もうすぐ節分、本屋さんの絵本コーナーには節分モノ(鬼・豆)の絵本がずらりと並んでおります。節分モノの絵本はたくさんございますが、大人向けのものは少ないのでございます。がしかし!秀逸な大人絵本がございます。
よく大人向けの絵本、深い絵本として「100万回生きたねこ」が挙げられますが、その節分版と言っても過言ではございません。大人が「じんっ」とくる絵本でごさいます。
ちなみに、「100万回生きたねこ」は、去年40周年を迎えたログセラー絵本。220万部を超えております。現在、40周年記念のオリジナルカードつき絵本を数量限定で販売中でございます。話が脱線いたしました。本題に戻ります。その大人向けの深い節分絵本とは…
「おにたのぼうし」(作:あまん きみこ 絵:岩崎 ちひろ)
主人公は物置小屋の天井裏に住んでいる“おにた”という名前の鬼の子供。節分の日、どこもかしこも絶賛豆まき中。居どころをなくしたおにたは、小屋を出てぶらぶら。そこで病気の母親と住む人間の女の子と出会います。そして…。
いっけん、節分がモチーフで主人公も子供なので普通の子供向けのように思いますが、大人が読むと、この絵本はとても深い絵本になるのでございます。節分の日を舞台にした大人向けのせつない、そして考えさせられる絵本なのでございます。
小生が先日、この絵本を読んだ時は、TOKIOの長瀬智也様が主演のドラマ「ごめん、愛してる」(TBS)を連想いたしました。自分のことを愛して欲しい相手が、自分のことを憎まなければならいない立場にある…絵にかいたような「人生のいたずら」、そんな韓流的な要素が、この絵本にはあるのでございます。韓流ドラマファンには、たまりまセブンなのでございます。
絵も大人向きでございます。とても素敵でございます。いわさきちひろ様の美しい絵が、この絵本のせつなさや美しさをさらに引き立てております。ちなみに、いわさき様は、「窓ぎわのトットちゃん」の挿絵でもお馴染み。
ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、小学館児童文化賞受賞、文部大臣賞、厚生大臣賞など数々の賞を受賞。自身の名前が冠になった美術館が2館もあるほどでございます。
節分の日の夜、ぱらぱらと撒かれる豆が、おにたが流した涙のように見えるのでございます。ぜひ、これをご体験頂きたいのでございます。
せつないのに、優しく、温かく、そして心にぐっときてしまう・・・
寒い冬、心を温めてくれる癒し系絵本でございます。
(文:N田N昌)