睡眠に関するテクノロジーサービスで人々の健康をトータルサポートするレスメド株式会社が、7月18日から19日の2日間、パシフィコ横浜ノースで実施した「日本睡眠学会第48回定期学術集会」にて、共催シンポジウムを開催した。シンポジウムでは、睡眠医療の専門医師5名が登壇し、日本で未診断が多いとされる女性の睡眠呼吸障害に焦点を当て、その現状やメカニズム、治療法について解説。また、シンポジウムの登壇者で、周産期や更年期を含めた女性の睡眠研究の第一人者のくわみず病院院長・池上あずさ先生には、睡眠問題の実情や日常生活で意識したほうがよいことを伺った。
昨今、睡眠障害が問題視される背景にあるのは「日本人の睡眠不足」と即座に回答する池上先生。レスメドの「世界睡眠調査2024」によれば、日本人の平均睡眠時間は6時間27分で、世界最短だ。中でも、50代の女性はさらに睡眠時間が短いという。
加えて、更年期に入った女性は、熟眠作用のある女性ホルモンが減少する影響で、入眠障害や中途覚醒、いびき、睡眠時無呼吸症候群(SAS)といった問題を抱える人が増えるそう。「更年期に入る前は、女性は女性ホルモンによって睡眠と呼吸が守られているのですが、更年期に入るといきなり女性ホルモンが低下するので、男性と同じく睡眠や呼吸の問題が出てくるんですよね」と池上先生。
しかし、不眠で悩む女性がSASを疑って受診することは少ない。なぜなら、SASは男性が罹患するイメージが先行していたり、更年期による不定愁訴の症状や単なる疲れであると見過ごしてしまったりするためだ。だが、それらの不眠症状を放置してしまうと、倦怠感や日々のQOLの低下、うつ病にまでつながってしまうことも。更年期女性のSASについて、池上先生は「パートナーや家族の方からいびきを指摘される場合や不定愁訴と呼ばれる症状がある場合は、睡眠呼吸障害である可能性があります。ですので、専門医へ受診したり、簡易検査を受けたりしてほしいですね」と話す。
一方で、更年期に入る前の20~30代の女性でも、仕事や妊娠・育児の忙しさから睡眠に悩みを抱えているケースはある。そういった人たちは、睡眠とどう向き合えばよいのだろうか。池上先生は「睡眠で悩んでいる人は意外と多くて、とても辛いだろうなと思うんですよね…」と共感し、こうアドバイスする。
「まずは、睡眠に対する正しい知識を持ってもらうことが大事ですね。基本は、規則正しい睡眠のサイクルを整えること。休日だからいつもより長く寝たり、寝だめしたりするのは、かえって不眠を助長することにもなります。ですので、まずは決まった時間に起きて、太陽を浴びて、生活リズムを整えることを意識してほしいです。どうしても改善されない場合は、睡眠専門の医療機関を受診してほしいと思います」
とはいえ、まだまだ女性のSASについて認知が進んでいないというのが現状。池上先生は「不眠に悩んでいる人は意外と多いけど、正しい知識を持っていない人やどうすればいいのかわからないという人が多いんです。そういった人たちに正しい知識を届けたいです」と展望を話す。加えて、妊娠女性を睡眠呼吸障害の観点からきちんと診断する重要性を広めたり、病院として、子供たちの睡眠問題に関して、教育機関に啓発したりしていくとのこと。
女性は更年期に入ると睡眠に変化が起きやすい。本人のみならずパートナーや家族も含めて、女性の睡眠に対して正しく理解し、適切なケアのために医療機関への相談も選択肢に加えることが大切だろう。