劇場版『鬼滅の刃』が大人気です。映画館には老若男女大勢の人が詰めかけ1日に何度も上映され、史上最速とも言われる売り上げです。ついには女性ファッション誌でも特集が組まれたほど。もともと少年漫画誌で連載されていたこの作品は、なぜ女性たちの心も捉えたのでしょうか。
女性誌でメイク特集
『鬼滅の刃』旋風は女性誌にも吹き荒れています。特集記事が組まれるだけでなく、『Seventeen』や『anan』では表紙を飾りました。上映中の映画に関する記事が多いなか、異色だったのは『MAQUIA』2020年12月号。なんと登場人物キャラ風のメイクを伝授しているのです。
戦闘シーンが多い印象のこの作品、実は女性キャラが何人もいます。どの女性も可愛いうえに強いので、憧れてしまう人も多いでしょう。しかも無理に筋トレをして男性と張り合うのではなく、しなやかさを生かし、ひらりと舞うように闘うキャラもいて、魅力的なのです。
女性らしさが光る作品
似たメイクをして少しでも彼女たちに近づけたらと思う女性もいれば、コスプレする時にメイクのコツを知りたいと思う女性もいるのでしょう。キャラごとにテーマカラーも違うので、色を使いこなして、キャラに寄り添いたい人もいるでしょう。
『鬼滅の刃』が優れているのは、女性の生きづらさをも随所に盛り込んでいる点です。鬼だけではなく、身近にも発生する敵も描いているのです。親切に助けてくれた人が実は横暴でひどい人だった、などというつらさ、耐えながらも闘う彼女たち、そんな姿が多くの女性の胸を打っているのではないでしょうか。
コロナだからこそ
新型コロナウイルス拡大防止のため、外出にもかなりの制限がかかる今日この頃です。こうした閉塞的な状況とこの作品は不思議なほどマッチし、観客の共感を呼んでいるのでしょう。主人公は鬼と戦い、数多くの鬼を倒し続け、闘いに疲弊していきます。その姿がウイルスから身をかわしながらも終わりが見えずに苦しんでいる自分たちの姿に重なるのでしょう。
『鬼滅の刃』主人公・炭治郎の妹、禰豆子(ねずこ)には、常に口をふさいでいなくてはならない事情があります。くぐもった声しか出せない彼女の姿に、女性たちは、マスクを常にしていなくてはならない自分の事情を重ねているのかもしれません。私たちはこの映画にウィズコロナを生きていく力を与えてもらっているのだと思うのです。