肝油と聞くと懐かしく感じる人もいるでしょうか。筆者も幼い頃に一日に一粒と言われて渡された肝油ドロップの、グミのような食感と甘い砂糖コーティングの味は忘れられません。
現在でも保育園や幼稚園、家庭をはじめ健康食品として親しまれている肝油ですが、コロナ禍の影響もあり世界的に改めてその栄養成分と機能に注目が集まっています。
なかでも鮫肝油には、アルコキシグリセロールやスクアレンといった免疫に関与する成分が豊富に含まれており、医療のみならず日常的な食生活や健康習慣における感染症やウィルスの感染予防・対策に役立つのはないかと期待されているのです。
そのようななか、予防医療とアンチエイジング医学に取り組む医療法人財団百葉の会 銀座医院と深海鮫肝油を製造販売する「株式会社えがお」が、共同で鮫肝油の摂取とインフルエンザ罹患の影響についてヒト試験を実施した結果、新たな知見が得られたと発表しました。
写真)医療法人財団百葉の会 銀座医院 院長 竹田 義彦氏
写真)同銀座医院 院長補佐・抗加齢センター長で東海大学医学部医学科 客員教授 久保 明氏
改めて知りたい鮫肝油の栄養について
そもそも肝油とは、一般的にタラやスケトウダラ、サメ、エイなどの肝臓から分離した油(脂肪分)のことで、ビタミンA・D・E、DHA、EPAなどの栄養素を多く含んでいます。なかでも、鮫肝油(特に深海鮫)に含まれるは、血小板活性化因子の産生を促進させる他、白血球の1つで免疫系に関与するマクロファージを活性化させ免疫力を高める作用があります。
同じく鮫肝油に多く含まれるスクアレンは人の皮膚に含まれる抗酸化物質で、肝機能などの回復をはじめ、免疫力の向上、殺菌作用、細胞や皮膚の発育促進作用、体内の新陳代謝を促す作用などがあり、表皮細胞への浸潤性や浸透性にすぐれていることから、美容効果も期待されています。
化粧品などに含まれているスクアラン(スクワラン)は、このスクアレンに水素を添加したもの。オリーブ油、綿実油、ベニバナ油、アボカド油などにも含まれているため、日常の食事からも摂取が可能です。
鮫肝油が粘膜免疫へ与える影響とは
免疫には目・鼻・口・腸などの粘膜面に存在する粘膜免疫と、侵入したウィルスなどの異物を白血球が攻撃する全身免疫とあり、うち、粘膜免疫の主要な成分であるs-IgA(分泌型IgA)は、ウィルスに結合することで外部から侵入する異物をブロックし細胞に侵入させない機能があります。
このs-IgAについて、先行実験『健常男女成人における唾液の分泌型免疫グロブリンA濃度に対する深海鮫肝油含有食品の効果』では、深海鮫生肝油含有食品(以下 鮫肝油)を摂取した群は口腔粘膜のs-IgAが27%上昇し、プラセボ群(偽薬)ではマイナス14%という結果が得られたそうです。
さらに、鮫肝油の摂取がインフルエンザへ与える影響を調べたマウス実験においては、lNF-γ(インターフェロン ガンマ)の分泌とNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化が見られ、これらの基礎研究結果をふまえ久保教授は、「鮫肝油を構成する成分は、IgA(防御)とlNF-γ、NK細胞(攻撃)という全身の免疫システムを多層的に高め、侵入したウィルスを攻撃、排除し症状の重症化を抑制する効果が推測される」と説明しました。
インフルエンザ症状を抑制するという研究結果も
では、実際に鮫肝油を使った場合にどのような効果が期待できるのでしょうか。
竹田院長ら研究グループは、鮫肝油のサプリメントを1日500mg摂取する群(55名)と、ビタミンC含有のサプリメントを1日990mg摂取する群(55名)に分け、2ヶ月間にわたり非ランダム化比較実験を実施。鮫肝油を摂取した群はインフルエンザウィルス感染者が0人、ビタミンC群は4人となり(うち3人はワクチン接種済み)、解析の結果(カイニ乗値検定による統計処理)、有意水準値5%内で有意性があることを確認したそうです。
竹田院長はこの結果をふまえ、「深海鮫に含まれているスクアレンやアルキルグリセロールは免疫に作用する報告があるが、この両方を豊富に含む鮫肝油の摂取が免疫を強化し、インフルエンザウィルスの感染を抑制したのではないか」と結論付けるともに、インフルエンザウィルスのみならず、新型コロナウィルスや他の感染症などにも一様に有効ではないかとしています。
写真)水深約300〜1,000メートルの深海に生息する深海鮫の模型。黒いボディが特徴。腹のレンジ色の部分が肝臓部
写真)「株式会社えがお」が発売する鮫肝油
コロナ禍において例年以上にウィルス感染対策に関心が寄せられている今、手洗い・マスク・換気などを徹底するとともに、ウィルスに感染しにくい身体づくりが大切。寝不足や運動不足、偏食など日常生活の改善だけでなく、サプリメントを活用し免疫力をアップさせ、感染力が高まる秋冬シーズンを乗り切りたいものです。