
AI議事録サービス「Notta」を提供するNotta株式会社は2025年12月9日、23億円のシリーズB資金調達と新サービス戦略を発表した。発表会では、エンタープライズ領域での急成長を背景に、2026年1月に正式リリース予定の新プロダクトとして音声ファーストのAIエージェント「Notta Brain」が披露された。
文字起こし・議事録作成ツールとして知られるNottaは今、「会話を企業の知識資産へと転換するプラットフォーム」へと進化しようとしている。
エンタープライズ利用が牽引する成長、23億円のシリーズBを実施

Nottaは、Granite-Integral Capitalをリード投資家として、約23億円(1,500万ドル)のシリーズB資金調達を実施した。今回のラウンドは事業拡大期に位置づけられ、法人向けビジネスの強化が主目的となる。
発表によれば、Nottaのユーザー数は国内約300万人、グローバルでは約1,500万人に達している。売上の約70%は日本国内が占め、特に法人会員の増加が成長を牽引している。シリーズA+以降、法人セグメントはMRRベースで約70%成長を記録しており、2026年には法人売上を2〜2.5倍に伸ばす計画だという。
COOの田村清人氏は、「その成長を支えるため、営業・サポート体制の強化が不可欠になる。人員は現状の2倍近く必要になる」と語り、積極的な採用方針を示した。
「会話」は企業の一次情報。Nottaが見据える市場とは

Nottaが注目するのが、音声を起点としたAIエージェント市場だ。資料では、音声AIエージェント市場は今後10年で約20倍規模に拡大すると示されている。
企業内には会議、商談、面談など膨大な会話データが存在するが、その多くは記録されても十分に再利用されてこなかった。Nottaは、高精度な音声認識とAI要約、検索機能を通じて、こうした会話を「蓄積するほど価値が高まる知識資産」として活用することを目指している。
建設、IT、コンサルティング、自治体など、多様な業界で導入が進んでいる点も、同社のエンタープライズ戦略を象徴している。
新プロダクト「Notta Brain」が目指す“第二の脳”

今回の発表の中心となったのが、音声ファーストAIエージェント「Notta Brain」だ。
Notta Brainは、Nottaに蓄積された議事録データに加え、外部から取り込んだ音声ファイルやPDF資料、インターネット上の公開情報などを横断的に解析し、考察から資料作成までを自動化する。
特徴は、単なる要約にとどまらず、複数の会議をまたいだ論点整理や、過去の意思決定の文脈理解までを支援する点にある。発表会のデモでは、建設会社の複数議事録を読み込み、中途入社メンバー向けのオンボーディング資料を数分で生成する様子が披露された。プロジェクトの背景、重要な発言、社内特有の用語まで網羅された資料は、来場者の関心を集めた。
田村氏は開発背景について、「多くのヘビーユーザーは、Nottaで文字起こし・要約した後、ChatGPTなど外部AIにアップロードして分析や資料作成を行っている。Nottaは会話の文脈を最も理解している存在だからこそ、その後の工程まで担えると考えた」と説明した。
β提供開始、まずはWebブラウザから展開

Notta Brainは、2025年12月9日よりβ版の提供を開始し、2026年1月に正式リリース予定。提供開始時点ではWebブラウザからの利用に限定され、有料会員向けサービスとして展開される。料金は検討段階にある。
外部の生成AIサービスを介さず、Notta内で解析から資料作成までを完結できる点も特徴だ。会話データを社外に出さずに活用できる設計は、セキュリティやガバナンスを重視する企業にとって大きな利点となる。
文字起こしの先へ、知的インフラとしてのNotta

Nottaはこれまで、「議事録作成を効率化するツール」として評価を高めてきたが、今回示された方向性はその先にある。会話を“消費される情報”ではなく、蓄積することで価値が増す知識資産として再構築し、意思決定や資料作成、オンボーディングまでを支援する知的インフラへ。Notta Brainは、その中核を担う存在だ。
シリーズBを経て、Nottaはエンタープライズ市場でどこまで存在感を高められるのか。音声×AIエージェントという新たな市場での挑戦が、いよいよ本格化する。
公式サイト:https://www.notta.ai/notta-brain






