「適切な政策をどのように形成すれば良いのか」。影響力を持つ方針の決定だけに、過去にもさまざまな論議と実践が展開されてきたが、最近になって新たな動きが出てきている。EBPM(Evidence Based Policy Making)がそれだ。
EBPMの普及を図る組織の一つがRIETIで、12月25日に「エビデンスに基づく政策立案を進展させるために」と題したシンポジウムを開催。浸透の促進を図った。
会場には満員になる人々が集まり関心の高さを窺わせた(満員の会場.JPG)
EBPMはそもそも、政策の目的を明確化して、本当に効果の上がる行政手段を証拠に基づいて決めていく取り組みだ。資源エネルギーや防災などの分野で、より実効的で効率的な行政を実現するアプローチとして注目されている。
今回のシンポジウムでも、EBPMの知見を持つパネリストが参加。その中で、三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部兼行動科学チーム(MERIT)主任研究員で経済産業研究所(RIETI)コンサルティングフェローを務める小林庸平氏が講演でEBPMについてのおさらいを披露。
同氏は「EBPMはエビデンス(政策の因果効果)を政策的な意思決定での活用」だとしながら、エビデンスを意思決定に使うことが目的で、そのためにはエビデンスを作ることが重要だとし、同氏は「政策現場に活かして初めてEBPMだろう」指摘した。
会場からの質問に答える三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部兼行動科学チーム(MERIT)主任研究員で経済産業研究所(RIETI)コンサルティングフェローを務める小林庸平氏(左)とシカゴ大学公共政策大学院准教授の伊藤公一朗氏(小林氏&伊藤氏.jpg)
小林氏によれば、その政策効果を測定するための方法の一つが、ランダム化比較試験。政策などの影響を受ける人々と、影響を受けない人々の反応をそれぞれ観測し、結果の差異から効果を見積もる方法だという。
「検証してエビデンスを作る効果検証をしていくことが大事」(小林氏)だという。
ただ、EBPMが万能かというと、疑問符もつきそうだ。講演後の質疑応答で小林氏も、会場からの「データの取れない政策がなおざりにならないか?」との趣旨の質問に答える形で解説。計測できる政策しか検証できないため、測れない点に真摯に向き合う必要にも言及した。
また、イェール大学助教授・スタンフォード大学客員助教授でもある成田悠輔氏は、デジタル化の必要性を指摘。EBPMとウェブ業界と比較して、大手のEコマースサイトなどで、データを生成して、即座に対応を進めている現状を紹介し、政策形成の現実との差異をくっきりと描いて見せた。
EBPMが政策決定にどのように影響し、新たに作られた政策の実践につながるのか。また、われわれの日常的な環境をどのように変えていくのか注目だ。