「人を診る」総合診療クリニックの普及を目指して

2023/12/06
マガジンサミット編集部

お腹が痛くて不安なとき、多くの人は「内科」「消化器内科」「(女性であれば)産婦人科」など、症状にあてはまりそうな診療科目に自分であたりをつけてクリニックに行くだろう。しかし患者にそんな負担をさせず、診療科目を問わずにその人全体を見て一番適した医療を提供しているのが、神奈川県・綾瀬市にあるきくち総合診療クリニックだ。菊池大和院長に話を聞いた。

どんな症状も診る、総合診療かかりつけ医

当院は「いつでも、なんでも、だれでもまず診る」地域のかかりつけクリニックとして、2017年に神奈川県・綾瀬市に開院しました。綾瀬市は約8万4千人の人口を抱えているのですが、クリニックが20に満たない医療過疎地でもあります。当院では朝の1時間で100人以上の方が並ばれることもあり、土日、祝日も開院して対応しています。そしてクリニック自体も面積を徐々に広げて施設を充実させ、多くの患者さまを受け入れる体制を整えています。

地域のかかりつけクリニックとして、当院では診療科目を問わない「総合診療」を行っています。日本では患者さんが自由に医療機関を選べますが、医療の専門知識をもたない一般の方が選んでいるために、ここで診てもらえるかもと来院した医療機関が、自分の症状を確実に治してくれる保証はありません。さらに人間は臓器や組織が影響し合って病気が発症したり症状が進んだりしますので、診療科目別のクリニックで、その人全体を診てくれる医者がいないということは、「命に関わる病気が見落とされる恐れがある」ということにも繋がります。

総合診療ではその病気を診るのではなくてその人全体を診て治療をします。疲れやすい、手足に力が入りにくいといった、どこの科に掛かればいいか分からない不調にも対応しますし、普段は糖尿病を診てもらっているけれど近頃どうも胃の調子が良くない、といったときにも気軽に相談していただけます。総合診療かかりつけ医になりたいという医師が増えて、当院のような役割を担うクリニックが全国各地域に必要であると考えています。

外科医、救命救急医ゆえに芽生えた思い

私は外科医、そして救急医として総合病院に勤める中で、次第に「もっと早く病気を見つけて治療することができれば」という思いが強くなってきました。重篤な症状になってから運ばれてくる患者が多く、そのような患者さんを手術することで救えることは大変やりがいがありましたが、それ以上に重篤な状態になる前に患者さんを救わなければならないと思うようになったのです。それには幅広い診療内容としっかりとした検査で病気の早期発見に努めたいと思うようになりました。

さらに当時の私も今と同様に、患者さんを診るときに例えば胃がんの患者さんでしたら胃がんだけを直そうという気持ちはなく、その人全体を診て治そうという思いでいつもいました。胃がんを治療しても、その後にその人が別の病気になってしまったら何のための手術だろうと思うのです。この臓器だけ治せばいいという仕事ではなくて、その患者さんが体と心共に健康になり、患者さんの周りの家族や過去から未来、それら全てひっくるめて診なければならないと考えていました。

これらの思いをこの先実践していくためには、総合病院ではなく開業医として総合診療を行うのが一番良いだろうと道が定まっていき、総合診療科で経験を積んだ後に開院に至ったのです。

患者からもらった「感謝の花」

いざというとき「ここに来れば安心」と思える医療機関が近くにあれば、生活するうえでとても心強いはずです。その安心感こそ、「なんでも診る、いつでも診る」総合診療かかりつけ医の強みではないかと考えます。

私が大切にしていることは、いつでも患者さん目線に立つということです。ご高齢の患者さんがいれば、私の親のことと重ねて、クリニックに来るまでの交通手段がなかったら親はどうするのか、検査を受けたかったらどこの病院に行くのだろうと考えるのです。そのためにクリニックまでの無料送迎も始めましたし、通常大きな病院でしかできないCTやMRI検査もできるようにしたら喜ばれるだろうと考えて、装置の導入に至りました。

先日、来院された患者さんから、趣味にされているというハンドメイドの色とりどりの花をたくさんいただきました。受付に飾らせていただいております。患者さんが自ら作られたこの花々を前にすると力が湧き、さらに頑張っていこうと思えます。

「来院された患者さんは絶対診る」。このスタンスはこれからも崩さないで診療を続けていきたいと思います。そして一人でも多くの方の命を救って、皆様が地域で安心して暮らせるようにこれからも努めていきます。

プロフィール

1978年生まれ、神奈川県出身。学生時代を静岡市で過ごす。2004年、福島県立医科大学卒業後、総合病院で外科や救急診療に携わる。座間総合病院総合診療科勤務を経て、2017年、神奈川県綾瀬市にきくち総合診療クリニックを開業。2019年に医療法人ONEを設立、理事長に就任。

きくち総合診療クリニック
http://kikuchi-geclinic.jp/

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