北陸にアイドル文化を!LIVE無料で5周年「北陸アイドルフェスティバル」は熱い

2017/10/05
放送作家 石原ヒサトシ

2017年9月16~18日、石川県小松駅のエリアで、第5回北陸アイドルフェスティバル(以下、HIF)が開催された。あいにくの台風が近づく中、遠くは東北、沖縄など全国から59組のアイドルが集結し、3日間合わせ約4,000人のお客さんで盛り上がった。

 

有名な「東京アイドルフェスティバル」のように、大きなホールでメジャーアイドルが登場するわけではない。59組のアイドルは決して全国区とは言い難いローカルアイドル(以下、ロコドル)ばかり。

 

HIFの会場は、駅の高架下と広場に組んだ2つの無料開放ステージがメインだ。

20分程の持ち時間で次から次へとアイドルが登場し持ち歌を披露して行く。失礼ながら知らないグループは沢山いた。でもステージ前には地元から駆けつけた熱心なファン、一度会いたかったというコアなファンなどがコールを叫んで応援している。おじさん、おばさん、学生さん、ちびっ子も、何の騒ぎ?くらいの興味を持って足を止め覗いていた。見た目に派手さはないが、これだけ多くのアイドルを集めるフェスは、政令指定都市のない県では最大だろう。

 

そのHIFが今年で5周年という節目を迎えた。資金が乏しいので毎年オープンな会場を借り、必要最小限のセットや機材を用意。採算はど返しで開催してきた。

 

企画・運営をする石川県オタク文化推進委員会の西良弘さんに伺った。西さんは、石川県のロコドル「おやゆびプリンセス」(以下、おやプリ)のマネージャー。100キロを越す巨体という風貌もあってかロコドル界ではちょっとした有名人だ。

 

____HIF5周年おめでとうございます

西 「有難うございます。実は、誰かに言われるまで5周年って気づかなくて(笑)。HIF実行委員会のスタッフが全国のアイドルさんに声をかけまくったら、凄い数が集まっちゃって。感謝感謝です」

 

____アイドルさんは、ノーギャラって伺いましたが!? 

西 「ですね(笑)、本当は出してあげたいけど入場無料ライブなんで。ただ、私んとこの『おやプリ』も全国のイベントに声をかけていただきますが、結構ノーギャラが多いんですよ。でも、参加すれば自分たちをアピールできるし、頑張れば物販の売上も結構ある。ある意味、売り込みの場なので他のアイドルのファンを奪う気持ちでみんなやっているはずです。弱肉強食ですからね」

 

大切なファンのため

総勢59組のアイドルの出番は、3日全て、2日、1日だけ、など参加日はいろいろで、ライブ持ち時間は長くて25分だ。これだと、特に遠くから駆けつけたのに1度しか見られないというのも忍びない。そこで今回は3つのステージを設置する工夫をした。駅正面右側の高架下にAステージ、左側の離れた広場にBステージ。更に夜は、隣接する「マッツ」というライブハウスを用意し、ここだけ入場料をいただくことにした。この3つのステージで、1アイドル最大で2回ライブを披露できるようにしたのだ。

 

※タイムスケジュール、びっしり!

 

※アイドルも設営、撤収をお手伝い。リアルな運営スタッフは5,6人しかいないそうだ

 

____そもそも、HIFを開催するきっかけは?

西 「2012年に『おやゆびプリンセス』を作ったんですが、石川県ってアイドル不毛地帯だったんです。活動を披露する場も少ないし、しかも単独だと知名度がないから人が集まらない。隣県で同じ思いをしているアイドルさんも多いだろうな~と思ったので、じゃあ集めて無料でライブして、大勢の人に観てもらって知ってもらおうと。そこで最初(2013年)に金沢駅前のイベントフロアを借りて開催しました」

 

私の想像で、西さんはアイドルオタクで、東京の大学を出て、芸能関係の仕事に携わって、「いつか地元でアイドルを作りたい」という夢を持っていて地元に戻った・・・とか、そんな感じのプロフィールかと思っていたのだが、実際は全然違った(笑)。

 

※西さんはこんな感じ

 

西さんは、石川県小松市で育ち、高校卒業後は実家の飲食店を経営していた。芸能関係の仕事に興味はなかった。その後、紆余曲折あり、大阪などでゲームやアニメなどのイベント業に携わる。そこでイベント企画の仕組みを学んだ。

 

ひょんなきっかけで、石川県でアイドルを作りたいというミュージシャンと出会うが、その人はアイドルのセールスやイベントのノウハウを知らなかった。そこで手を組むことに。そして2012年に石川県初の地元密着アイドル「おやゆびプリンセス」は誕生する。様々なトラブル、逆にラッキーもあって現在まで続いている。元々芸能事務所ではなく裸一貫立ち上げた事務所で、巨大なバックボーンもない状況からスタートした。なかなか簡単なことではない。

 

そんな西さんが、HIFを継続する意味を唱えた。

             

西 「昔から石川県にエンタテインメントって少ないんですよ。アイドルってテレビの中の世界なんですね。でも今やロコドルが全国に750程いて、インターネットで色んな情報や映像まで見られる時代になったから、たとえ田舎でもイベントを開けば遠くから来てくれる人がいるんです。これって、アイドル側は凄く嬉しいし、やる気に繋がるんですよ。だからHIFは、見せる側のアイドルも楽しくて、見ているお客さんも楽しい、Win-Winなイベントにしたいんです。そして北陸にアイドル文化を根付かせたいんです」

 

HIFのメインは「おやゆびプリンセス」である。メジャーデビューCDはオリコン5位になった。去年の7月にフランスで開催された「ジャパン・エキスポ」に出演し、今後が注目された。ロコドルにして全国的に知名度の高いグループだ。

 

しかし、方向性の見直しなどから突然大晦日に解散を発表。新メンバーを募集した。そして、旧メンバー一人を残し今年の春に“新生おやゆびプリンセス”として生まれ変わった。1から出直しだが、全国どこへでも精力的に出向いてファン獲得の裾野を広げている。活動開始からまだ半年程度だがHIFではギャラリーが最も多かった。

 

____HIFで、おやプリの役割は重要ですね

西 「そう、主催のおやプリが一番しっかりしなきゃダメ。といいつつ、現在のメンバーはほぼルーキーで、パフォーマンスはまだまだです。今後はステージングがしっかりできるようクオリティをアップさせ、魅せるアイドルにレベルを上げて行かなきゃダメなんです」

 

 

“新生おやゆびプリンセス”初のCD「海鳴りDANCE」。9月1日発売で、500枚手売りする目標を掲げ、2週間で達成した。週に3、4日はどこかのライブに出演している多忙ぶり。ワンマンライブは、12月3日(日)「おやゆびプリンセス5周年ライブ」2018年4月1日(日)「新生おやゆびプリンセス1周年ライブ」が待っている。

  

「ドラゴンゲート」というプロレス団体がある。小柄な選手が多く、パワーより飛んだり跳ねたりするルチャリブレというアクロバチックなスタイルが主流で、面白さや格好良さが売り。選手はユニットを組んで対抗させ、マイクパフォーマンスなど、話術も巧みにお客さんを盛り上げる。関西を拠点に全国で興行を行うが、キャパ2000ほどの会場なら概ね満員になるほど盛況だ。

 

おやプリは、こんな、どこに行っても会場を満杯に出来るような地方発アイドルを目指しているそうだ。手作り感が漂うような、お客さんと一体になれるライブで一緒に楽しい時間を共有したい。

 

この理想が叶うレベルに達したら、HIFは高架下で見られるフェスではなくなっているはず。

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この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

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