「note」や「WeChat」に見るサービスデザイン。顧客体験や社会的価値の創造に必要な思考とは?

2021/05/21
Shoichi Sato

顧客体験(UX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマとしたオンラインフェス「L&UX2021」が、5月28日(金)まで開催されています。

初日となる17日のセッションでは、累計15万部発行『アフターデジタル」シリーズ(日経BP)の著者、藤井保文氏(株式会社ビービットCCO兼 東アジア営業責任者)がオーガナイザーとして登壇。メディアプラットフォーム「note」のサービス設計を務めた深津貴之氏(THE GUILD代表)と、中国最大手メッセンジャーアプリ「WeChat」のUXデザイン及びユーザースタディエンジニアリングを担当したエンヤ・チェン氏(Tencent Head of UX & User research)を招いて意見を交換しました。

プラットフォームは生態系

藤井氏は「DXが叫ばれる中、日本ではデジタルやテクノロジーを使うことが先行してUXがおざなりになっているのではないか。顧客への提供価値をどのように構築していくかが重要」と問題を提起。これに対し深津氏は「noteは読んで楽しい、書いて楽しいというのが大前提。どれだけユーザーが多くなってもこのファンダメンタルはブレないようにしている」と話します。

サービスデザインを考える際、老子の「上善は水のごとし」という言葉を念頭に置いているという深津氏。つまり、プラットフォームを生態系のように捉え、環境とルールをしっかりと定義すれば自然に育ち、循環していくという考え方です。

エンヤ氏も「どうすればユーザーとサービスの間に良好な関係が生まれるのかを第一に考える」と語りました。中国のIT企業、テンセント社では「WeChat」や「QQ」といったコミュニケーションサービスを提供しており、「つながり」が鍵となります。

「つながりに関するルールは慎重に考えている。例えば個人と企業のサービスアカウントにおけるつながり。1度サービスを利用しただけで企業から毎日メッセージが来てしまうと、ユーザーの印象は悪くなる」とエンヤ氏。WeChatは企業からのアカウントメッセージを別グループにまとめるなどして、UXに配慮しています。

最も重要な共通項を探す

2014年にサービスがスタートしたnoteは現在、月間アクティブユーザーが6,300万を超える巨大プラットフォームとなっています。藤井氏が「プラットフォームが大きくなればなるほど、セグメントは難しくなる。人を人としてセグメントする時代は終わったのではないか。その人の状況や行動にフォーカスしていくべきではないか」と投げかけると、深津氏は「ユーザー数10万人を超えてくるようなプラットフォームは、次第に抽象化されていく」とし「企業、学生、会社員、高齢者。誰もが共通して、最も重要だと思っているイシューやアクションを見出すこと」と述べました。

深津氏によると、noteにおいてもユーザー数の増加に合わせてターゲットは抽象化されており、「情報や意見を発信したい人」をファーストセグメント、「noteをきっかけとしてこれから何かを発信したくなるような人」をセカンドセグメントとして位置付けているそう。一方でnoteのミッションであり、ユーザーが抱えるニーズの重要な共通項でもある「クリエイションを楽しむ」という軸は外していません。

UX、DXとひと言でいっても、具体的にビジョンを持ち、プランニングしている企業はまだ多くありません。顧客に提供する価値、企業が得られる価値、そして社会的価値を考慮した製品やサービスデザインは、今後も重要視されるでしょう。

オンラインフェス「L&UX2021」は、5月28日(金)まで開催。中国を代表するOMO企業DiDiのクリエイティブ統括である程峰氏や、Instagramでデザイン責任者を務めるイアン・スパルター氏など世界各国のトッププレイヤーが日ごとに登壇し、新時代のビジネスについて語り合います。詳細は以下へ。

https://liberty-ux.com

※全セッション動画は、6月末までアーカイブ視聴可

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Shoichi Sato
この記事を書いた人

Shoichi Sato

地域ミニコミ紙の編集記者、広告代理店を経てフリーライターとして活動中。趣味は山登りなど、スポーツ全般の元高校球児。未確認生物や宇宙、戦国時代 などが好きなロマン追求型。座右の銘は「気は遣うものではなく、配るもの」。 ブログ:s1-thats-WRITE

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