出版不況が叫ばれ続けて幾年月。独自の工夫を凝らして新たな本の楽しみ方を提案する書店が続々と誕生しています。一度は訪れたい、できれば何度でも訪れたい書店を探っていきましょう。
下北沢【B&B】
若者カルチャーを支える町・下北沢で人気を集めるユニークな書店といえば【B&B】。英語圏を旅行される方ならB&Bと聞くと「Bed & Breakfast」、つまりは朝食付きの低価格宿泊施設を思い浮かべるかもしれませんが、下北沢のB&Bは“Book & Beer”を略した店名です。
その名のとおり、本を読みながらビールを飲めるお店。最近増えてきたブックカフェをさらにアレンジした形態といっていいでしょう。
毎日開催されるトークイベント
また【B&B】では毎日（本当に曜日を問わず毎日！）ゲストを招いてのイベントが開催されているのも大きな特徴です。
多くは新刊を出した著者による、著書と関連したトークイベントですが、時には参加者自身も登壇者といえるような読書会やワークショップ、アーティストを招いての音楽ライブの日も。
【B&B】のスタッフの方に話を伺ってみると、「生ビールほかドリンクも各種提供しておりますので、飲み物片手に気軽に参加してみてください」とアドバイス。
「イベント開催中は店内の半分が会場になりますが、入口からの手前半分は通常の書店営業をしています。だから、ふらっと立ち寄っても大丈夫」とのこと。予想外に興味深いイベントに偶然出会っちゃうかもしれませんよ。
本と飲み物…本屋まるごと購入可！
ビールを飲んでリラックスしながらの本との出会い、意外なイベントとの出会いはもちろんですが【B&B】の特徴はそれだけではありません。
2015年2月号の『ダ・ヴィンチ』の特集『本と住まう』でも紹介されているように、店内に置かれているインテリアも実は購入可能なんです。
天井からぶら下がるオシャレな照明。お客さんが腰掛けるイスやテーブルはもちろんのこと、店内に並ぶ本棚類まで！本棚を購入して即お持ち帰りもできます。（そこに陳列されている本の置き場がどうなるのか、ちょっと心配になりますが）。
まるで本の地産地消。ココだけにしかない本の品揃え
「特に吉本ばななさんのエッセイ『下北沢について』全10冊は、ここでしか入手できない冊子です。初の出版プロジェクトとして、下北沢在住の作家、よしもとばななさんの本の刊行も行っています。」
本来、街の本屋さんは地域に根ついた存在でした。そんな地域ならではの情報を、本屋さんがプロデュースして発信する。新しいコミュニティのカタチです。
雑誌ではB&B発起人・嶋浩一郎さんが編集長を務める雑誌『ケトル』も根強い人気だそうです。
「大型店舗ではなく、限られたスペースではありますが、お客様の知的好奇心を刺激して訪れる度“新しい発見”や出会いを作り出せるように、スタッフ全員で選書して品揃えをしています。」とスタッフ。
なるほど、売れ筋の本だけを揃えるのは、本屋として“栄養不足”になるということかもしれません。利益を追求するだけでは“豊”な空間とはいえないですよね。
B&Bは、地元に根付く街の本屋さんの新しいカタチを提案しています。小さな書店が、書籍や雑誌だけで利益を上げるのは難しい時代になりましたが、本を囲む豊な空間ごと提供することで、全国からお客さまが訪ねてくる本屋さんになりました。
気に入った本棚があったらどーんと買っちゃって、自宅に『B&B』風なレイアウトを再現し、ビールを飲みながら蔵書を眺めるなんて、なかなか素敵な贅沢じゃないでしょうか。
いずれにせよ、まずは一度、直接足を運んで体験してみなきゃこの魅力はわかりません！下北沢へ行く際には「B&B」訪問もスケジュールに組み込んでおきましょう。
【B&B】 http://bookandbeer.com/
【住所】東京都世田谷区北沢2－12－4 第2マツヤビル2F
【営業時間】 12：00～24：00 DRINKのラストオーダーは23：30
【休業日】年中無休（年末年始 および特別な場合を除く）
