あなたの生活エリアにある橋やトンネル、学校、ビルなど、街のランドマークやインフラとして活躍する建造物たち。外観の斬新さだけでなく、最先端の工法を駆使して建てられたそれらは、地域の価値を高め、ときに時代を象徴する存在となりえます。
そんな街を彩り、人々の生活を豊かにする日本の優れた建造物・建築物を讃える賞が「一般社団法人日本建設業連合会」(以下、日建連)が主催する「日建連表彰」。1960年に創設され今年で66回を迎える権威ある建築賞であり、日建連表彰委員会が決定した「BCS賞」と2019年に創設された土木構造物の施工プロセスを重視する「土木賞」の2つで構成されています。
特筆すべきは、表彰対象を「建築主・設計者・施工者」の3者としている部分。優れた社会的価値のある建造物・建築物は、都市形成と地域環境づくりに理解を示す建築主、設計者の豊かな創造力、高い技術の施工者による総合力が生み出すという、建築業協会初代理事長 竹中藤右衛門氏の思想に基づきます。
規模や種類に関係なく、供用開始から1年以上を経過した建造物・建築物を対象に、建築の事業企画、計画・設計、施工、環境の維持および運用・管理等に関する総合評価を旨としており、今年は15件の「BCS賞」と特別賞を含む12件の「土木賞」を選出。今の日本を象徴する建造物・建築物27件が、11月28日に都内で開催された「日建連表彰2025」にて表彰されました。


主催者代表として挨拶する日建連の宮本洋一会長。
■「日建連表彰2025 BCS賞」
「茨木市文化・子育て複合施設 おにクル」大阪府茨木市
「エディオンピースウイング広島(広島サッカースタジアム)」広島県広島市
「大阪中之島美術館」大阪府大阪市
「OMO7大阪 by 星野リゾート」大阪府大阪市
「温故創新の森 NOVARE」東京都江東区
「京丹波町役場 新庁舎」京都府船井郡京丹波町
「SAGAサンライズパーク(SAGAアリーナ、SAGAアクア、SAGAスタジアム、ペデストリアンデッキ)」佐賀県佐賀市
「下瀬美術館」広島県大竹市
「ストローグ社屋」富山県滑川市
「タマディック名古屋ビル」愛知県名古屋市
「中外ライフサイエンスパーク横浜」神奈川県横浜市
「東急歌舞伎町タワー」東京都新宿区
「歳吉屋 -BYAKU Narai-」長野県塩尻市
「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」東京都港区
「古平町複合施設 かなえーる」北海道古平郡古平町
応募総数80件のうち、書類審査を通過した32件について、選考委員による現地調査および建築主、設計者、建築会社によるプレゼンテーションを受けた結果を反映し、選考委員会で決定。
■「土木賞」
「女川原子力発電所 防潮堤かさ上げ工事」宮城県牡鹿郡女川町~石巻市
「三遠南信自動車道の青崩峠トンネル(仮称)整備事業」長野県飯田市~静岡県浜松市
「新桂沢ダム堤体建設工事」北海道三笠市
「立野ダム建設工事」熊本県菊池郡大津町~阿蘇郡南阿蘇村
「千葉印西エリア洞道新設工事」千葉県船橋市~印西市
「千代田幹線整備事業」東京都千代田区~港区
「東名阪自動車道弥富高架橋(下り線)の大規模更新」愛知県弥富市
「比谷線虎ノ門ヒルズ駅設置に伴う土木工事」東京都港区
「福島第一原子力発電所ALPS処理水希釈放出設備工事」福島県双葉郡大熊町
「北陸新幹線、深山トンネル他」福井県敦賀市
- 特別賞 -
「新名神高速道路 信楽川橋下部工事」滋賀県大津市
「鳥越川1号砂防堰堤」広島県広島市
応募総数44件のうち、書類審査を通過した25件について、土木部会の技術専門委員による現地調査と応募者らによるプレゼンテーションを受けた結果を反映し、10件および特別賞候補2点を選出。
多様なニーズに応えるプロフェッショナルたちの仕事に敬意を表す
来賓挨拶に立った金子恭之国土交通省大臣は、「大規模災害への備えや環境面への配慮、景観との調和といった多様化するニーズに対応し、利用者の期待に応えていくためには、ひとつひとつの課題に真摯に向き合い、解決策を導き出す柔軟な思考と高い技術力、関係者とのコミュニケーションとチームワーク、困難を克服する粘り強さが不可欠」と功績を称えました。
また「土木賞」について、「難しい地質条件や厳しい気象条件など、さまざまな制約があるなか、創意工夫や技術力、材料の活用により、多くの困難を乗り越えて成し得た結果」と敬意を表し「すべての受賞作品が、社会的資産として地域に末永く愛され活用され続けることを期待するとともに、高い技術力を内外に知らしめ、若い世代の心を惹きつけ、建築、土木業界の入職や定着に繋がることを願っている」と祝辞を送りました。
建築主、設計者、施工者のチームワークが生んだ「SAGAサンライズパーク」
佐賀県佐賀市の「SAGAサンライズパーク」で受賞した山口祥義県知事は、受賞者代表として挨拶し、「BCS賞は『SAGAサンライズパーク』がいちばん大切にした“チームワーク”という言葉にもっともふさわしい賞」と喜びました。

