まず、日本絵本賞とは、社団法人全国学校図書館協議会と毎日新聞社が主催する、日本国内で出版された絵本に贈られる賞でございます。
前年に日本国内で出版された絵本を対象とし、最優秀作品に日本絵本賞大賞、優れた作品に日本絵本賞などが贈られますが、先日、第22回(2016年)の受賞作が発表になりました。
(正確には、2015年10月から2016年9月までに出版された絵本の中から選出されております)みごと大賞の座を射止めたのは、こちら!
荒井良二様の「きょうはそらにまるいつき」。絵本好きの方には説明するまでもありませんが念のためご説明いたしますと…。
荒井様は、国内外で数々の賞にも輝く日本を代表する人気絵本作家でございます。2005年には児童文学のノーベル賞といわれるスウェーデンの児童少年文学賞「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を日本人で初めて受賞されております。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にもご出演されております。
作風はポップでユニーク、個性的で、アート度が高く、大人に人気の高い絵本作家のおひとりでございます。
今回の作品も大人が存分に楽しめる内容になっております。
内容をざっくり説明すると…。あんなところ、こんなところにも、ちゃんと月は出ていますよ。月の下にはいろんな人たちがいますよ、というお話でございます。
たとえば、夕暮れの公園で乳母車の中から赤ちゃんが月を見ていたり、バレエの練習から帰る女の子が見ていたり、新しい運動靴を買った男の子が、仕事が終わった親子が、ギターの練習をしている人が月をみています。さらに、公園に集まった猫たち、海にいるクジラの上にも月は輝いております。
あくまで私の解釈ですが、この地球上に自分ひとりではないと、なんだか安心しちゃう…そんな絵本でございます。科学的に眠くなる絵本もいいですが、こんな絵本を寝かしつけ絵本に使うのも素敵かも…。
ただ、大人の皆さんに注意して頂きたい点がひとつ。絵の隅々までしっかりみて頂きたい!ページのはしっこのほうに他のページに登場した人が小さく描かれていたりするのでございます。ここが大切!同じお月さまの下で、様々な人や動物たちが、それぞれの時間を過ごしている様子が伝わってくるのであります。
子供は、絵の隅から隅まで見るのですが、大人はテキストに気を取られて、絵の細かい部分を見落としがちなのでございます。どうぞ、隅から隅までお楽しみくださいませ。
詩のような素敵な文章とアートな絵が大人にささる一冊でございます。
(文:N田N昌)