コーダという生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・五十嵐大さんによる自伝的エッセイを映画化した『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(9月20日公開)。9月5日には都内映画館で完成披露上映会が実施され、主演の吉沢亮、共演の忍足亜希子、そして呉美保監督が登壇した。
満員御礼の会場を前に、主演の吉沢は「ようやく公開日も近づいてきて、今日こうして皆さんに観ていただく日が来たという事で、この作品を通してどんなことを感じていただけるのか、ドキドキしています」と高まる胸の内を語りかけていた。
10月9日から20日までロンドンで開催される、第68回ロンドン映画祭のコンペティション部門への正式出品も決定。6月の上海国際映画祭に続いてのヨーロッパでのプレミア上映に吉沢は「光栄な限りです」としみじみしながら「国や文化を問わず、観ていただいた方に伝わる普遍的テーマだと改めて思いました。これからもより多くの方々にこの作品が広がってくれると嬉しいです」と期待。ろう者俳優である忍足も「日本だけではなく海外の方にも観ていただいて、とても嬉しいです」と喜色満面で、呉監督は「日本の劇場公開を待たずしてこのような朗報を頂けて、ただただ嬉しいです」と喜んだ。
吉沢はろう者の両親を持つ耳がきこえる息子、忍足は聴者の息子を持つ母親を演じた。本作のストーリーについて吉沢は「コーダという特殊な環境に生きてはいるけれど、描かれているのは普遍的なテーマで、家族の関係性や親子の愛情の変化も共感が出来た。純粋に素晴らしいお話だと思った」と感動。忍足も「脚本に書かれているすべてが私の中に入って来ました。様々な葛藤や思いが細かに書かれていて、涙を我慢して共感しながら読み進めました」と感激していた。
コーダを演じた吉沢だが「どの家庭にもどの思春期にも似たような悩みはある。自分の失敗を親のせいにするけれど、それがたまたまコーダという環境で生まれただけで、コーダだから辛いと思い込んでいる。本人にとっては重大な出来事だけど、周りから見たら『親とのあるあるだよね』みたいな距離感を意識していました」と普遍的な人物像を念頭に置いたという。実際に一児の母という忍足は「私には中学1年生の娘がいます。吉沢さん演じる息子が娘と重なるときもありました。娘とは違い、息子は母親に対して反抗したり色々な思いがあったりするだろうとイメージして、母としての気持ちを作りました」と役作りを回想した。
そんな母・忍足との共演について吉沢は「とても温かい方で、忍足さんと(父親役の)今井さんの手話だけは現場ですんなりと入って来て、何を言っているのかわかる。そこに僕は勝手に愛情を感じて、温かい両親だと思った。一緒にお芝居をしていてもチャーミングで素敵なお母さんだと思いながら演じていました」と親子の絆を実感していた。