広瀬すず、姉・アリスとの独特な関係性を解説「なんか不思議な距離感」

2022/04/14
石井隼人

2020年本屋大賞を受賞した作家・凪良ゆう氏による傑作小説を原作にした、映画『流浪の月』(5月13日公開)。その完成披露試写会が4月13日に都内で行われ、主演の広瀬すず、松坂桃李、共演の横浜流星、多部未華子、そして李相日監督が出席した。

10歳の時に誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗を演じた広瀬。李監督とは前作『怒り』以来6年ぶり2度目のタッグ。李監督から「広瀬すずの代表作を作らねばと思った」と告げられた広瀬だが「この6年の中で価値観やお芝居の感覚など色々なものがだいぶ変わっていたけれど、監督とお会いしたときに『どうしたらいいのかわからない』とすぐに相談してしまいました」と照れ笑い。李監督からは「それじゃこの映画はダメだね」と言われたそうで「そうですね、頑張りますと答えました」とはにかんで撮影前のやり取りを明かした。

その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文役の松坂。「僕史上一番難しくて、掘っても掘っても答えが見つからないというか、霧の中でもがいているような、そこをずっとさ迷っている感じだった」と難役挑戦を自負し「監督が寄り添うというよりも、一緒に霧の中をもがいてくれて、役として同じ熱量、角度で向き合ってくれた。それに救われた」と李監督との共同作業に手応え。役作りの一環として「撮影地のアパートに寝泊まりしたり、日記を書いたり、コーヒーを淹れ続けたり」と演じる上でのヒントを模索していたという。

事件から15年経った現在の更紗の恋人・亮役の横浜は「チャレンジしかなかった。今回はより自分の中に大きな壁が立ちはだかった感じ」と撮影を回想。亮の人としての甘えが理解しがたかったそうで「僕は十数年間空手をやってきて、人に弱みや涙を見せるな、男はこうであるべきだと叩きこまれてきたので、甘えとはなんだろう?というところから始まった」と悩んだという。

そんな横浜と広瀬の距離感を縮めるために、李監督は二人にとあることを提案。それは膝枕だった。横浜は「広瀬さんに膝枕をしてもらってみたけれど、これだと重いかな?体重をかけ過ぎかなとか?思ったりして」と照れつつ「そこで少しずつ距離感を近づけていけたし、人に甘えるとはこういうことかと…」と広瀬の膝枕を述懐。李監督から「でも気持ちが良かったでしょ?」と聞かれると「少し…はい」と答えて笑いを誘った。

一方の広瀬はその膝枕に「30分くらいリハ室で二人きりにしていただいて膝枕をしてみたけれど、お互いに極度の人見知り。体重も1、2キロくらいしか乗せてくれなくて言葉も敬語で…。なんかカオスでした」と思い出し笑いだった。

癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみ役の多部は、二人の膝枕エピソードを「初めて聞いた。私は何もないままに撮影に参加したんだなあと思った」と驚き、「膝枕はなくて、手を繋いだり抱きついてみたりしただけ。私ももう少し色々としたかった」と松坂に告げると、すかさず松坂から「もう少し色々としたかった?それ凄く意味深ですよ…」とツッコまれていた。

広瀬と松坂は2作目の映画共演。広瀬は「あれ?誰だろう?と思うほどに、お芝居中は文そのもの。でもカメラの回っていないところではフラットなまま。不思議な方でした」と印象を明かすと、松坂も「いやいや、それはこちらもです。前の現場とは印象が全く違くて、こっちが広瀬すずなのかと思った。お芝居をするときも、お互いのはらわたを見せ合わないとできないよね、という認識の上でやっていところもあった」と分析した。

松坂と共演の多い多部は、松坂が撮影前に淹れたコーヒーを飲んだとういうも、李監督からは「多部さんはコーヒーが飲めない」とまさかの事実が。多部が「私はコーヒーが苦手で、どうしようと思いながら、飲まないわけにはいかないと」と打ち明けると、松坂は「お優しい方だから。グッと飲んでくれました」と気遣いに感謝していた。

〈宿命〉という絆で結ばれる更紗と文の関係性にちなみ、それぞれの「宿命の相手」を発表。李監督は「映画」といい、横浜は「自分」と発表。「常に自分と向き合わなければいけない。空手でも仕事でもそう」とストイックに語り出すと、李監督から「撮影ではこういう感じをほぐそうとしたんです!」と指摘され、横浜は「…はい、スイマセン」と赤面していた。

多部は「もうひとりのわたし」といい、松坂は「樹木希林さん」と答えた。初主演映画で樹木希林さんと共演した松坂は「番宣にもわざわざ付いてきてくれて、『あなたね、喋る前にあーとかえーとか言わないの』『記者の方が同じ質問をしてきても、同じ返しではダメよ』と言われて。お芝居から人から番宣のことまで教えてくれた」と感謝。しかも今回は希林さんの娘で女優の内田也哉子が母親役で「縁を感じてゾクッとした。お母さんとのシーンでは僕の中でなんとも言えない感情が巻き起こりました。今だったらなんと言われるのだろうかと思ったりしました」と不思議な偶然に感慨を抱いていた。

一方の広瀬は「姉」と回答し、「姉妹であり、友達であり、同業者であり、いつもなんだろうなと思ったりして。切っても切れないし、先輩でもある。なんか不思議な距離感の姉妹だと思う。なんともいえない、言葉に表せない存在は姉かもしれません」と姉・アリスとの独特な関係性を告白した。

最後に主演の松坂は全国公開に向けて「作品がどう受け止められるのだろうかという恐怖もある。登場人物の関係性や世界観がどのように皆さんの目に映るのか。怖いですが、しっかりと見ていただきたいという気持ちが大きい」と観客の反応に興味津々。同じく広瀬も「李監督の作品に出演できたことも光栄だし、李監督の映画は改めて凄いと思いました。みんなでお腹の中のマグマを吐き出しながら作った映画です。一人でも多くの方に届いたら嬉しいです」と大ヒットを祈願していた。

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石井隼人

映画好きエンタメ系フリーライター。「来るもの拒まず平身低頭崖っぷち」を座右の銘に、映画・音楽・芸能・テレビ番組などジャンル選ばず取材の日々。ありがたいことに映画作品のパンフレット執筆、オフィシャルライター&カメラマンを拝命されたり、舞台挨拶の司会をしたり…何でもやります!

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