先日、児童虐待防止対策の強化に向けて、児童福祉法や児童虐待防止法などの改正案が国会に提出されました。その背景には、全国の児童相談所が相談や通告を受けて対応した児童虐待の件数が、1990年度の集計開始から27年連続で増加中ということがございます。
そんななか、絵本業界の中でも動きがございました。先日、2001年に岩崎書店から刊行されていた児童虐待をテーマにした絵本「あなたはちっともわるくない」が緊急復刊されたのでございます。
「あなたはちっともわるくない」(作・絵:安藤由紀 出版社:復刊ドットコム)
両親から虐待を受けた“ちびくま”くんが、友だちや医者のやぎ先生に支えられて立ち直っていく物語でございます。
2000年11月に「児童虐待防止法」が施行されており、その流れを受けての刊行かと…。そして、18年経った今年、児童虐待が大きな注目を集め、児童福祉法や児童虐待防止法が見直されるなか、復刊となったのでございます。
そして、今回ご紹介したい絵本というのが、こちら。
「まねっこでいいから」(作:内田 麟太郎 絵:味戸 ケイコ 出版社:瑞雲舎)
出版社の内容紹介には、「ママ、まねっこでいいからだっこして」 抱きしめればきっと世界が変わるはず。子供を抱きしめることの大切さを教えてくれる現代の母子の愛情を衝撃的に描いた感動の絵本。と、書かれております。具体的にご紹介すると、虐待されて育った母親と、その娘とのお話でございます。
虐待を受けて育った子どもは、自分も親になった時、同じように虐待してしまうという話も聞きます。もちろん、すべての親ではございませんが。
このお話の母親は、幼い頃に虐待を受けており、どうしても子どもを抱くことができませんでした。なんで…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、幼い頃に心に負った大きな傷は、そんな当たり前のことさえもできなくさせてしまうのでございます。
そんななか、その娘が「まねっこでいいから抱っこして」と母親に告げます。
母親は…。この先は、是非本を読んでくださいませ。図書館にもございます。
虐待を受けた経験のない母親、父親にも読んで頂きたい一冊でございます。
けして道徳的な絵本ではございません。物語として心に浸みてくる絵本でございます。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)