コロナの影響で「前例のない生活」を体験されている方も多いのではないでしょうか。
大切な人と別れることになったり、仕事を辞めることになったり、さらに、制限された生活と…精神的にきつい日々が続いております。ストレスで体調や精神に不調をきたしている方も増えているようでございます。
そんななか、ネット上では、「コロナ禍を経験した今、読みたい、心を癒す小説」「コロナ禍の今読みたい文学」「コロナ禍の中でこそ読みたい本」「コロナ関連のニュース疲れを解消したい時に読みたい…」、こんな企画をよく目にいたします。
文学の中には、「喪失」「再生」「癒し」を扱った作品、たくさんございます。ただ、小説を読むのには時間がかかります。また、普段、小説などを読み慣れていない方は、なかなか手に取りづらいところもございます。
そこでぜひ、ご紹介したいのが大人絵本でございます。
「絵本?子どもの読むものでしょ」「そんなもので大人が癒されるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。絵本(大人向け)は、短時間で心が揺り動かされ、さらに、何度でも読めるのが最大の魅力でございます。洗練された絵と文章が、それを可能にしております。
長いものを読むのが苦手、時間のない方にはもってこいのコンテンツなのでございます。
最近では大人絵本ブームと言われていて、大人向けの(大人もターゲットにした)絵本がたくさん出版されております。実際、大人の読者の数も増えております。是非一度、ご体験頂きたいのでございます。
そこで今回は、大人が癒される「喪失」「再生」がテーマの絵本をご紹介させて頂きます。それがこちら。
「フォックスさんの にわ」(作:ブライアン・リーズ 訳:せな あいこ 出版社:評論社)
ざっくりと内容をご紹介すると……。
フォックスさん(キツネ)が、仲良く一緒に住んでいた犬とある事情から離れ離れになってしまいます。そのことで自暴自棄になったフォックスさんが、もとの自分、生活を取り戻していくというお話でございます。
フォックスさんの気持ちの変化が、美しい絵とともに描かれております。微妙な心境の変化は、人生経験のある大人には刺さること間違いございません。
ちなみに、こちらは2019年コールデコット賞オナーブックでございます。
コールデコット賞は、アメリカで最も権威のある児童書の賞で、「かいじゅうたちのいるところ」(冨山房)、「スイミー 小さなかしこいさかなのはなし」(好学社)、「ちいさいおうち」(岩波書店)、「げんきなマドレーヌ」(福音館書店)など、数々の名作が受賞してる歴史と権威のある世界的な賞でございます。
出口の見えないコロナ禍のなか、夜寝る前のひとときを素敵な大人絵本で癒されてみては、いかがでございましょう。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)