昨今、「大人の絵本ファンが急増中!」という話をよく耳にします。「大人」、「絵本」で検索してみると…「大人になってから楽しむ絵本」、「大人が読んでも泣ける!恋に効く絵本」「大人が病みつきになる絵本」などなど、様々な特集が…。
さらに、大人向けの絵本を特集した雑誌や大人をターゲットにした絵本もたくさん出版されております。そこで、ナンセンス絵本マニア(自称)の私が、明日、学校や職場で話したくなる今すぐ使える絵本の豆知識をご紹介!
今回ご紹介するのは、こちら!世界中で愛されるベストセラー絵本『はらぺこあおむし』。実はこの絵本、今売っているものと、初版のもので絵が違うのであります!
絵本の最後に、「・・年・・月 ・・刷」と書かれているのを見た事ありませんか。(外国の絵本は冒頭の場合も)
これを専門用語で「奥付」というらしい…。最近、ドラマでも話題になりましたが、「重版」がかかると、この“刷”の数が増えていきます。今、売っているものを見ると…
この「改定1刷」と書かれているところ!!テストには出ませんが、注目です!これが何を意味するかというと版(絵)自体が変わっているということです。ちなみに、この「はらぺこあおむし」は、いつ変わったかというと、1989年2月。それより前に出版されたものと、今のものとで違うのであります。
では一体、どこがどう違うのか…
いろいろ違います!
まずは、表紙のいもむしくん、失礼、あおむしくんの毛の色が違います。
※写真(旧表紙)
※写真(新表紙)
最終ページの蝶の羽も違います。よく見ると、オー!ノ―!!
新版では目ん玉が書き込まれちゃっています。
※写真(旧版)
※写真(新版)
ちなみに、ここで“うんちく話”をひとつ。
最後の蝶の羽の色。あおむしが食べていたもの(イチゴやリンゴなど)の色が変身した蝶の羽に鮮やかに表現、反映されているのであります!!
彼の絵本は、色とりどりに彩色した薄い紙を切り抜いて貼り合わせた、コラージュ(貼り絵)という技法をもとに作られていますが、その技法がまさに活かされている作品でもあるのです。
さらに、もうひとつ。児童文学作家・絵本作家の村中李衣さん伺ったお話を…
村中さんが、ある子どもに「あらぺこあおむし」の読み聞かせをしていた時のお話。その子は「食べても腐らない」と、あおむしの食べているモノを指さしながら村中さんに指摘したのです。村中さんは「???」。しかし、村中さんは気づいたのであります!
この子が出会っていた「はらぺこあおむし」と、村中さんの出会っていた「はらぺこあおむし」の版が違っていたことを…。
登場するリンゴやイチゴなどの食べ物、ページの裏表で比べてみると、新版の方は、色も姿も変わってなかったのです。(旧版は腐っている風に描かれています)後日、村中さんは、原作者のエリック・カールに「ヘイ、カール!!」(長嶋茂雄風)と言ったかどうかは定かではありませんが、
「なぜ版を改める時に、裏表の食べ物のデザインを同じにしたのか」と手紙で問いただしたんだとか…
すると、カールさんからお返事が…カールさんのお答えは「よりシンプルにすることで、わかりやすさをめざした。」とのこと。そして、この女の子のことを伝えると、「子供たち、特に東洋の子供たちの神秘性にはいつも驚かされる。」という言葉が寄せられたそうです。
旧版、新版の違いをいくつかご紹介してきましたが…まだまだ、違いはあるかもしれません。(あります)ぜひ、旧版、新版を手にいれ比較してみるのはいかがでしょうか!!
これもある意味、「大人買い」ですかね(笑) …