DXを武器に、20年後の「ありがとう」を創る。 業界の“異端児”が挑む、地域密着の進化系 東海住宅MTC株式会社 代表取締役社長 須浦 宏樹

2026/03/27
マガジンサミット編集部

不動産業界において、古くから「人間力」を武器に成長を続けてきた東海住宅。そのDNAを受け継ぎながらも、全く新しい機動力を持って誕生したのが「東海住宅MTC株式会社」だ。同社を率いるのは、かつて社内で「反逆児」とまで呼ばれ、独学でDXを推進してきた異色の経歴を持つ経営者、須浦宏樹さん。

「デジタルは手段、目的はあくまで人」と語る彼が、なぜ今、子会社社長という道を選び、高齢化が進む地域社会で何を実現しようとしているのか。その軌跡と、未来へのビジョンに迫った。

1人1台のパソコンから始まった「信念の追及」

私のキャリアは、ITとは無縁の「熱血不動産マン」からスタートしました。ただ、東海住宅に入社する前に先輩と会社を立ち上げた経験があり、そこでネットワーク構築からホームページ制作まで、すべて独学でこなしていたんです。だからこそ、20年前に東海住宅に入社した際、その「ギャップ」に驚きました。

都内では1人1台のパソコンが当たり前になりつつある時代に、ここではみんなが順番待ちをして共有PCを使っている。こんないい会社なのに、IT環境には大きな課題があると感じました。

当時、私は支店長でしたが、本社の許可を待たずに独断でパソコンを増やし、ネットワークを整備し始めました。当時の社長(創業者・現松田社長の実父)からは「無駄遣いするやつだ!」と相当怒られましたね(笑)。それでも、私は確信していました。これからはメールで商談が進む時代になる。それなのにパソコンが満足にないようでは、商売にならない。

当時、私は社内で「反逆児」扱いでしたが、売上に直結しないIT投資を批判されながらも進めたのは、それがお客様のためになると信じていたからです。結果的には、その先見性と行動力が認められ、後に会社全体のDX推進担当として本社へ呼ばれるきっかけとなりました。

「見える化」が組織を変える。現場主義を貫いたIT戦略

本社に入ってからも、私のスタイルは変わりませんでした。営業成績を入力すれば自動でグラフ化され、順位が出る「見える化」ツールを導入しようとした際も、当初、経営陣からは反対されました。

『成績が良い子はいいけれど、悪い子はかわいそうじゃないか』と、社内でも賛否両論ありました。しかし、私は逆だと思ったんです。頑張っている人が正当に評価され、課題がある人がそれを自覚できる環境こそが健全。だから、これもまずは自分の担当エリアから試験的に始めてみました。

すると、仙台の拠点がその面白さに気づいてくれて、一気に盛り上がった。「これは面白い、千葉でもやろう」と火がつき、結果として全社導入に至りました。私は不動産屋の「泥臭さ」も「人間力」も大好きですし、それが何より重要だと思っています。だからこそ、デジタルを使って無駄な時間を削り、人間が本来やるべき仕事にフォーカスさせたかったのです。

結果として、成果の可視化が組織に心地よい緊張感と活気をもたらし、全体のボトムアップに繋がりました。その後も45、50周年事業の実行委員長や会社のブランディングなど、多方面から環境整備を推進してきました。

分社化の真意:ゆりかごから墓場まで、顧客を一生守り抜く

2年前、東海住宅の分社化の話が出たとき、真っ先に代表として名前が挙がったのが私でした。MTC(ミリオン・トータル・コミュニケーション)の使命は、大きな組織では拾いきれない「地域の細かなニーズ」に、圧倒的なスピード感で応えることです。

設立当時は家事代行サービスの『ママコミ』や賃貸部門を切り出してスタートしましたが、実はいろいろと迷走もしました。私自身が東京都に申請を出して、介護保険の事業免許を取ろうとしたこともあります。でも、実際に動いてみてわかった。専門家がいないと難しい世界もある、と。ただ、そうやって自ら動いて試行錯誤するからこそ見える景色がある。それが血肉となって今に活きています。

