ある日、タクシーの中で“植毛ロボット”という言葉が書かれたパンフレットを見つけた。
ロボットが植毛してくれるのか?そもそも植毛ってどうやるんだ? ということで早速、パンフに記載されていた「ルーチェクリニック銀座院」へ。院長の加藤晴之輔先生に伺った。
これが植毛ロボットの全貌だ
_早速ですがその「植毛ロボット」を見せてもらえますでしょうか?
【加藤院長】こちらになります。
_これですか。
【加藤院長】もともと私たちは「アルタスⅡ」という植毛ロボットを使っていたんですが、最近、一番新しい「アルタス9x(ナイン・エックス)」にバージョンアップしたんです。具体的には、髪の毛を抜くためのアームと、ヘッドを変えました。
「アルタス」は他院でもすでにありましたが、「9x」を導入しているクリニックは日本で当院だけ(2018月2月上旬現在)ですし、世界でも数台だと言われています。
加藤晴之輔院長
_先ほど、“髪の毛を抜く”とおっしゃいましたが?
【加藤院長】様々な植毛法・増毛技術がありますが、一番無理がないのが自毛植毛(じもうしょくもう)です。つまり自分の毛を、足りないところに植え替えてあげるというものです。後頭部の毛というのは、頭頂部や前頭部より元気なので、そこから移し替えるんです。
ただ、人によって毛の生え方は違います。今回、このアームがさらに長くなったことで、毛をいろいろな角度から無理なく、やさしく抜けるようになったのです。さらに、ヘッドも従来より小さくなったことで小回りが利くようになり、毛を抜くスピードも一段と速くなったんです。
写真はアルタスⅡ
_ほかに「9x」が進化した点はありますか?
【加藤院長】毛を取るためにCCDカメラがついているのですが、この画質が白黒からカラーになったんです。これによって認識する情報量のレベルが向上しました。
さらにこの「9x」は、どの部分にどのくらい毛があり、どのくらいまで抜けば自然に見えるのかを自動的に認識して採取してくれるのです。毛を採る針もさらに細くなり、毛を抜いたところはもっとわかりにくいレベルになりました。最終的には植毛したこと忘れてしまいますよ。
_こうしたロボットが導入される前はどうやって毛を採取していたんですか?
【加藤院長】現在も、熟練の職人が毛を1本1本採取しているクリニックもあります。ただどうしてもそれだと確実に均等に何千本も取れ続けるとは言いがたい。またこの場合、痛みやまだらになった傷跡が残ることが多いんです。
もちろんこの方法のほうが良いという患者さんもいますからもちろん強制はしません。でもこうした単純作業はロボットのほうがはるかに精度が高いですよね。ロボットはいつまでも疲れも知りませんし(笑)。
_そんなアルタスはどこで造られているのでしょうか?
【加藤院長】アメリカのあるメーカーが製造・販売しており、世界中で使用されています。全シリーズ合わせて約1,000台が各国で活躍しているそうです。そして日夜、データやシステムのバグが日夜アメリカ本社でチェックされ、性能の向上に役立てられています。もちろんデータといっても個人情報ではなく、どんなふうに動いたのかといった制御技術に関するものに限ります。
植毛するのは人の手
_実際に植毛するときについて教えてください。
【加藤院長】植毛するのは昔も今も人の手でおこなわれています。当院では熟練の看護師が担当。ロボットが綺麗に毛根を採取しても、植えるときに雑だと何の意味もありませんから、綺麗にそして1本1本無駄にしないよう当院では「インプランタープロ」という特殊な専用デバイスを使用して毛根を優しく守りながら丁寧にこだわって植えていきます。
治療法は千差万別
_植毛は毛深い、いや奥深いですね。
【加藤院長】そうですね(笑)。ただ、植毛は最後の手段と思ってらっしゃる方が多いと思いますし、当院もこのロボット植毛を全面に出していますが、これは実は選択肢の1つなんです。
そもそも植毛したとしても、植えた毛は生き残っても、もともとあった毛も大事に守ってあげないと意味がありません。それを維持するための選択肢として注射や塗り薬、さらには「プロペシア」と呼ばれる飲み薬といったものもある。その中から何を選ぶのかは人それぞれです。
その中で最適な治療を提案するのが私たちの役目だと思っています。「アルタス」が必要というのであればそれで計画を立てていきますし、塗るだけでも十分ですよというのであればそれで対応します。More hair, more happy life! どれだけどの程度楽しい時間を過ごしたいか、私たちはそこを大切に最適な方法をご提案しております。
まとめ
こちらのクリニックのホームページを見ると、論文執筆や症例発表も多く手がけているようだ。素人丸出しの質問にも丁寧に答えて下さった加藤院長。是非いろいろ相談してみてほしい。