2022年5月、アイドルグループ「ラストアイドル」が惜しまれつつ活動終了しました。バックにはテレビ局、大手レコード会社、芸能事務所がついた、いわゆる大手アイドルの活動終了はファンならずともショックを受けました。わずか4年半の活動、このラストアイドルとは何だったのかを振り返り、最後に残した希望を考察したいと思います。
💐ラストアイドル 5年間ありがとう Farewell Party🌻
— ラストアイドルファミリー公式 (@last_idol_pr) May 31, 2022
どうもありがとうございました!!!#ラストアイドル pic.twitter.com/x30XRuuhOm
「ラストアイドル」とは……、2017年8月、究極のアイドルグループをデビューさせるために始まったテレビ番組「ラストアイドル」。あらかじめオーデションで勝ち抜いた暫定メンバー7人がスタジオにおり、毎週現れる挑戦者の指名を受け1対1のタイマンパフォーマンスバトル。挑戦者が勝利すれば負けた暫定メンバーと入れ替わり、敗者は退場。最終的に残った7名がラストアイドルとしてデビューできるという企画でした。
「7人だったはずが…」という原理主義を超える32人
上記の通り最初はバトルに勝ち抜いた7名がアイドルとしてデビューするという触れ込みでしたが、総合プロデューサーの秋元康氏の一声により敗退者への救済措置がとられセカンドユニットが誕生。カップリング曲を歌うメンバーとなりました。
このようなルールだったので活動終了した現在でもラスアイがあまりうまく展開しなかった理由として、救済措置があったからだという原理主義者がいますがそうとも言い切れない点もあります。1期生でセカンドユニットに組み込まれた魅力ある19人がいたからこそ、推しを選ぶバリエーション増え、応援しやすくなったのは事実。後に敗退者がシングルのセンターを担当するケースもありました。
また「敗者」という負けヒロインステータスが所謂判官びいきで推す熱量をあげたのは間違いないところだとも思います。
謎企画と言われてもテレビの力は絶大
番組スタートから終了までの約4年半で最大52人まで増員されたラスアイ。メンバーはオーデション企画だけではなく、団体行動、殺陣などに挑戦しました。アイドルに必要なのかと疑問を投げかけるファンもいましたが、そこはテレビ企画が並行しているため、「ストーリー」が必要だったと思われ、その中で生まれる彼女たちの努力や涙、葛藤、そして達成感は感情移入しやすく、応援したくなるポイントはたくさん散りばめられていました。
またリアルイベントでは新規のファンが足を運びやすい無銭イベントも多くかったような気がしますし、コロナ禍以前は定期公演も開催。この公演などでは毎回1個スタンプがもらえるスタンプラリーも行われ、生写真がもらえたり、無料でライブに参加できたりしました。
そして謎といえば、2周年ライブで、卒業するメンバーがいるなどしステージも客席も感傷に浸っているエンディング。しんみりする中、これまで番組に登場したことも話題に上ったこともない加藤茶夫婦が唐突に登場。例のビバノンノンを披露しライブは大団円を迎えました。この演出はファンの間で「なぜ茶なのか?」とラスアイ史の中で最大ミステリーといっても過言ではないように思います。
[アフターストーリー]本当の主役は彼女だったのかもしれない……
活動終了後、メンバーは新たな一歩を踏み出しますが、たったひとりSNSも更新せず動向が不透明だった小澤愛実さん。活動終了から25日後、突然、指原莉乃さんの勧誘を受け「≒JOY」に加入することが発表されました。
皆さん初めまして
— 小澤 愛実 (@ozawa_aimi__) July 3, 2022
改めまして、≒JOYに加入させて頂きました。
神奈川県出身19歳の小澤愛実(おざわあいみ)です。
初ステージ本当にありがとうございました!
アイドル活動をさせて頂ける幸せを噛み締めました。
夜公演も精一杯頑張ります、よろしくお願い致します!!
#ニアジョイ pic.twitter.com/XNkPrW2eCw
そもそも指原さんに憧れ=LOVEのオーデションも受けている小澤さん。その後ラスアイでは暫定メンバーの1人に選ばれるもバトルで敗退し、セカンドユニットへ。以後は努力やファンへの誠意ある対応、愛されキャラで人気メンバーとなり、最後のシングルでは立ち位置2番まで上りつめました。
挫折、栄光、葛藤を経験し、ラスアイ終了でアイドル活動終了を余儀なくされた小澤さんでしたが、それを救済したのが憧れの存在というファンならずとも興奮する胸熱展開。こんな主人公的ストーリーはなかなかないのではないでしょうか。
さらに小澤さんについてはこんなエピソードも。ラスアイの暫定メンバーだった際、隣のメンバーが敗退し入れ替わりで新メンバーがステージにのぼりました。緊張感などでヒリつくステージ上、誰も声をかけられない状況の中、小澤さんは新メンバーに対し優しく「頑張りましょ、気まずいけど」と声をかけました。それから約5年、≒JOYに加入しメンバーと初対面した小澤さん。メンバーの端に並びましたが、遠慮がちに少し距離をとり立っていました。このときの状況について後に小澤さんは隣に並んでいた逢田珠里依さんから「もっとこっちきて」と声をかけてもらったと明かしています。あのとき困っている新メンバーにかけた優しい言葉が、時を経て自分がかけてもらうというドラマのような話し。
(YouTube:https://youtu.be/ciaViqOwK5w)
22年7月末までにアイドル活動継続を発表しているのは小澤さんだけ。ラスアイの忘れ形見、魂は彼女が引き継いでくれるのかもしれません。
ラストアイドルとファンをつなげたものとは?
選抜を決めるパフォーマンスバトルに限らず雑誌モデル権やカップリングユニット権などなにかと「バトル」で権利を掴むことが多かったラストアイドル。ファン側も彼女たちを推すためCDを買ったり投げ銭したりお財布バトル。推しが負けてファンのメンタルが疲弊しても次のバトルに好んで参加しました。さらに彼女たちのライブを観るため酷暑や極寒、昼夜問わず整列する肉体的な戦いもありました。つまり互いに「バトル」で絆を強固にしていったのだと思います。
活動期間は短かったですが、彼女たちが見せたバトルは、ときには悔しいこともありましたが熱く、楽しく感動的なものばかりでした。
振り返るとラストアイドルとはなんだったのか? それはメンバーとファンがともにバトルし熱量を共有するアイドルだったらしい。