Windowsパソコンの日本語キーボードには、【変換】キーと【無変換】キーがある。でも多くの人が、変換するとき使うのは【スペース】キーで、変換せず確定するとき使うのは【Enter】キーだと思う。
じゃあ、【変換】キーと【無変換】キーは何のためにあるの?と思って調べてみると、2つのキーがやっている今の仕事と一緒に、対照的な仕事へのスタンスが見えてきた。
【変換】キーと【無変換】キーの誕生
【変換】キーと【無変換】キーは、一緒に生まれた。
それは、日本語ワープロが誕生して2年近くが過ぎた1980年5月。富士通のワープロ『OASYS 100』(270万円=当時の高級車並みの値段)のなかでの出来事。
2つのキーは、今のスペースキーの手前あたりに並べられ、名前の通り【変換】キーは変換の仕事を、【無変換】キーはひらがなのまま変換せずに確定する仕事を任された。どちらも変換の専門職だ。
しかしその後、パソコンの普及が、2つのキーの仕事を奪ってしまう。
誕生後、すぐに仕事を奪われる……
まだパソコンに【変換】キーがなかった1982年10月、ジャストシステムがパソコン用かな漢字変換ソフト『KTIS』(のちのATOK)を発表した。
このとき、変換の仕事を任されたのは【スペース】キー。理由は、一番早く文章を入力できる方法だからだった。漢字に変換する作業は、英文でいうところの単語の間にスペースを入れる作業と、感覚が似ている。そのため、日本人にとって【スペース】キーでの変換が、最も自然で手になじむと考えられたという。
その通り【スペース】キーでの変換は、日本人の手になじみ、パソコンに【変換】キーが置かれるようになっても、多くの人が中央の【スペース】キーで変換した。
さらに【無変換】キーの仕事は、漢字もひらがなもどちらも確定する【Enter】キー(Returnキー)で事足りた。
ワープロ時代の活躍は見る影もなくなった、2つのキー。すると2つのキーは、対照的なスタンスで、新たな仕事を始める。
2つのキーの今の仕事とは?
なんとWindowsの時代になり、2つのキーには新しい仕事が与えられた。
【変換】キーが任された仕事は「再変換」。
一度確定した文字にカーソルを合わせるだけで、再び変換させられる便利機能だ。
【スペース】キーでは、再変換したい部分を選択する必要があるのだが、【変換】キーはその必要なくいきなり変換できる。
“変換”という生き方を貫くことに、活路を見いだした。
一方の【無変換】キーが任されたのは“カタカナ変換”という、入力したひらがなを、全角カタカナ→半角カタカナと変換させる仕事。
なんと【無変換】キーという名前にも関わらず、変換の仕事を始めたのだ。無変換なのに変換!?という混乱はあるものの、カタカナに一発で変換する便利さを提供している。
というわけで、変換の仕事を貫いて「再変換」をしている【変換】キーと、仕事を選ばず「カタカナ変換」をしている【無変換】キー。
仕事へのスタンスは違っても、どちらもいい仕事をしてくれるので、頭の片隅に留めておいてはいかがでしょう。
※ソフトや設定によっては、機能が違うものもあります