12年ぶりに制作された東宝『ゴジラ』シリーズ最新作、庵野秀明総監督による『シン・ゴジラ』が公開間近であり、この夏、我らがゴジラが再び日本を席巻する予感だ。
そんな『シン・ゴジラ』の公開を記念して、講談社より『ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX』全51巻(予定)が創刊された。
今回の『ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX』では、作品公開時の劇場パンフレットはもちろん、宣材用ポスターやチラシなどのコレクションが復刻版特典としてついてくる。
これは、かなり臨場感たっぷりのDVD・BOXになるはず!詳細を講談社アミューズメント編集チームの富岡広樹氏に伺った。
絶句!ゴジラ級のスペシャル特典とは?
「じつはね、お見せしたいものがあるので…ちょっと待っていてください」そう言いながら、部屋を出てゆく富岡さん。何やら両手いっぱいに抱えて戻ってきた。
「公開当時の映画宣伝用の“3シートポスター”です。原寸大を復刻しました」
―― !?
慌ててその場にいた全員で受け取り机の上に広げると、その大きさ約、天地103㎝×左右220㎝ !
「全巻購入された方にさしあげるスペシャル特典のサンプルです。映画の宣材用ポスターで、野外看板などに使用されていたものを完全復刻しました」
- キングコング対ゴジラ(1962年8月公開)の3シートポスター復刻版(サンプル)。3シートポスターのなかでもデザインが秀逸とマニアの間でも人気の一枚。
―― こ…これはすごい破壊力…でも3シートポスターってなんですか?
「ポスターをよく見てみて下さい。ここ、俳優さんの顔がズレているでしょう?これは1シート(B1)を3つ貼り合わせて作っているんです。当時は巨大なポスターを一枚で印刷する技術がなかったので、こういう形で作っていたんです。ちなみにゴジラシリーズには、未確認ですが日本映画最大の大きさといわれている“10シートポスター”というのがあります」
―— 10シート!?3シートポスターでこの迫力ですから、さぞや凄かったでしょうね
「じつは10シートポスターの復刻も検討しましたが、庭に広げて屋上から見下ろさないといけないスケールで(笑)普通には “見えない”んです。そこで、絵柄の豊富な3シートポスターを3種類セットにしました。この大きさならば屋内に貼って楽しんでいただけるでしょう?」
ポスターの字体が、統一されてないデザイン。こんな発見もあるから面白い。
出版社ならではの“こだわり部分”
「今回の『ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX』では、開いた瞬間、昭和の映画館にタイムスリップしていただきたいと思いまして。そこで封入特典としてDVDに関係する復刻版「パンフレット」「半裁ポスター」「スピードポスター」「東宝プレスシート」「東宝写真ニュース」などをお付けしています」
―― 今回の復刻特典は、とても印刷にこだわっていると伺いました。
「ポスターやパンフレットは、復刻物によっては“5色印刷”を使用しています。特色印刷とも言われ普段使われている基本の4色に、プラス1色することで作られる印刷技法なのです。当時のポスターは、今では使われない紙や色が多くて、復刻するのに納得の色が出せず何度も刷り直しをしました」
―― だからですね!昭和のニオイを感じます。(雰囲気だけでなく、本当に“紙”と“インク”の独特の良い香りがします)
「講談社で発刊した週刊誌やコミック誌、幼年誌に掲載されたグラビア記事や付録冊子なども、できるかぎり収録したいと考えています。初回限定ですが、復刻版「怪獣絵物語ゴジラ(『ぼくら』昭和30年3月号付録)」というゴジラのコミカライズ作品などは、なかなか貴重だと思います」
―― 裏表紙の宣伝がそのまま載っていますね!これはたまらない!
「マンガの裏表紙に掲載されている、今はもうない旅館の広告もそのまま使うことにしました。広告については極力、当時のままを載せようと考えています。ただ、なかには残念ながら掲載NGのものもあり、その場合は、映画のプロップ(映画に登場する「ゴジラ上陸!」とかの劇中新聞)などの紹介を差し込もうと考えています」
―― 復刻版と聞いて楽しみにしていると、今っぽい感じにがっかりすることもあるのですが、特に気を使われたことはありますか?
「復刻と一口に言っても、いろいろと大変で(笑)。そもそも当時のキレイなものが残っていないんです。残っていたとしても古く変色しているなどで“まま”を再現するのが難しかったです。懐かしさを感じていただくと同時に、ちゃんと読めるものとして作りたかったのでね」
―― 紙質も、一般的な紙とは違うようですが?
「これまた、当時使っていた紙が今は残っていなくて。それに近い“わら半紙”のような薄くてざらざらとした紙を探しまわりました。スタッフは実際に子供のころ、初期の『ゴジラ』からシリーズを観ていた世代が多いため、むかし、肌で感じた感覚をフルに再現してもらいました」
―― 今回のコレクション以外、他では手に入らないものはありますか?
「次回作品の速報用に劇場に配布された縦長状の簡易ポスター(スピードポスター)や、プレスシートも当時のまま復刻しました。映画館で宣伝用に切って使うレタリングされたゴジラの文字や、ゴジラに関する挿絵などが珍しいですね」
編集中に感じたゴジラの魅力とは?
―― 『ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX』の編集を通して、改めて感じられたゴジラの魅力はありますか?
「私は、昭和ゴジラ世代なので昭和ゴジラに愛着が強く、あらためて平成ゴジラ、ミレニアムゴジラを見直して、どれもよく考えて作られてることに感心しました。平成ゴジラ以後の監督は、みな昭和ゴジラで育った熱烈なファンであり、原風景の1954年の『ゴジラ』に自分が何を付け加えられるかを考えています。試行錯誤して、うまく1時間半に落とし込めた作品も、上手くゆかなった作品もあるかも知れませんが、単なる娯楽映画と気を抜いて作った作品は1本もないと感じます。そして、今、その先頭にいるのが庵野、樋口両監督でしょう」
―― ゴジラは、ゴジラ映画であって、もはや一つのジャンルだと考える人もいますよね。