
近年、国内外でプレミアムウイスキーへの関心が一層高まりを見せている。特に高級ホテルやギフト市場では、単に高価であること以上に、その背景にある哲学や物語が重視される傾向が強い。こうした市場の成熟を受け、F1世界王者であるジェンソン・バトン氏が立ち上げた「コーチビルトウイスキー」が、富裕層やバーテンダーの間で注目を集めている。REM株式会社の加賀﨑氏に、そのビジネスの本質に迫る。
名声に頼らない本質の追求。F1王者のキャリアとクラフトマンシップの融合
著名人がプロデュースするアルコール飲料に対し、市場では「名前先行の企画商品」という先入観が持たれがちである。しかし、コーチビルトウイスキーはこの固定観念を覆す論理的な背景を持っている。オーナーであるジェンソン・バトン氏は、世界のトップカテゴリーであるF1の舞台で長年キャリアを築いてきた。F1マシンは、エンジンや空力、素材など、無数の要素が極限まで磨かれ、融合することで初めて優れた性能を発揮する。バトン氏はこの緻密な職人技の世界に深く根ざし、技術者たちへの強い敬意を抱いてきた。
同時に、同氏はスコッチウイスキーの愛好家でもあり、そこにある職人の技や時間が生み出す調和にF1と同様の芸術性を見出した。自動車の伝統的なカスタムメイド製法である「コーチビルト」の哲学、すなわち複数の高度な技術を融合させて一つの製品を生み出す思想をウイスキー造りに落とし込んだのである。知名度に依存したビジネスではなく、職人技への深い敬愛から生まれたこのブランドは、本物を求めるプレミアム市場において確固たる物語を提示している。
シングルモルト比率45%の衝撃。スコットランド5大産地の個性を調和させる高度なブレンド技術

近年のウイスキー市場ではシングルモルトへの注目が集まりがちであり、ブレンデッドウイスキーに対して「安価な量産品」という誤解を抱く生活者も少なくない。しかし、優れたブレンデッドとは、異なる原酒の個性を組み合わせ、単体では到達できない奥行きと調和を生み出す高度な技術の結晶である。
コーチビルトウイスキーは、スコットランドの5大産地全ての原酒を贅沢に配合し、シングルモルト比率45%という極めて高い構成を実現した。世界的ブレンダーの手によって、各産地の華やかさや軽やかさ、奥行きが段階的に感じられる複雑な味わいを構築している。
この多層的な味わいの設計は、特に日本の優れた食文化を持つ市場において高い親和性を発揮する。出汁や香り、余韻といった微細な要素の組み合わせを好む日本の生活者にとって、5大産地の職人技が織り成す調和は理解されやすい。数字上のスペックを誇示するのではない、ブレンデッドが本来持つ芸術性を証明する本格的な味わいこそが、市場における明確な差別化要因となっている。
飲む人の格を上げる体験価値の提供。高級施設から広がる「語れるストーリー」の市場戦略

高級ウイスキー市場において、REM株式会社は本作を「飲む人の体験価値と格を上げる一杯」と位置づけ、独自のブランド戦略を展開している。
その核心は、高級ホテルやバーでの徹底した試飲機会の創出だ。本質に敏感なバーテンダーの体験を通じ、完成度の高さが口コミで伝播する。既に会員制施設「THE MAGARIGAWA CLUB」や「焼肉尾崎」に導入され、「フェアモントホテル」での展開も決定するなど、富裕層のおもてなしとして選ばれている。 なお、7月16日にはヒルトン東京にてコーチビルトウイスキー独占提供によるSummer bash(日本における納涼会に相当するイベント)が開催予定だ。
また、ギフト市場で重視される「語れる価値」も備える。ボトルから伝わる自動車のコーチビルト文化や英国のクラフトマンシップへの敬意、バトン氏の哲学をHPやSNSで論理的に発信し、ブランドの信頼性を確固たるものにしている。シングルモルト全盛の現代だからこそ、本作は職人技の融合によるブレンデッドの本来の素晴らしさを伝える存在だ。
先入観を捨てて一杯と向き合う時間は、ビジネスパーソンの格を整え、日常に彩りを与える。特別な一杯として、これからもラグジュアリー市場へ新たな潮流をもたらしていくだろう。

■取材協力:
REM株式会社
代表取締役 加賀﨑 彰人
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