アニメ作品のクレジットでたまに見られる「安蘭須美志」「住吉亜蘭」の意味はご存じですか?
映画好きなら知っている方も多いとは思いますが、読み方は「アランスミシー」。
実は今から50年前のある事がきっかけで登場しているんです。
70本以上の作品
1960年代後半から2000年頃まで活躍した映画監督に「アラン・スミシー」という人物がいました。
約70本以上の作品に携わっていますが、押しなべて評価がいまいち…。
現在その名前を見ることはありません。
それはなぜか?
アラン・スミシーとは架空の人物だからです。
このアラン・スミシーという名前は、何らかの理由で自身の名前をクレジットしたくない場合に使われた名前なのです。それではこの架空の人物、アラン・スミシーとはなんなのか? を紹介していきます。
■本格デビュー?は1967年「ガンファイターの最後」
出典 Amazon
アラン・スミシーが本格的に映画界に進出したのは「ガンファイターの最後」。
もともと監督はリチャード・トッテンでしたが、主役と対立しドン・シーゲルと監督を交代。しかし両者とも監督としてのクレジットを拒んだため架空の人物「アラン・スミシー監督」名義の作品となりました。
■なぜ架空の名前を使うのか?
映画会社やプロデューサーが強い実権を握るアメリカ映画界。監督の立場は弱く、プロデューサーらトップダウンで「編集をやり直せ」「追撮しろ」など無茶を言い出したら従わざる得ないこともしばしばありました。しかし監督らが労働組合を組織すると待遇が改善。プロデューサーらの無茶ぶりで監督が責任を負えないほど手を加えられた場合にのみ「アラン・スミシー」という偽名の使用を組合が映画会社に申請しました。
ちなみにアラン・スミシーという名前ですが、最初はアル・スミスという名前にしようとしたらすでに同名の監督がおり、最終的にいなさそうなで今後も現れなさそうな名前、アラン・スミシーに落ち着いたそうです。
■続々出現アラン・スミシー作品
スミシー作品には、日本の企業が出資しハリウッドのスタッフ・キャストが集結し制作された「クライシス2050」があります。これは監督のサラフィアンの了承無く編集に手を加えられたため監督の訴えによりスミシー名義に。製作費70億円に対し興行収入は14億円でした。
出典 movies.yahoo.co.jp/movie/
またジョディ・フォスター主演でデニス・ホッパー出演兼監督の「ハートに火をつけて」は、これも勝手に編集されたため、監督クレジットを拒否しました。
他にもヘルレイザー4、ハリー奪還など
■スミシーはもういない?
1990年代後半、架空の人物にもかかわらずスミシーが有名になってしまったため使用が禁じられました。
それ以降は、個々に違った名前を使うようになり、2000年「スーパーノヴァ」という作品は監督の相次ぐ降板で、誰の作品か判別できなくなったため架空の人物トーマス・リー監督名義になっています。
アメリカの映画監督としてのアラン・スミシーはいなくなってしまいましたが、実は国外の作品ではまだその名を見ることができるといいます。日本ではなぜかアニメ作品で使われることが多く、安蘭須美志、住吉亜蘭などもじった偽名が使われています。クレジットを注意深く見てみるのも面白いかもしれませんね。※監督だけではなく脚本やコンテでも登場。