日本では、急速な高齢化により骨粗しょう症の患者数が増加。骨粗しょう症によって骨折が生じやすくなり、要介護状態や寝たきりの原因となってしまうこともあることから、その対策が社会的に重要な課題となっている。その一方で、知らないうちに骨粗しょう症が進行していたり、自覚がないうちに骨折をしていたり、骨粗しょう症のリスクがあまり知られていない傾向にある。
そこで、高齢者だけでなく、忙しい毎日を過ごす現役世代が健やかに過ごし、未来に備えておくために、今だから知っておきたい「骨粗しょう症」のリスクについてジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー主催のもと、セミナーが開催された。
当日は九段坂病院 診療部長兼整形外科部長 大谷 和之先生より、「骨粗しょう症のちょっと怖いお話」と題し、骨粗しょう症の基本的な知識をはじめ、日常に潜む骨折リスクや治療の現状などについて講演があった。
骨粗しょう症とは、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患をさすと大谷先生は説明。女性は閉経後に骨密度が一気に下がる。そのため、年配になると6人に1人は骨粗しょう症と女性の有病率が高く、70代になると2人に1人が骨粗しょう症となる。しかしながら、治らない病気ではなく、適切な治療を行うことで、骨密度を増加させることができると先生は語った。
骨粗しょう症になると、わずかな力でも骨折しやすくなってしまうのが問題だ。例えば、布団につま付いただけ、重いものや植木鉢を持ち上げたら、家の中で尻餅をついてしまったら、と日常の動きや屋内での転倒で骨折した患者が多い。
実は介護が必要となった主な原因の第3位が骨折・転倒だ。最悪の場合、寝たきりになり、家族への介護負担にもなると先生は説明した。
骨粗しょう症の代表的な骨折としては転倒して手をついた時などに折れてしまう「橈骨遠位端骨折」や転倒での「大腿骨近位部骨折」などがある。また、「骨粗しょう症性椎体骨折」は骨粗しょうに関連する骨折の中で最多にも関わらず、軽症や無症状もあるため、気づかずに日常生活を続けてしまう人もいる。一気に身長が縮む時は骨折の可能性もあるので速やかに病院に行って検査をした方がいいと説明。また、既存骨折があると将来の骨折率が4倍にもなるのでしっかりと治してから運動などを進めたい。
骨折の診断はレントゲンで確認。しかし見落とすこともあるので診断制度が高いのはMRIとなり、古い骨折もわかると先生は話す。そして治療は安静にしコルセットを用い、それでも治らない場合は手術となる。
骨折により腰曲がりなど猫背のように背中が曲がってしまう重度後弯変形となると姿勢の悪さから日常生活に制限がかかり、QOLを低下させる。
例えば、長距離歩行の困難や同じ姿勢での腰痛、胃を圧迫するため胃食道逆流症、腹部圧迫感などを起こす。また骨癒合が未完成なら寝ている時に寝返りや起き上がりができないことも発生する。動きずらさや容姿により引きこもりにも繋がり、うつを引き起こすこともある。
妊娠後に急に腰が曲がってしまい、原因を見たところ、骨粗しょう症で骨が折れてしまっていた40代女性の症例を紹介し、年配の人だけでなく、若い世代から予防に努めていくようアドバイスした。
そんな骨粗しょう症の予防法としては20代が骨密度のピークとなるため、若年期では健康な生活習慣で最大骨量を得て貯金をつくるのがポイントだそう。その後、中高年期には喫煙と飲酒に気をつけ、骨粗しょう症検診を受けることが重要だ。食事としてはカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質を摂取し、適度な運動週間を身につけるのが予防法となる。
最後にジョンソン・エンド・ジョンソンより労働安全から考える骨粗しょう症予防エクササイズが紹介された。日常や職場でできる足踏みやスクワットなどで、ながら運動でもできるエクササイズだ。
急に運動をすると体に負担がかかるので様子を見ながら徐々に増やしていくのがポイント。また骨密度は運動で少しは増やせるので日頃から予防のために取り入れたい。
セミナーでは多くのことを知れた。そして知ることは予防にもつながる。このように骨粗しょう症は侮れない疾患なので、知識としても備えておいておくことが大切だ。