大相撲名古屋場所、最大の見所は大関・稀勢の里の綱取りなるか!?です。
横綱昇進への条件は、優勝、14勝以上などとされています。30歳という年齢を考えるとこれがラストチャンスかもしれません。
相撲ファンからは「モンゴル横綱勢にかなわない」「年齢的に厳しい」「期待させてダメなパターンでしょ」という悲観的な声が聞かれます。確かに稀勢の里はこれまで幾度となくファンをがっかりさせてきました。
横綱昇進の確率は?
意外と思われるかもしれませんが、私は期待値を込めて70%と見ました。結構高いです。
その根拠は、まず前2場所の成績がいずれも13勝2敗と安定していて、しかも負けた4番は白鵬2敗、鶴竜、日馬富士が各1敗と横綱のみ。やはり横綱超えが一つの鍵です。
そして最大の要因は、おかしなことを言うと思われるかもしれませんが“春場所で優勝できなかったこと”です。
「優勝したほうがイイだろーが!」と突っ込まれそうですが、もちろん理由はあります。そのあたりを説明します。
【過去の綱取り挑戦】
平成に入って、大関止まりだった力士で在位中に優勝後、綱取りを賭けた次場所の成績を見て下さい。横綱昇進の条件は2場所連続優勝ならほぼ確定、内容にもよりますが最低でも13勝などと言われています。
小錦 平成元九州 14-1初優勝→ 平成2初10-5
平成3九州 14-1優勝 → 平成4初 12-3
平成5初 14-1優勝 → 同 春 9-6
霧島 平成3初 14-1優勝 → 同 春 5-10
貴ノ浪 平成8初 14-1初優勝→ 同 春 11-4
平成9九州 14-1優勝 → 平成10初10-5
魁皇 ※平成13春初優勝と名古屋優勝の次場所は途中休場
平成15名古屋12-3優勝 → 同 秋 7-8
平成16秋 13-2優勝 → 同 九州 12-3
栃東 平成14初 13-2初優勝→ 同 春 10-5
平成15九州 13-2優勝 →平成16初 9-6
平成18初 14-1優勝 → 同 春 12-3
千代大海 平成14名古屋14-1初優勝→ 同 秋 10-5
平成15春 12-3優勝 → 同 夏 10-5
琴欧州 平成20夏 14-1初優勝→ 同 名古屋 9-6
琴奨菊 平成28初 14-1初優勝→ 同 春 8-7
チャンスが幾度かあった大関もいます。12勝と惜しかったケースもあります。
しかし、多くの場合早い段階で下位に星を取りこぼし上位に敵わずというパターンが多いです。
平成に誕生した横綱は9人。大関で、最初のチャンスで即綱取に成功したのは
曙 平成4九州 14-1優勝 →平成5 初13-2優勝=横綱
朝青龍 平成14年九州14-1優勝 →平成15年初14-1優勝=横綱
2人だけ。
平成の大横綱・貴乃花は3度目の挑戦、白鵬も2度目の挑戦で横綱に。
大相撲に横綱制度ができて約300年、横綱は71名しか出ていません。角界の頂点に座るのは並大抵の偉業ではないわけです。
優勝すると困ること
横綱昇進のチャンスを活かすも殺すも、私は優勝後、次の場所までのスケジュールが重要だと思うのです。
最近で言えば琴奨菊。
今年初場所で日本出身力士10年ぶりの優勝を果たし、綱取りに注目が集まった春場所は、なんと8勝7敗というがっかりな成績。
ただし関係者の間では“あれじゃムリだろう”と予測していた人が多かったそうです。
琴奨菊は、初場所終了後(1月24日)から大阪場所に控える36日間で完全な休日は2日だけだったそうです。
地元大阪での祝賀パレード、結婚披露宴を2回、テレビ出演、DVDの宣伝活動、様々なイベント参加、などタレント並みのスケジュール。ファンへサービス、大相撲のPRと言えば聞こえは良いですが、イベント等に参加すればギャラも入りますから美味しい思いもするわけです。
琴奨菊に違わず、力士は幕内で初優勝を果たすとなるとニューヒーロー誕生と日本中が盛り上がり一気に期待度アップ。凱旋パレード、テレビ出演、全国から様々なイベントのオファーが殺到、スケジュールはパンパンになってしまいます。
するとどうなるか?
琴奨菊がいい例で、力士にとって一番大事な稽古ができなくなってしまいます。1日稽古をしないと筋肉が落ちるとも言われますが、何日も集中した稽古ができなければどうなるかわかるでしょう。
このように、初優勝後、あるいは大関昇進後、横綱昇進後、土俵外での祝賀的スケジュールに追われ稽古不足で不振に陥るというケースは凄く多いのです。
ちなみに平成で横綱昇進後最初の場所で優勝したのは貴乃花1人(13-2)、
他は多くても11勝止まりです。
琴奨菊も本格的な稽古を始めたのは本場所の一週間ほど前からだったとか。体質を変えるために続け成果を挙げていた筋トレも疎かにしていたのでしょう。
力士は土俵で最高のパフォーマンスを見せることが一番のファンサービス。
自己管理は大切ですが、大相撲協会もそして部屋の親方も、イベントやメディアの露出が過剰にならないよう気をつけてほしいもの…
とはいえ、これも試練と受け止め、乗り切ってこそ横綱といえるのでしょうか。
初優勝で横綱へ!
ここまでで稀勢の里が綱取の可能性が高いと見る理由がわかってもらえたでしょうか。
春場所を制していたら、あちこちの祝賀イベントに参加し、行く先々で「次は横綱」「期待している」とプレッシャーをかけられる。なのに稽古する時間が少ない…ってことにならなかったわけです。
場所後のスケジュールは今まで変わらないでしょう。稽古はみっちり出来ているようで体調も良さそう。下位に取りこぼしなく、少なくとも横綱2人を撃破すれば賜杯は見えるはず。
(ちなみに過去一度も幕内優勝をせずに横綱になったのは双羽黒だけ)
稀勢の里には是非優勝し堂々胸を張って横綱になってほしい。18年ぶりの日本人横綱誕生までカウントダウンは始まっています。