「SLIDERのルールとして“同じ企画はやらない”というのがあるんですが、過去に一度だけ2回やった企画があって。それが“スケーターたちのマスターピース”という海外のスケーター達の日常に迫るというものです」
「Vol.22ではジョン・カーディエルを取材しました。彼はスーパーレジェンドスケーターですがツアー中に車にひかれて下半身付随になってしまったんです。ちょうど、この企画を進めていた時に「ジョン・カーディエルがスケートをしているらしい」っていう噂が入ってきて…。そこで現地に飛んだ “ゴトケン”(フォトグラファー)から写真が送られてきて、見た時は鳥肌たちました!」
- SLIDER(スライダー) Vol.22
「届いた瞬間「これ表紙だ!」って思いましたね。実際に読者からも「表紙を見て震えた」という声もいただいて、海外からも賞賛された奇跡の一枚です
Fujisan.co.jpより
―― 奇跡の1枚を撮った“ゴトケンさん”とはどんな方ですか?
「本名は後藤健一郎といいます。いろいろなフォトグラファーに協力してもらっていますが、SLIDERのスタイルと雰囲気を築いたのは彼です。見た目はアジアンギャグスターみたいな感じですね(笑)。日本人離れした雰囲気がある人で、現地のカルチャーに完全に溶け込んでる。だからこそ、グッとくる臨場感のある写真を撮ってきてくれるのかも知れません」
2016年下半期の一番のニュースは?
―― 今年もオリピックやX Games日本人初優勝などスケート界もいろんなニュースがありましたが、編集長的に一番の出来事はなんでしょうか?
「個人的にはadidas skateboardingがAway Daysというフルレングスフィルムを作りあげたという事ですね。実は僕らadidas skateboardingが日本で浸透していない時に特集しているんですよ」
- SLIDER(スライダー) Vol.7 【特集】adidas Skateboardingアディダス・スケートボーディングの全貌に迫る。
Fujisan.co.jpより
「当時アディダスジャパンからは「日本ではなかなかねぇ…」という声があったのですが、今ではジャパンプレミアを開催するほどになりました。日本がadidas skateboardingにとって、プロモーションする意味のある市場だと認められた訳で、それだけ日本のスケート文化が成熟してきた証かなと思います」
―― では、編集長が履いているスケートシューズは…
「あ、ぼくはもっぱらVANSです!ERA PROかハーフキャブとかシンプルな形が好きです。とにかく履きやすくて。ちなみに次(vol.28)はVANS50周年特集なんでお楽しみに!」
―― 世間では、オリンピックネタが話題ですが?
「もちろん。2020年には、オリンピック絡みの取材もしてみたいです。最近、パークも増えてキッズやファミリーのスケーターも多く見かけるようになりました」
SLIDERの追い求める“形”
―― 今後はどのような企画を考えていますか?
「やっぱりスケートシーンはアメリカが主流なんですが、今、ヨーロッパからも、さまざまなスケートカンパニーが誕生しています。ドイツ・スウェーデン・オランダなど、スケーターだけでなくアーティストやフォトグラファーなど、ローカルで小さな動きをしている人たちを見逃さずにキャッチできたらと思っています」
―― なぜ、ヨーロッパなんですか?
「他紙が取材しないような事を掘っていきたいんですよ。今でこそpolarやPALACEは有名ですが、僕らはどこよりも早く目をつけて特集していました。ヨーロッパに限らず、世界にはまだ知られていないスケートボードカルチャーがたくさんあると思うから、それらをキャッチして紹介してゆきたいです」
スケートボードはスポーツと同時にカルチャーである
「オリンピックが決定してメジャーになって、大きなムーヴメントが生まれるのは嬉しいです。でも、それだとスポーツの部分だけフィーチャーされてしまう。スケートボードはいろんな“ストリートカルチャー”の根っこでもあり多様性があります。僕は “なんでもあり”という部分を大切にしたいんです」
―― スケートをすると街の見方が変わりますか?
「そう!街の見え方がクリエイティブになるんです。普通の人は気にも留めない街のいろんな場所をスケーター達は身をもって知っています。ただのバンクでも「あそこトリック出来るんじゃない」とか、ただのポールに「あそこがポーリーできる」とか。そんな風に街を見られるってなんて面白い!スケーターはすごいなと思いました」
―― 最後に、SLIDERのファンにメッセージをお願いします
「パークと違い、ストリートでは住人の迷惑になる可能性もあるし、やりすぎれば警察にも通報される。けれど、街と一体となった瞬間が面白いんです。それはスポーツとしてのスケートボードとはまったく別のベクトルですよね。SLIDERでは、そのストリートの雰囲気を大切にしてゆきたいと思っています」
圓角編集長は流行りに流される事なく、面白いと思ったものを、とことん追求する方でした。そのラフなスタイルから滲み出てくる、ストリートスケートボードへの熱い思いやSLIDERの目指す視線の先を、驚くほど包み隠さず赤裸々に語ってくれました。
圓角編集長ありがとうございました!
圓角航太 えんがく こうた
SLIDER編集長
2009年に雑誌SLIDERを創刊。他にも、外国製ヴィンテージ・モーターサイクルを扱ったRoller Magazineや、アメリカ、ポートランドのイフスタイル誌、KINFOLK JAPAN EDITION“キンフォークジャパンエディション”の日本版。自転車カルチャーマガジンPEDAL SPEED(いずれもネコ・パブリッシング)を創刊している。
2015年には、アメリカ発ストリート系ファッションのセレクトショップ Need Supply Co.“ニードサプライ”を東京と熊本にオープン。またイタリア料理店TRATTORIA Babbo “トラットリア バッボ”も運営している。