まずは、絵本作家の“長新太(ちょう・しんた)”様のご説明から。
人気番組『マツコの知らない世界』(TBS)の「絵本の世界」の回でマツコ・デラックス様が「長新太作品を全巻揃えたいわ」と、ドハマりした絵本作家が、長新太(ちょう・しんた)様でございます。
絵本界では、唯一無二のナンセンス作家として知られる超巨匠でございます。お笑いの世界、クリエイティブの世界でお仕事をされている方なら、きっと長新太にハマるはずでございます。とにかく感性がぶっとんでおります。
そんな長新太様の数あるナンセンス絵本の中から、まさに「志村けん」的な絵本を発見したのでございます。「志村けん」的なとは…。志村様の代名詞と言えば、「だっふんだ」と、そう「志村、うしろ、うしろ~」でございます。(他にもたくさんございます。)
国民的人気を博したバラエティー番組『8時だョ!全員集合』のなかで、志村様に危険が迫った際に、観客の子供達から発せられた野次でございます。当時、これが言いたくてテレビを観ていたお子様も多いのでは…。のちに、後ろから危険が迫っていることに気が付いていない人に対する注意勧告の定型句にもなっております。まさに、日本のお笑い遺産のひとつでございます。
それとまったく同じシステムの「笑い」が長新太様の絵本の中でも使われているのでございます。それが、こちら。
「ブタヤマさんたらブタヤマさん」(作・絵:長 新太)
主人公のブタヤマ(たぶん豚)さんは、虫捕り網を持って蝶々捕りに夢中。背後からおばけや、大きなイカやヘビなどが迫っても、まったく気が付かないのでございます。本文のテキストでは「ブタヤマさんたらブタヤマさん、うしろをみてよブタヤマさん」が繰り返えされるのでございます。
通常だと、「うしろをみてよブタヤマさん」のフレーズの後に「オバケだよ」とか、説明的な言葉を入れてしまうものなのですが、そういうのは一切ございません。そこが長様の凄いところでございます。絵本を読んでもらっている子供達は、きっと、「ブタヤマさん、うしろ、うしろ~」と言いながら、この絵本を楽しんでいたに違いありません。
そもそも、『8時だョ!全員集合』も『絵本』も、小さい子供から人気があった点、子供をターゲットにしていたという点においては同じでございますが…テレビ、絵本、それぞれの世界で、その時代を牽引していた2人が、まったく同じアプローチをしていたのでございます。
こんな発見をして「ムフフ」とひとりほくそ笑むのも「大人絵本」の楽しみ方のひとつかもしれません。これを機会に是非、長新太様のナンセンス絵本、ご体験くださいませ。
(文:N田N昌)