「SAGAサンライズパーク」出典 https://www.nikkenren.com/
もともと「佐賀県総合運動場」という名前だった「SAGAサンライズパーク」。施行エリアが「日の出」という地名であることから仮称が決定。する・みる・ささえる・かせぐをコンセプトにアスリート達の一生を支えていけるような施設を目指しています。
佐賀県庁には「さがデザイン」という部署があり、佐賀ゆかりのクリエイターと連携しながら、課題に対しチームで施策やコンセプトなどを議論し、磨き上げを図っています。
ともすると仕事が縦割りになりがちな県庁組織内の部署や情報を横断する、ハブのような機能も兼ねており、知事は「SAGAサンライズパーク」の建築にあたり、「行政は平等性を訴える必要があるが、デザイン部署をはじめ、さまざまな人が関わることで、あえて不均衡で、いろいろな楽しみや喜びを体験できる多様性に優れたエリアマネージメントをした。それだけに設計者や施工者は大変だったと思う」と振り返ります。
さらに2年半前にオープンした「SAGAアリーナ」は、コロナ禍最中の建設となり「暑いさなかマスクをつけながらの作業だった」と知事。感謝を込めて「SAGAアリーナ」の壁面には、建築に携わった整備事業従事者6626名の銘板が設置されているそうです。
施主の想いをカタチに。RC×CLT工法で臨んだ環境と働く人に優しい新社屋
名古屋市中区に建つ「タマディック名古屋ビル」は、株式会社タマディックの森實敏彦代表取締役社長の想いが詰まった新社屋です。
航空機技術やロボットテクノロジーなどの開発を手掛け、多くのエンジニアが活躍する同社において、よりクリエイティブに健康的に働けるオフィス環境の必要性を感じていたという森實社長は、「タメディア新本社ビル」や「オメガ・スウォッチ本社」などをはじめ、木質を大胆に取り入れた作品で世界的評価をうける建築家 坂茂氏にデザインと設計を依頼します。
「環境に良くて美しい、そんなオフィスビルが日本に少ないのを残念に思う一方で、防災基準の高い日本で理想を実現できるのか懸念していましたが、私どもの意図が伝わった設計となっており、とても嬉しい」と森實社長。

写真左)大林組の佐藤俊美代表取締役社長。写真右)タマディックの森實敏彦代表取締役社長。
柱のコンクリートを打設する際の型枠として、国産杉を使用したCLT(直交集成板)を使い、コンクリートが固まった後は型枠がそのまま柱の“仕上げ材”になるという、RC(鉄筋コンクリート)柱とCLTを組み合わせた世界初の工法を採用。木質の温かみある空間を創出するとともに、RC とCLTを組み合わせたハイブリッド柱が水平力に抵抗することで、耐震性と耐火性にも優れた構造になっています。
森實社長は、「まだ日本では件数が少ないというところで、多少、コスト高という面もあるが、それ以上に日本における“木質免震構造オフィスビル”という新しいモデルを示せた。自然を感じる木質のオフィスだけでなく、リフレッシュできるサウナ施設などもあり、働く皆さんも健康や環境に対する意識が高くなっていると思う。たくさんのコミュニケーションとアイディアが生まれて、皆が誇りを持って働ける場所になってほしい」と期待します。

「タマディック名古屋ビル」出典 https://www.nikkenren.com/
オリンピック開会前までに。都市機能を止めずに短期間で安全・確実に施工
「日比谷線虎ノ門ヒルズ駅設置に伴う土木工事」で「土木賞」を受賞した「東京地下鉄株式会社」の小坂彰洋代表取締役社長は、「各ステークホルダーとの綿密な連携が、短期間での工期厳守を実現するポイントのひとつだった」と話します。
特定都市再生緊急整備地域(環状第2号線新橋虎ノ門周辺エリア)に位置する「虎ノ門ヒルズ駅」は、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場や選手村が建つ臨海地域との結節点であり、開催までの短期間に安全・確実な施工が求められました。
2015年12月に土木工事に着手。日比谷線の営業を継続しつつ、地下1階の順巻き施工と地下2階を掘削する逆巻き施工を同時に行った他、掘削の進捗に伴う地下水位低下範囲を最小限に抑えるWICシステムを用いた「ディープウェル工法」を採用するなど、さまざまな技術を駆使して工期を短縮し2020年6月の供用開始を達成。2023年7月には駅と「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が繋がり完成形となりました。
なお「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」は「BCS賞」を同時受賞しており、小坂氏は「国や行政、インフラ関連企業、鉄道事業者、開発事業者など多数の団体や企業が関わっており、事業構想段階から関連事業者等の強固な協力関係を築き、それぞれの枠をこえ知恵を出しあいながら工事を完遂へと導けた」と感謝の意を表しました。

出典 https://www.nikkenren.com/
施主・施工者側がタッグを組み、創意工夫しながら建造物を建てたことに敬意を表する「日建連表彰」。建築資材の高騰、少子高齢化による人手不足、変わりゆく自然環境と頻発する災害、地域の価値創生など、さまざまな課題に向き合うなかで誕生した受賞作品は一見の価値あり。
普段、何気なく利用している道路や商業施設、駅などが受賞しているかも知れません。もし、そんな建物に出会ったら、しばし足を止めて眺めてみてはいかがでしょう。日本の土木・建設業の叡智と施主の想いが詰まっているに違いありません。
建設業の未来へ
日建連表彰を受賞するような素晴らしい建築物・プロジェクトを通じて、人々の日常の「安心」や「便利」を造っている建設業の魅力を広く伝えることを目的に、シリーズ累計30万部突破の人気漫画「サラリーマン山崎シゲル」とコラボレーションしたアニメコンテンツを制作し、2026年3月15日(日)まで日建連特設サイト、日建連YouTubeチャンネル、山崎シゲル公式TikTokで公開しています。
日建連特設サイト(https://www.nikkenren.com/sougou/award/2025/)
YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCQ1wjucsmCCi5B7FTtW5SaQ)
山崎シゲル公式TikTok(https://www.tiktok.com/@yamasakishigeru_anime)






