北朝鮮のミサイル発射問題がニュースを騒がせました。着弾すれば、大規模な死傷者が発生するとあって、早朝から対象地域では全国瞬時警報システム「Jアラート」がけたたましく鳴り響きました。ところが事態が落ち着くと、国民の関心はなぜか北朝鮮ではなく、「Jアラート」の有効性に飛び火します。いったい私たちはどのようにして、この情報を受け止めればよかったのでしょうか?
時間的余裕のない事態を瞬時に伝えるのが目的
そもそも「Jアラート」とは通称で、正式には「全国瞬時警報システム」といいます。
総務省消防庁によると、「弾道ミサイル情報、津波警報、緊急地震速報など、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を国(内閣官房・気象庁から消防庁を経由)から送信し、市町村防災行政無線(同報系)等を自動起動することにより、国から住民まで緊急情報を瞬時に伝達するシステム」と定義されています。
そのため本来の目的でいえば、“伝達”はできたので、システム起動は間違いではなかったといえるでしょう。ただ、問題は“伝わった後”です。アラームが鳴り、ミサイル発射が飛んでくるまでに、「どんな行動を取ればいいのかがわからなかった」「発射直後から頭上を越えるまでの数分で何ができるんだ」というポイントなのです。
事態の発覚から初動までの数分間でできることとは?
今回のケースでいえば、アラートが6時2分、ミサイルが通過したのが6時6分というため、実質4分間弱でどんな行動ができるかが命運を分けるといえます。
たとえば、内閣官房の国民保護ポータルサイト(http://www.kokuminhogo.go.jp/)では、以下のように避難を促しています。
出典:国民保護ポータルサイト
これを踏まえた場合、たかが4分間でもできることはあります。
一般成人男性であれば、100メートルを走るのに20秒はかからないでしょうから、今いる場所から数百メートルの距離であれば移動できます。今回みたいに早朝や深夜の警報でも、窓ガラスから離れて、身を守るものにくるまったりするなど、少なくとも1~2分で最低限の心構えはできるはずです。
「何もできない」ではなく「何ができるか」で受け止めよ
今回の騒動では批判的な意見として、「数分で何ができるんだ!」「余計なパニックを引き起こすだけだ」という声がありますが、起こるかもしれない可能性を「知っている」のと「知らない」のとでは、回避できる可能性、被害のダメージが格段に変わります。
それは冬、凍結した雪道で転ぶかもしれないとわかっているのと、突然転んだのでは、ダメージが違うのと同じことなのかもしれません。何事も備えていると、被害は小さくて済むのです。
もちろん、ミサイルの着弾点にいれば、どうしようもないという意見もあるでしょう。ですが、だからといって何もせず、後悔だけはしたくない。それが大半の人の本音ではないでしょうか。避難訓練と同じ要領で、万が一に備えておきたいところです。