先日、SEKAI NO OWARIのFukaseさまが手がけた初の絵本『ブルーノ』(福音館書店)が刊行され話題になっております。絵本業界では、昨今、タレント・アーティストの絵本参入が盛り上がっております。この背景には、大人の絵本ファンの急増があるようでございます。自分のために絵本を買う大人、大人を意識した絵本、それぞれ増加傾向でございます。なかでも、こちらの『ブルーノ』は、かなり本格的でございます。
Fukaseさまが長年あたためていたストーリーを個性的な油絵で描いた絵本で、表と裏から二つの物語が楽しめるスタイルになっております。王様と国民との物語ですが、大人も思う存分共感できる、考えさせられる世界観、内容になっております。普段、絵本を読まれる機会のない方は、是非一度手にとってもらいたい絵本でございます。「最近の絵本って、こんななんだぁ」と思われるにではないかと存じます。
そんななか、時を同じくして出版された、もう一冊の絵本『きつねのぱんとねこのぱん』(世界文化社)が、絵本ファンの間で話題になっております。
実は、こちらの絵本、なんと約50年前に描かれた絵本なのでございます。この絵本は1973年に世界文化社の月刊絵本『ワンダーブック』の2月号として刊行されました。その後、書籍化、市販化されることはなく、約50年の時を経て2021年10月に出版されたのでございます。
その背景にあるのも、大人の絵本ファンの増加ではないかと。大人の絵本ファンの増加と比例して、絵本がテレビ、ラジオをはじめ、各メディアで取り上げられる機会が増えてまいりました。そんななか、マツコ・デラックスさま、又吉さまなど、多くの著名人が「こんな面白い絵本あったの!?」と絶賛されているのが、長新太さまの絵本でございます。ナンセンス絵本のレジェンドでございます。亡くなられた後も、過去の作品が、毎年のように出版(復刊)されている人気絵本作家さまでございます。その長新太さまが、この『きつねのぱんとねこのぱん』の絵を描かれているのでございます。文章を担当されているのは小沢正さま。こちらも児童文学界のレジェンドでございます。まさに、幻の名作なのでございます。
ちなみに、こちらの絵本の帯で紹介文を書かれているのが、お笑いコンビNON STYLEの石田明さまでございます。「たくさんの努力をしてやっとの思いで持てた自信。そんな自信がポキッと折られることがある。そんなときに読んでほしい。落ち込まなくてもいい。諦めなくていい。みんな一緒なんだと思わせてくれる作品です」と、コメントを寄せられております。
さらにちなみに、こちらの絵本、最後のベージに対談ページがございますが、こちらにワタクシも参加させて頂いております。
令和の大人絵本ブームを反映した『ブルーノ』、そして50年前の幻の名作絵本『きつねのぱんとねこのぱん』、こちらを読み比べながら、50年の時代の変化を感じるのも、大人な読書の秋の過ごし方ではないかと存じます。
今年の読書の秋は、是非、大人絵本で過ごされてみてはいかがでございましょう。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)