若者は、社会ルールを作る側に立てるか ~「ルール形成」に目覚めた学生らが国会議員に提言~

2026/03/30
マガジンサミット編集部

「サナ活」という言葉に象徴されるように、国政選挙はいま、いわば推し活の様相を帯びつつある。その中心にいるのが若者であり、SNSを通じた共感や拡散が、選挙結果を左右するほどのうねりを生み出し始めている。

その若者の熱量を、思いや意見で終わらせず、社会ルールを具体的に創り出すリーダーへと育成しようとする取り組みが、「学生ルール形成アイデアコンテスト」だ(主催/EYストラテジー・アンド・コンサルティング)。2025年度は全国から約100団体が参加し、優勝・準優勝の2チームが、社会ルールをつくる一歩として、2026年3月、自民党青年局にて国会議員に提言を行った。

優勝チーム「就活民主化プロジェクト -当たり前をやめ隊-」(法政大学・廣田愛莉さん、東京大学・ナップ アリエルさん、白百合女子大学・瀧川ことみさん)が提起したのは、「無給インターン」をめぐる問題だ。

実務に近い業務にもかかわらず報酬が支払われないインターンが数多くある現状を、彼女たちは「hope labor(希望による労働)」と定義した。将来のチャンスと引き換えに賃金が無報酬として働く仕組みがあることで、経済的余裕のある学生ほど機会を得やすいという格差を生む。彼女たちはこれを個人の努力ではなく「構造的な搾取」と位置づけた。

メンバーのナップ・アリエルさんは、自身がインターンを断念したときの想いを語る。
「私は週5、6でバイトをしているので、大使館のインターンに興味はあっても、無給だと両立が難しい。インターンに挑戦できる余裕がある人のほうが、いろいろな経験を積んで、それが将来に生かされていくんだな、と感じました。」

こうした問題意識を背景に、彼女たちは「学びながら報酬を得ることを当たり前にする」制度を提案した。国が基金を通じて教育目的のインターンに補助を行い、学生が報酬を得ながら単位認定を受けられる仕組みを整える。特定の大学に限らない共通プラットフォームとして設計することで、意欲と学びに基づいた機会の公平性を担保し、教育とインターンが接続された新たな学びの形を提示した。

これに対し、平沼正二郎 青年局長・衆議院議員は、「これまで十分に整理されてこなかった論点に光を当てる提案」と評価したうえで、制度化にあたっての具体的な課題にも踏み込んだ。例えば、有償化を進めた場合に「報酬をめぐる競争が過度に加熱しないか」という点や、同じ報酬水準でも業務内容の濃淡が生じた場合に、それを制度上どのように扱うのかといった設計上の難しさを指摘した。

また、草間剛 国際部副部長・衆議院議員は、自身が国会インターンをした頃は制度自体が普及途上だった一方、現在は就職活動の一部として組み込まれ、格差や公平性の観点から「学生を取り巻く環境が大きく変化している」と指摘。インターンと労働の境界をどう整理するかという論点を示した。

さらに、大空幸星 学生部長・衆議院議員は、無給インターンをめぐる制度上の前提についても言及した。企業の指揮系統下で働く場合は、現行の労働基準法上も賃金支払いが必要となる一方、短期のインターンなど学習機会として位置づけられるものについては一律の規制は難しいとの認識を示し、「何をどういう形で制度化するのが望ましいのか」を問いかけた。

その上で、「hope laborといった言葉だけでは現実の政策は1ミリも進まない」と指摘し、政策を前に進めるためには概念を、平易な日本語に翻訳する必要があると述べた。インターンの定義について政府としての整理を確認するため厚生労働省へのヒアリングを行う方針を示した。また、無給実態や長期・短期インターンの比率などについて、追加的な情報収集を進める考えを明らかにした。

準優勝チーム「早稲田大学雄弁会ルール形成戦略研究会」(早稲田大学・小田茜音さん、多胡七香さん、竹内柚葉さん、山田仁之佑さん)は、「子どもは家庭の私有財産」という暗黙の規範が子育ての孤立を生んでいると指摘した。こうした状況に対し、「子どもは社会のコモンズ」という新たな規範への転換を提起。子育てを家庭に閉じたものではなく、社会全体で支える対象として捉え直すことで、誰もが関わり、支え合う仕組みへと変えていく必要があると訴えた。

その実現に向けて、こども基本法の見直しといった制度レベルの再設計に加え、育休取得者の同僚に生じやすい業務負荷を支える仕組みなど、子育てを家庭の外へと開く具体的なルール形成を提示した。

これに対し、平沼議員は、自身の子育て経験にも触れながら、「子育てが、かつては社会全体で担われていたのに対し、現在は親に負担が集中しやすい状況になっている」と共感を示し、「社会全体で子どもを支えるという視点は、今後の子育て政策において重要だ」と述べ、提案の方向性を評価した。

一方で、大空議員は、少子化対策や子育て支援については、政策の前提となるデータの捉え方や調査の信頼性を丁寧に見極める必要性に言及したうえで、客観的な事実に基づいた制度設計の重要性を強調した。

そして草間議員は、「やっぱり子供ってかわいいんですよ。子育てをコスパで見られたら悪いとなるのかもしれないけど。大変だけど素晴らしいんだ、っていう点を言語化して伝えられていないジレンマが僕にはあります」と述べたうえで、「子育てって、みんな怖い?」と学生らに問いかけた。

これに対し、山田さんは、「僕は子育てに参加したことがなくて、分からないから怖い」と率直に述べた。一方で、竹内さんは、「怖さと同時に、私は自分の親の子育てを見てきたことから、子育てに対する憧れもあります。年の離れた兄弟がいて、子育てには本当に楽しい瞬間がたくさんあるというのも感じています」と述べ、その価値を社会全体で共有するためには、すべての人が子育てに関わる社会につながる政策が必要だと指摘した。

こうしたやりとりを受けて草間議員は、「まさにこういった学生ならではの視点というのが、この永田町ではなかなか聞けない機会であり、ルール形成の観点からの提言は数少ない」と述べ、今後の検討につなげていく姿勢を示した。

「学生ルール形成アイデアコンテスト」を主催した「EYストラテジー・アンド・コンサルティング」のストラテジック インパクト パートナーの國分 俊史氏は、「応募いただいた学生から『社会に対する不満をルールという形で表明できる場をもらえてとてもやる気になった』などの声を頂くようになり、現代社会に学生が感じている憤りに、当社のコンテストが大きく貢献できていることを実感した」と語る。

対話から見えてきたのは、若者が政治に対して、「ルール設計」の提言主体へと立ち位置を変え始めていることだ。コンテストにとどまらず、政策の現場へと踏み出したこの取り組みは、日本の意思決定プロセスにおける新しい可能性を示している。

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