こうした試行錯誤の末に行き着いたのが、現在の「リフォーム」を主軸に据えた戦略です。

「20年後のありがとう」を、絵空事にしないために

東海住宅には『20年後のありがとうをめざして』という素晴らしい理念があります。しかし、それを本当の意味で実現するには、家を建てた後のお客様をどう守り続けるかが重要なんです。

日本の家は、築10年も経てばどこかしらメンテナンスが必要になります。これまではそこを他社に任せてしまうこともありましたが、それではお客様との縁が途切れてしまう。

「せっかく私たちが建てたいい家なんだから、最後まで面倒を見ようじゃないか。」10年、20年経ってメーカー保証が切れた時こそ、私たちの出番です。『ゆりかごから墓場まで』定期的にお伺いして適切なメンテナンスを提案する。この役目こそ、小回りの利くMTCが引き受けるべきだと考え、今はそこにグッと舵を切っているところです。

70代もChatGPTを使いこなす。MTC流の「共存」

MTCの社員の多くは、東海住宅で定年を迎えるようなベテラン世代です。彼らは不動産のプロですが、ITには不慣れなケースも多い。しかし、私は彼らに一切の妥協をしません。

うちの社員は、70歳を超えていても全員ChatGPTを使いこなしますし、毎週の朝礼もオンラインでホストを務めます。最初は大変ですよ。それでも、私はこう伝えています。『自分たちがITを使えないなら、お客様の役には立てない。効率化できるところはAIに任せて、余った時間でお客様の話をじっくり聞いてきてください』と。

今の時代、メールやスマホの操作ができずに困っている高齢者の方はたくさんいます。私たちがしっかりとしたデジタルスキルを持ちながら、アナログな「ご縁」を大切にする。デジタルが進化すればするほど、こうした血の通った対応が希少価値になると信じています。

この街から「なくなったら困る」と言われる存在へ

私は今、地元の商店会理事や宅建協会の役員も務めています。自社の利益だけを考えれば非効率かもしれませんが、東海住宅はこの街で50年以上お世話になっています。

八千代台の商店街でも、オーナーが自ら残っているビルはもう数えるほど。そんな中で、私たちが外に出て地域のために汗をかく。すると街の人から『やっぱり東海さんだね』と言っていただける。これが私にとっての経営なんです。

規模を大きくしたい、上場させたいといった野心は今はありません。ただ、お客様からも、そして定年後も働きたい社員からも「MTCがないと困るんだ」と言われる会社にしたい。

DX推進を担ってきた私だからこそ、その『抜け漏れ』をカバーできると確信しています。デジタルとアナログを完全に共存させて、人が生き生きと働ける場所を、この街にしっかりと根付かせていきたいと思っています。

不動産業界の異端児が描く未来は、最先端のデジタルスキルと、古き良き日本の「ご縁」が共存する、温かくも合理的な社会だった。東海住宅MTCの挑戦はまだ始まったばかりだが、その歩みは地域社会の新しいモデルケースとなるに違いない。

須浦 宏樹(すうら ひろき)
東海住宅MTC株式会社 代表取締役社長

不動産業界で長年キャリアを積んだ「現場叩き上げ」の不動産プロフェッショナル。
前職での起業経験からITスキルを独学で習得。東海住宅入社後は、支店長として現場を率いる傍ら、まだアナログ文化が根強かった社内にPC導入やネットワーク整備を推進。その先見性と行動力が認められ、後に会社全体のDX推進・ブランディング担当を歴任する。

2022年、グループの機動力を高めるべく設立された「東海住宅MTC株式会社」の代表取締役に就任。「20年後のありがとう」というグループ理念を具現化するため、家事代行、賃貸管理、そしてリフォームを軸に、デジタルと人間力を融合させた独自の地域密着型経営を実践している。社外でも地元の商店会理事や宅建協会の役員を務めるなど、街の活性化に奔走中。

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