「子どもたちに憧れられる仕事にしたい」廃棄物収集業界に革命を起こす横浜環境保全 の代表・髙橋義和さんにインタビュー

2020/01/24
マガジンサミット編集部

近年は環境問題が人類の大きな課題としてクローズアップされ、そのなかでも廃棄物処理の重要性が高まっています。ユニークな取り組みで廃棄物収集業界に大きなイノベーションを起こしている企業「横浜環境保全」の代表・髙橋義和さんにインタビューし、仕事に対する思いや現在の夢、独自の経営哲学などを明かしてもらいました。

横浜環境保全代表・髙橋義和さん

1974年生まれ。横浜市出身。髙橋さんは先代社長の良一さんの長男として生まれ、高校時代は名門で知られる横浜高校ボクシング部の主将として活躍。卒業後はガス工事業界に飛び込み、東京ガス指定店に就職。激務をこなして社内で一目置かれるほどの存在となっていたが、2004年に父・良一さんの誘いで家業の横浜環境保全に入社。いち作業員として現場を学んだのちに事業を継承し、柔軟な発想力と「笑顔」にこだわった経営哲学で廃棄物収集業界に新風を巻き起こしている。

髙橋義和代表インタビュー

同社は、髙橋さんの曽祖父が戦後間もないころに「し尿の汲み取り業」として創業した「髙橋清掃」を含む複数の会社を前身とし、1972年に横浜市から第一号となる許認可を受けて一般廃棄物収集業を始めた歴史ある企業。現在、横浜エリアでのシェアは2割にのぼり、街で目を引くようなデザインの収集車(デザインパッカー車)をプロデュースするなど独自の取り組みで注目を集めています。

髙橋さんは廃棄物収集業界について、「もし明日、うちの車両が一台も走らなかったら、大げさに言えば100トンの燃えるゴミが横浜に残る。2日で200トン、10日経てば1000トンのゴミが残ることになるんです。大きな役割と社会的責任を担っていると認識しています」と明かしました。

高校卒業後にガス工事業界に就職していた髙橋さんは、父親の誘いで家業である「横浜環境保全」に入社し、3年間はいち作業員として働き、現場をしっかりと学んでから経営陣の一角となりました。順調に事業継承へと歩みを進めていたとき、人生が急転する出来事が起きました。このときのことについて、髙橋さんは「父親に病気が見つかりまして。検査したところ、肺がんだったんですね。ステージ4。『来年の夏を越えられるか分かりません』と宣告を受けました」と振り返ります。

以降は会社と病院を行き来することが日課となり、父親の快復を信じて疑わなかった髙橋さんですが、2011年7月14日に父・良一さんは他界。髙橋さんは当時を思い返して涙ぐみながら「毎日、いろんな話もしましたけど、まだまだ聞き足りないまま亡くなってしまった」と尊敬する父親への思いを吐露しました。

父・良一さんが遺した言葉は「清掃事業を永遠に」。その言葉の意味を深く考えた結果、髙橋さんは「社会から必要とされ続けていれば、どんな問題があったとしても(清掃事業が)潰れることはないだろう」という思いに至ります。その思いは同社のミッション・ビジョンとして文言化されました。

同社は『ミッション』として「未来 そして子供たちのために “環境保全事業”を通して地域社会に最も貢献する」という言葉を掲げ、『ビジョン』として「環境を守り、社会に貢献し、私たちを取り巻くすべての人たちの明るい未来を実現する」「社会へ、そして子供たちに誇れる会社にする」「全社員がひとつになり、お客様から信頼され、すべてに感謝し合える企業にする」という目標を提示しています。髙橋さんは事業だけでなく父・良一さんの信念までも継承したのです。

ミッション・ビジョンを実現するため、髙橋さんは「地域社会への貢献」に注力。子どもたちに塗り絵をしてもらい、その絵をゴミ収集車のデザインに生かしたり、子どもたちに喜んでもらえるノベルティグッズを制作したりと、以前にも増して精力的に活動するようになりました。

そういった活動の結果、デザインパッカー車(ゴミ収集車)を目にした保育園児たちが手を振ってくれるようになったそうです。子どもたちに手を振られたドライバーが笑顔になり、その光景を見た街の人たちにも笑顔があふれる……地域社会への貢献は着実に業界の変化を生み出しています。

髙橋さんにとって現在の夢は、廃棄物収集業を「将来あんな車に乗ってボクも仕事してみたいな!」と子どもたちに思ってもらえるような職業にすること。更にゴミ収集車は「子供たちの働く車人気ランキング」3位に上がる人気車輌ですが、車だけが人気ランキングに上がるのではなく、同社の行う事業が職業として「子供たちの就きたい職業人気ランキング」に上がるような将来を目指している。「子どもたちに憧れられるような存在になろう」という目標に向け、デザインパッカー車などの取り組みに今後も励んでいくとのことです。

デザインパッカー車などの取り組みで廃棄物収集業のイメージを一変させ、地域社会と手を取り合って事業を展開している横浜環境保全。業界に革命を起こす髙橋さんのアイデア力と経営哲学は、環境意識の高まりや地域と企業のかかわりが重要視されるようになった現代において今後も注目を集めそうです。

横浜環境保全

https://www.y-kankyo.co.jp/

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