対策などを聞いています。

寺嶋毅 先生 国際医療福祉大学 市川総合病院呼吸器内科 教授
海外で流行したインフルエンザが日本へ
日本では主に冬を中心に流行するインフルエンザですが、インフルエンザの流行時期は世界共通ではなく、南半球では日本の夏にあたる時期にインフルエンザが流行します。
また、熱帯・亜熱帯の地域も流行の時期は日本と異なっており、例えばシンガポールでは夏と冬の2回ピークを迎える年もあれば、明確な季節性がなく通年流行する年もあります。
このことから、日本のオフピークにインフルエンザが流行する原因の一つとして、海外で流行しているウイルスが日本を訪れる人によって持ち込まれるケースも可能性として考えられます。実際に去年は世界的に広がったインフルエンザA(H3N2)の変異系統「サブクレードK」が日本でも流行の中心となったそうです。
そして現在、外国から日本を訪れるインバウンドが増加中。8~10月にかけて訪日旅行者は増加する傾向にあり、昨年10月の訪日客数は389万人という規模になりました。直近3年間において、10月の訪日客数は8月と比べ約13~17%多くなっています。
※1)日本政府観光局調べ
埼玉県では9月25日、2023年以来となる、9月時点でインフルエンザ流行注意報を発令され、ほか沖縄県では10月2日、県内全域にインフルエンザ警報を発令した。9月21日~27日(第39週)に報告された1定点医療機関当たりの患者数は42・50人となり、警報の発令基準30人を超えるなど、すでに流行目前の危機的状況にあります。
すでに例年より早くインフルエンザが流行している今、さらにインバウンドが増加することによる流行に注意が必要です。
「多雨疲労」もオフピークのインフルエンザ流行に影響

寺嶋先生によると、「オフピークインフルエンザ」の原因の一つとして、夏から秋にかけての「多雨疲労」というものもあるそうです。
今年は残暑に加えゲリラ豪雨や台風が相次ぎ、9月上旬の関東甲信では降水量が1946年の統計開始以降最多となり、日照時間は1961年の統計開始以降最少を記録。こうした気温や気圧、湿度の大きな変化に繰り返しさらされることで、自律神経のバランスが乱れ、多雨疲労の発生、免疫力の低下につながっています。
オランダで行われた労働者12,140人を対象にした研究では、疲労度が高い人ほどインフルエンザ様疾患の発生が多く、発症リスクは1.35倍に。さらに、高い疲労を2回連続して報告した人では感染症の発生率が最も高くなり、疲労が蓄積している人ほど感染症にかかりやすいことが示されています。※2
※2)Mohren DCL, et al. Eur J Epidemiol. 2001;17(12):1081-1087
医師が勧める3つの対策

① ウイルスを体に取り込まないことに加え、免疫対策を継続
感染予防の基本は「ウイルスを体に入れない」こと。マスクの着用、こまめな手洗い・ 手指消毒、うがいなど、基本を徹底することが大切です。屋内では30分~1時間に1回を目安に換気し、人混みをできるだけ避けることもリスクの低減につながります。そして、7~8時間程度の質のよい睡眠、適度な運動、ストレスをため込まない生活を心がけましょう。
② 栄養バランスを考えた食事
感染症に備えるには、毎日の食事から体を整えることも大切。たんぱく質をはじめ、脂質や糖質、ビタミン・ミネラルなど、栄養素をバランスよく摂ることを心がけましょう。
とくに意識したいのが「免疫の材料」であるたんぱく質。免疫対策を意識した生活をしていても、体の中で免疫細胞や抗体が十分に作られていないと十分な効果が得られません。たんぱく質は免疫細胞や抗体を作る代表的な材料です。主食だけに偏りやすい朝食や昼食では不足しがちなので、卵や乳製品などの食品を活用し、たんぱく質不足に備えましょう。
また、アルコールの飲み過ぎは風邪症状の増加と関連することを示した研究もあるため、感染症が気になる時期は飲酒を控えめに。
③ 腸内環境を整える
免疫機能を維持するうえで腸内環境を整えることも重要。腸は免疫細胞が集まる重要な免疫器官の一つであり、腸内細菌と免疫システムが影響を与え合っています。腸内細菌は腸管免疫の成熟や免疫反応の調整に関わるため、腸内環境の状態は全身の免疫機能とも深く関係しています。腸内細菌が健やかに働ける環境を保つことは、免疫機能を維持するための大切な習慣といえるでしょう。
また、免疫を支える食品として注目したいのがヨーグルト。免疫細胞や抗体の材料となる「たんぱく質」と、腸内環境を整える「乳酸菌」を一緒に摂ることができます。多雨疲労などで食欲が落ちているときでもヨーグルトは比較的食べやすく手軽にたんぱく質を補給できるため、朝食や間食などにも取り入れながら無理なく免疫を支える習慣をつくりましょう。
インバウンドの増加や多雨疲労により対策が迫られる「オフピークインフルエンザ」。今回紹介した方法などを取り入れ、十分な対策を行っていきましょう。






