コピー機の前に「一日●枚まで」と張り紙がしてある、朝礼で「紙削減に努めましょう」とおきまりのように号令があるというオフィスはありませんか? もしかしたら、そのオフィスの紙削減のやり方はかえって業務効率を下げている可能性もあるのです。
今回は、アンケート調査結果から、オフィスの紙削減の現状を探ってみました。
■企業はなぜ紙削減に取り組んでいるの?
会社で「紙の使用をできるだけ控えましょう」と言われているけれど、なんで?どうして?と疑問に思っている人もいるかもしれません。
エプソン販売株式会社が2019年10月~11月に実施した「ビジネスパーソンの職場における環境問題意識・実態調査」では、「紙の削減」は環境配慮の取り組みの一つとなっていました。
CSR関連、SDGs関連、オフィスの環境改善関連、経営企画、オフィス機器調達などの実務、意思決定者に対して、環境配慮として取り組んでいることを尋ねたところ、「空調の温度調整による省電力化 (49.8%)」、「照明調整による省電力化(46.0%)」、「デジタルデバイスの導入(35.4%)」がトップ3となり、次いで「印刷済裏紙への印刷利用(31.8%)」、「コピーやプリントの印刷枚数制限による削減(30.4%)」と続きました。今、オフィスでは省電力化とともに、紙の削減、ペーパーレス化施策も進められているようです。
こうした職場の環境配慮への取り組みの目的は、「コスト削減(経費節減)をするため(68.4%)」が最も多い結果でした。
今後、環境配慮への取り組みがさらに求められていくと考えられています。そしてそれに加えて、「働き方改革」を背景に業務効率化のためのペーパーレス化も推進されています。
■ペーパーレスオフィスが進まない理由とは?
実はこの紙削減、現場では逆効果になっているという声も挙がっているのです。
エプソン販売の同調査では、多くの職場が紙の削減に取り組めていない理由として、およそ半数が「今までの習慣や業務プロセスを変えるのが難しい(48.8%)」と回答。また、「電子データよりも紙で読む方が読みやすい(30.8%)」、 「紙での保管を社内規則で定めているものが多い(24.4%)」なども挙がっていました。
また、柴田博仁さんの「ペーパーレスオフィスはなぜ来ないのか?紙はどこで使われるのか?」(日本画像学会論文誌、2017)で紹介されているアンケート調査結果でも、紙への印刷理由第一位は「紙で提出・保管・配布する規定があるから」が44.9%で最多となりました。やはり社内ルールや商習慣が、紙削減が進まない理由のようです。
■紙をどんどん使いながら環境配慮を実現する仕組み2選
むやみな印刷・コピー制限は業務効率を下げてしまうこともあることがわかった今、紙を使用しながらペーパーレス、環境配慮への取り組みを進めていく必要があります。ここでは、紙を使用しながら環境配慮をしている取り組み事例を2つご紹介します。
●エプソンの「環境配慮型オフィス」
エプソンが取り組む「環境配慮型オフィス」は、「PaperLab」という、使用済みの紙から水をほとんど使わずに新たな紙を再生できる乾式オフィス製紙機を用いて、紙を再生コピー用紙にしたり、厚紙や色付き紙にアップリサイクルしたりする方法です。
さらに、低消費電力で環境性能に強みのある高速ラインインクジェット複合機/プリンターも活用することで、環境配慮型オフィスのモデルを提示しています。
●野村グループの電子交付サービス化による割引
紙の文書ルールそのものを変えようと取り組む企業もあります。例えば、野村グループは、環境保護のためのペーパーレス化の取り組みの一つに目論見書や報告書の電子化を実施しています。これは目論見書や、野村ホームトレードにおける各種文書の電子交付サービスを提供するものです。
ただ電子化するだけでなく、これらのサービス契約を結んだ顧客には、株式の売買手数料を割り引くサービス「野村のエコ割」を提供しています。この割引も一つの有効な手段と言えそうです。
今後は、業務効率を下げずに紙削減の環境配慮も叶う施策が求められていくでしょう。もし自分の勤めている会社で、むやみな紙削減が叫ばれているなら、現場の声を挙げてみるのもいいのではないでしょうか?