「くまの子ウーフ」といえば、児童文学作品としてすこぶる高い評価を受けている絵本でございます。累計発行部数は90万部を超え、日本語以外にも6つの言語に翻訳されております。「くまの子ウーフの童話集」は小学校の国語の教科書にも教材として掲載されておりました。
そんな「くまの子ウーフ」の挿絵で知られているのが、ナンセンス絵本作家として有名な井上洋介先生でございます。
笑わせた後に考えさせるのが井上流。「あじのひらき」、「まがれば まがりみち」、「ちょうつがいの絵本」をはじめ、ほんとうに多くのナンセンス絵本を描かれております。小学館絵画賞、日本絵本大賞など数々の賞も受賞されております。
そんな井上さんには、こんなエピソードが…「くまの子ウーフ」の挿絵を描く際、井上様は文章を読み終えずにウーフを裸で描き始めていました。すると途中で「かにをポケットにいれて」という描写がでてきて、あわてて最初に戻ってズボンを描き足したんだとか。
井上様は、このエピソードに対して「こんないいかげんな奴はいないよね」と爆笑し、さらに「でも、いいかげんが好きなんだよ。緊張しきってたり、力を100%出し切ろうとするのは、実力がない証拠」と、インタビューで答えていらっしゃいました。さすが井上様!
そんな井上様、絵本だけでなく、油絵を中心としたタブロー(絵画)もずっと描かれておりました。このタブローがかなりのくせ者(?)でございます。あの愛らしい「くまの子ウーフ」を描いた人間が描いたとは思えない作品が多々、多々、多々、ございます。まさかの「エロ」「グロ」でございます。
井上様は、ご自身のタブローに対する想いについて、このようにコメントされております。
「若い頃から漠然と現代の不条理をモチーフにしたいという気持ちがありました。その後徐々に、自分が少年期に体験した爆弾の恐怖や飢えといった記憶が思い起こされて、今ではそんな記憶がタブローの発想の源となっているような気がする。戦争の災難、自然の災難も含めて、人間が受ける苦痛というのは、時代によって変わるものではないような気がする。人間が被る災難を描きながらも、そんな災難の対極にある「ナンセンス」をいつもタブローに含ませたいと思う。まずタブローを見て、そのナンセンスさを笑って欲しいと思います。そしてその後、人間が被ってきた災難をふと思い出してくれたらな・・・と思っています」と。
そんな井上さまのルーツが垣間見られるタブローの大展覧会「井上洋介没後1周年大誕生会」が3月3日から新宿で開催されます。
とにかくすごい数のタブローで会場が埋め尽くされる予定とか。作品は制作年順に並べられる予定で、井上洋介というタブロー画家としての歴史も存分に体感できる嗜好だとか。
井上洋介ファンの方、「くまの子ウーフ」ファンの方、ぜひ、足を運ばれてみてはいかがでございましょう。場所は、「The Artcomplex Center of Tokyo」(アートコンプレックスセンター)。