新横綱・稀勢の里誕生により、平成29年春場所は17年ぶりに4横綱がひしめく豪華番付となります。実は、これが世代交代の始まりではないかと思うのです。おそらく、ここから2年以内に番付の顔ぶれが大きく変わるでしょう。“2年もあればそりゃ変化は大きいでしょ?” と思うかもしれませんが、ここ2年間をプレイバックしても照ノ富士が大関に昇進したくらいで上位の顔ぶれはあまり変わっていないんです。
長続きしない4横綱時代
その理由をデータで解いてみましょう。
大相撲の歴史をたどると、4横綱時代は過去に15度ありましたが、その4横綱で10場所以上続いたのは2度しかありません。つまり、2年も経たないうちに少なくとも一人は引退してしまう可能性が高いです。しかも現在の4横綱の年齢をチェックすると…
白鵬 31才
日馬富士 32才
鶴竜 31才
稀勢の里 30才
力士の世界ではむしろ晩年になる年齢です。これだけ年齢が近い横綱が揃うケースも珍しく、今までは最年長と最年少が5歳以上開くなんて普通でした。それだけ今の上位力士が長い期間、下からの突き上げに屈しない岩の存在だったともいえますが、逆に一気に総崩れになる可能性もあるわけです。
1年6場所制になった昭和33年(1958年)当時に在位していた千代の山から数えて引退した横綱は27人。その引退平均年齢は、30.3才(※現役中に死亡した玉の海、不祥事で廃業した双羽黒を除く)。最高齢は33歳で横綱昇進し37歳まで続けた吉葉山。
最年少は28歳の栃ノ海。ちなみに、不祥事から引退を余儀なくされた朝青龍は29才でした。
また、4横綱時代の場所数は合計34ありましたが、4横綱が顔を揃えて15日間出たのはたった6場所しかありません。ケガに苦しむ横綱が多いんです。今年の春場所は4人揃い踏みで迎えられそうですが、初場所では日馬富士と鶴竜が途中休場しているのでなんとなく怪しげ。レジェンド横綱白鵬もこの頃は取りこぼす星も増えピークは過ぎた感じ。
となると、新横綱・稀勢の里が力を発揮しそう…と言いたいところですが、実は横綱昇進後、最初の場所で賜杯を抱いたのは、平成では貴乃花だけで他は最高でも11勝止まり。年齢を考えると稀勢の里の強さもピークギリギリかもしれません。・・・と考えると、いよいよ大きな世代交代が起こりそうな予感がしてきませんか?
幕内平均年齢が若くなっていくだろう
その兆候は既に出ている(?!)かもしれません。今年初場所の幕内力士の平均年齢は28.0歳で、30代力士は17人でした。春場所は平均27.4才で、30代力士は19人です。最年長は37才の豪風。横綱大関6人の中で20代は照ノ富士だけです。
何が言いたいかというと、世代交代はおそらく今後2年であっという間にやってきて、顔ぶれはガラリと変わるだろうということ。
例えば、平成11年名古屋場所からの4横綱時代は、若乃花の引退により5場所で終わりますが、これをきっかけに上位の壁にはね返されていた武双山、魁皇などが急成長し大関に昇進。さらに貴乃花が膝のケガが長引いて休場続き間に、朝青龍をはじめとするモンゴル勢が躍進してきました。
世代交代があからさまな例は、平成4年5月場所です。この場所の幕内平均年齢は25.7才でかなり若い。番付発表後に横綱・北勝海が29才で引退し横綱0時代に突入。最高齢は33才の大関・霧島で、30代は5人だけでした。
この時すでに若い力は各界を呑み込んでおり、結果は23歳の関脇・曙が優勝。その下には、小結に21才の武蔵丸、前頭には19歳の貴花田(貴乃花)、21才の若花田(若乃花)、20歳の貴ノ浪など、大相撲が完全に新時代の転換期となった場所でした。
これほどあからさまに時代が変わる事は滅多にありませんが、こんな場所が近いうちに見られると予想します。
新しい時代は始まっている?
「あの横綱がいなかったら…」という“たら・れば”で最高位へ手が届かなかった力士は数え切れないほどいます。逆に、上位のピークが過ぎたタイミングで、破竹の勢いで番付を駆け上がる寵児だって出るわけです。スポーツの世界において時の運は出世の大事なファクターです。
そこで、2年後に土俵を賑わせそうな若い力士を数名ピックアップしてみます。現在幕内の小結・御嶽海(出羽海・24才)、大栄翔(追手風・23才)、北勝富士(八角部屋・23才)、宇良(木瀬・24才)現在十両の大奄美(だいあまみ 追手風・24才)、朝乃山(高砂・22才)阿武咲(おうのしょう 阿武松・20)、小柳(おやなぎ 時津風・23才)力真(りきしん 立浪・21)。
幕下から、武政(たけまさ 阿武松・23才 ※170センチの小兵)霧馬山(陸奥・20才 ※モンゴル)、木崎(木瀬・23才)、湘南乃海(しょうなんのうみ 高田川・18才 ※192センチ143キロの大型)、琴鎌谷(ことかまたに 佐渡ヶ嶽・19才)、朝日龍(朝日山・21才 ※モンゴル)
勢いのある若手を選んでみましたが、この中にきっと将来の三役・横綱がいると信じています。優勝争いはもちろん、若い力にも注目して欲しいこの春場所。
そして、今年のキーワードは間違いなく「世代交代」です。