
2026年4月29日(水・祝)、イオンモール幕張新都心1F「ホビーコート」にて、日本イーライリリー株式会社が主催するアルツハイマー病の啓発イベント「年のせいじゃない"もの忘れ"展」が開催された。全国50か所での開催を予定する本イベントでは、専門医によるトークセッションのほか、アルツハイマー病の初期症状を疑似体験できる展示「アルツハイム921号室」が設けられた。
"もの忘れ"の半数以上が、原因を知りながら放置している現実

アルツハイマー病は認知症全体の約7割を占める最も多い原因疾患であり、65歳以上の認知症の当事者は2022年時点で443.2万人、2030年には500万人を超えると推計されている(厚生労働省「令和6年版高齢社会白書」より)。
日本イーライリリーが実施した意識調査によれば、もの忘れの自覚がある方やそのご家族の半数以上が、アルツハイマー病が原因である可能性を認識していた。しかし「年齢のせい」「日常生活に支障がない」といった理由から、専門医への相談など具体的な行動を起こしていない実態も明らかになっている。
一方で、実際にアルツハイマー病と診断された当事者やご家族の約半数は、"もの忘れ"の頻度が増えたことをきっかけに医療機関を受診していた。つまり、正しい知識さえあれば行動につながる可能性が高い。本イベントは、こうした"知っているのに動けない"層に向けて、行動のきっかけを提供することを目的としている。
アルツハイマー病はなぜ起こるのか

会場にはアルツハイマー病のメカニズムを解説するパネルも設置されていた。それによると、もの忘れなどの症状が出る10年から20年以上前から、原因物質の一つである「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積し始めるとされている。脳にアミロイドβが異常にたまると神経細胞が減少し、認知機能や日常生活に支障をきたす。

治療法についての解説パネルでは、薬物療法と非薬物療法の2つのアプローチが紹介されていた。薬物療法は「病気の進行をゆるやかにする目的」と「症状をやわらげる目的」に大別される。前者にあたる抗アミロイドβ抗体薬が近年登場したことで、早期発見・早期対応の重要性がこれまで以上に高まっている。非薬物療法としては、運動療法や社会活動への参加、生活習慣の改善などが挙げられていた。
専門医が解説する「脳からのサイン」

トークセッションには、東京慈恵会医科大学名誉教授の繁田雅弘先生が登壇。来場者が手元の冊子を使いながら、アルツハイマー病の初期症状をクイズ形式で学ぶ参加型の構成で進められた。
冊子には「買い物の準備を3つ挙げてください」「最初に覚えた3つの言葉を思い出してください」といった質問が並ぶ。繁田先生によると、アルツハイマー病では単なる記憶力の低下だけでなく、段取りを組む力にも変化が現れるという。「認知症になった場合は、段取りが悪くなって手間や時間がかかったり、やり直しが増えたりする。準備の段階で障害が見えることがある」と解説した。
特に印象的だったのが、冊子の冒頭で覚えた3つの言葉を、しばらく別の問題に取り組んだ後に思い出せるかを試す質問だ。繁田先生は「言葉を覚えた直後は意識の中にある。しかし別の問題をやっている間に一旦抜ける。記憶として残っていれば呼び起こすことができるが、アルツハイマー型はかなり初期の段階からこれを失敗する」と説明。日常生活では、さっき聞いた話を忘れて同じことを聞いてしまったり、買い物で必要なものを買ったはずなのに、買ったこと自体を忘れてまた買いに行ったりする形で現れるという。
「アルツハイム921号室」で疑似体験する日常の異変
イベントのもう一つの目玉が、ステージ上に再現された「アルツハイム921号室」だ。名前の「921」は、9月21日の「世界アルツハイマーデー」に由来する。一見すると普通の部屋だが、よく見ると至るところにアルツハイマー病の症状を反映した"違和感"が仕込まれている。

壁一面に貼られたメモ。「3/1 美容院」と書かれた同じ内容のメモが複数ある。繁田先生によると、忘れることへの不安からメモを書くようになるが、書いたこと自体を忘れて同じ内容が増えていくという。

机の上には年月がずれたままのカレンダー。日付や曜日の感覚が薄れ、「時間の感覚」から混乱が生じることがあるという。机の下のカバンにはリモコンが入っており、物と場所の関係がわからなくなる症状を表している。
「後悔する前に」専門医からのメッセージ

イベントの最後に、繁田先生が来場者に呼びかけた。
「アルツハイマー病は進行性の病気なので、放っておけば進んでしまう。何でもかんでも早く治療しようということではなく、これからどう暮らしていくかを考えた上で判断ができる。将来どんなサービスを利用するか、家族の誰の力を借りるか、最期はどこで暮らしたいか、そうしたことを考えた上で、自分の一番いいタイミングで治療を選択してほしい」
一方的に早期治療を勧めるのではなく、自分の暮らし方を見据えた上での選択を促す言葉が印象的だった。
「年のせいじゃない"もの忘れ"展」は今後、全国各地での展開が予定されている。気になる症状がある方は、「もの忘れ・アルツハイマー病ナビ」で相談できる医療機関を検索できる。
公式サイト: https://disease.jp.lilly.com/alzheimers






