「樹木にとって最も大切なものは何かと問うたら、それは果実だと誰もが答えるだろう。しかし実際には種なのだ」。
ドイツの哲学者、ニーチェの言葉です。人生100年時代が叫ばれる昨今、種をしっかり蒔いている人はどれほどいるのでしょうか。また、折り返し点とも言える50歳を迎えた人は、その先の人生に何を思うのでしょうか。
メットライフ生命保険株式会社はこのほど、全国の男女50歳1,000人を対象とした調査「50歳に聞いた人生100年時代の将来の夢」を実施。経済的不安などを抱えていたり、明確なイメージを持てない人が多いという結果になりました。
100歳まで生きると仮定し「あと50年生きるとしたら、将来、何になりたいですか?」という質問では、男女ともに「悠々自適・楽しく、幸せにのんびり暮らしたい」が1位。男性は10.8%、女性は16.2%が願っています。次いで2位は「健康でいたい、元気なおじいさん・おばあさん」です。これらが叶うなら、それはもう素敵な人生でしょう。
ところが、このような前向きな意見とほぼ同じ割合で「特になし/分からない/考えていない」という回答も。さらに「50年も生きたくない/そんなに生きるつもりはない」と、人生100年を受け入れていない人も見られました。
定年後70歳。「お金」に不安
では、多くの人が定年を迎えていると思われる70歳の時はどうありたいと考えているのでしょうか。これは男女ともに類似しており、半数以上が「現在の生活基盤を変えることなく、現在の仕事を継続していきたい」または「現在の生活基盤を変えることなく、仕事をせずに暮らしたい」でした。今の生活に満足していると捉えることもできます。また、約3割は「現在とは異なる、新しい生活や仕事を始めていたい」と答えています。
人生後半の充実の要素の一つは、やはりお金。今回の調査で50歳の大多数が具体的な計画や準備を行っていないことが分かりました。その理由の多くを占めたのは「経済的な理由」です。
東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授は「50歳の多くの方々は、好景気時に社会人人生をスタートし、その後大きな景気の変動、雇用環境の変化などを経験しており、そういった背景を反映したと思われる今回の結果は興味深く感じる」とコメント。昭和後半から平成前半という激動の中で働いた人たちは、現実的です。
「50歳は人生の折り返し、あとは下るだけ」なんてことを言う人もいます。でも、50歳は人生後半のスタートとも言えるでしょう。今ある生活を安定させることでも、新たなチャレンジでも、半世紀生きた経験値を活かしてまた種を蒔けば良いと思います。
ドイツの詩人、ゲーテの言葉が胸に刺さります。「毎日を生きよ。あなたの人生が始まった時のように」。