
1966年の創業以来、日本の「しゃぶしゃぶ・日本料理」の代名詞として君臨してきた「木曽路」。その木曽路が、2026年に記念すべき60周年を迎える。この大きな節目を前に、東京・銀座五丁目店で開催された記者発表会を取材した。
そこには、単なる「老舗の周年記念」に留まらない、伝統の継承と現代への適応、そして能登震災への深い慈しみが詰まったドラマがあった。
「認知度7割、利用客1割」の衝撃。社長が語る危機感と勝算

発表会の冒頭、登壇した株式会社木曽路の代表取締役社長・中川晃成氏は、60周年という節目を「人間で言えば還暦。原点に帰り、社会に広く木曽路を知っていただく第二の人生のスタートだ」と力強く宣言した。
中川社長が明かした市場調査の結果は、驚くべきものだった。「木曽路を知っている人は10人中7人もいる。しかし、この3年以内に利用した人はわずか1人しかいない」。この圧倒的な認知度と利用率の乖離こそが、現在の木曽路が抱える課題であり、同時に最大の伸び代であると中川氏は分析する。
「木曽路は高級店ではない。創業者が掲げたのは『しゃぶしゃぶの民主化』だ。かつて高嶺の花だったこの料理を、名古屋で誰もが日常の節目で楽しめるようにしたいという思いが原点にある」。
今回の60周年コンセプト「いいことあったら、木曽路へ」というキャッチフレーズには、誕生日や七五三といった特別な日だけでなく、「ありがとう」「お疲れ様」といった日常の小さな喜びを分かち合う場でありたい、という老舗の願いが込められている。
能登・和倉温泉「加賀屋」との絆。共鳴する「和のおもてなし」

また、石川県能登和倉温泉の名旅館「加賀屋」との共同プロジェクトについても発表された。
震災で甚大な被害を受け、現在休業を余儀なくされている加賀屋。木曽路は6月から全店で「加賀屋ブランド」のお土産品を販売するコーナーを設置し、加賀屋の取引先である生産者をも支援する。さらに、コラボメニューの提供や、料理人・接客担当の「人的交流」も実施予定だという。
「一時的な支援ではない。日本が誇る『和のおもてなし』を共に未来へつなぐための継続的な取り組みだ」という中川社長の言葉には、日本の食文化とホスピタリティを牽引するリーダーとしての覚悟が滲み出ていた。
目玉は「3,900円」の食べ比べ。ユーザー目線の新施策

続いて、伊東裕介執行役員・営業本部長より、具体的なアニバーサリー施策が発表された。中でも注目を集めたのが、「木曽路のごちそうしゃぶしゃぶ サンキューコース」である。

木曽路のクオリティを象徴する国産牛ロース肉に加え、贅沢な「和牛霜降肉」を1枚付けた特別コースだ。これをサンキュー価格の3,900円(税込4,290円)で提供するという。より多くの人に「本物の味」を体験してもらうための、文字通り感謝の企画だ。
さらに、現代の多様なニーズに合わせた柔軟なサービスも導入される。
【肉の量を選べる新スタイル】
従来の120g固定から、90g・120g・180gの3段階から選択可能とした(ディナータイム)。「少しずつ多種類食べたい」「今日は肉を堪能したい」という個別の要望に応える。
【「木曽路ナイト」の始動】
特定の曜日に来店すると、肉の量が1.5倍になる太っ腹な企画を準備中。
【ランチのリニューアル】
選ぶ楽しさを重視し、人気の「籠盛りシリーズ」との組み合わせを強化。

これらはすべて、顧客が「わがこと」として木曽路を選べるようにするための、徹底したユーザー目線の改革と言える。
【実食レポート】職人の技と「加熱しないごまだれ」の衝撃

発表会後の試食会では、総料理長・阿部太氏が監修する「サンキューコース」を体験した。
まず驚かされるのは、肉のクオリティだ。バイヤーが全国の産地から「木曽路スペック」で目利きし、各店舗で料理長が1枚1枚、脂の質や断面の美しさを確認しながらスライスする。この徹底した品質管理が、全国126店舗で維持されているというから驚きだ。

提供の瞬間、接客担当が絶妙な火加減で「最初の一枚」を炊き上げてくれる。うっすらと桜色に輝くお肉を、まずは「秘伝のごまだれ」にくぐらせる。
このごまだれ、実は一切加熱処理をしていない。ピーナッツやくるみなど数種類を独自の比率でブレンドした「生」の状態なのだ。加熱しないことで素材本来の香りとコクが立ち、お肉の脂の旨味と絶妙にマッチする。市販のたれとは一線を画す、フレッシュで深みのある味わいは、まさに唯一無二だ。
国産牛ロースの適度な弾力と旨味、そして和牛霜降肉の甘くとろける食感。この「食べ比べ」を3,900円で楽しめるのは、60周年という節目ならではの好機と言えるだろう。
進化を続ける老舗の挑戦

「半分職人、半分企業人」。木曽路のスタッフが大切にするこの言葉には、チェーン店としての効率を追求しながらも、全店に免許を持つ料理長と、おもてなしのプロである「女将(接客長)」を配置する、専門性への強いこだわりが凝縮されている。
銀座の喧騒から郊外のロードサイドまで、どこに足を運んでも「あの木曽路の味」が安心のホスピタリティで迎えられる。その裏側には、創業100年に向けた不断の努力があった。
60周年のキャンペーンは2026年春から約1年間の展開が予定されている。「いいことあったら、木曽路へ」。大切な誰かとともに、職人が守り続ける桜色のお肉を味わい、日本の「おもてなし」の真髄に触れてみてはいかがだろうか。
しゃぶしゃぶ・日本料理 木曽路 公式サイト:https://shabu-shabu.kisoji.co.jp/






