VDT利用時間増大で子どもにも広がるドライアイと角膜の傷。医師による注意点と簡単ケアを徹底紹介

2022/10/06
マガジンサミット編集部

仕事中はもちろん、通勤中、ご飯中、寝る前…日がな一日中PCとスマホ画面を見っぱなしの筆者。最近、まばたきをしただけで目に激痛がはしることがあります。皆さんはそのような経験ありませんか?

1日のVDT(PC、タブレット、スマホなどディスプレイを持つ機器)利用時間は16年前(2006年)の約3.8倍に拡大しており※、特にスマホ利用による生活スタイルは激変。利用率は10代~40代で9割、50代や60代でも8割※を超えています。

※「2022年メディア定点調査」(博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所)/ 総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」、「平成24年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」

今、VDT浸透により現代人の瞳に大問題が起きているそうです。これはどうやら他人事ではなさそうな話。そこで今回は「現代人の角膜ケア研究室」主催によるメディアセミナーに参加し、眼科医師による現代人の目の酷使環境や角膜ケアの重要性、そして簡単にできる医師の“おススメ角膜ケア”について取材しました。

写真左)杏林大学医学部 眼科学教授、日本角膜学会 理事長、日本コンタクトレンズ学会 理事の山田昌和先生。写真右)伊藤医院眼科副院長、日本角膜学会評議員の有田玲子先生

VDT利用拡大による角膜への影響

杏林大学医学部 眼科学教授の山田昌和先生によると、通常時のまばたき回数は1分間に約15~20回ですが、長時間VDTを使用しつづけるとその回数は1/4に減るそうです。回数が減れば涙液層が不安定化しドライアイの症状に。放置し続けると角膜上皮が傷つきやすくなり角膜上皮障害(角膜びらん、感染性角膜炎などの疾患)になるリスクが高まります。

角膜とは、目の表側にある厚さ0.5㎜の透明な膜。5層からなり一番外側にある角膜上皮層は、生きた細胞がむき出しになっているため傷つきやすく、通常は涙液層が膜をつくり健康に保たれています。しかし涙液層がなくなり、角膜がむき出しになると表面が剥がれ、異物侵入やまばたきでも傷がつく状態になってしまいます。

ドライアイ推定患者数は国内で約2,200万人と増加中であり、山田先生は「文字がぼやける、常に目が渇いてショボショボするといった、カスミ目、痛み、ゴロゴロ感などの症状を単なる疲れや年齢のせいと放置してはいけない」と話し「IT眼症を放置しドライアイによる傷が増え角膜表面の透明性が損なわれれば、近視のリスクも高まる」と警鐘を鳴らします。さらに、生活変化によるドライアイによる傷リスクは子どもにも影響が及んでおり、もはやドラアイは大人だけの症状ではないそうです。

大人も子どももアイケアリテラシーの向上を

伊藤医院眼科 副院長の有田玲子先生らが行った「親子の目の酷使・実態調査」(2022年7月22日~24日。小学校5~6年生の子どもを持つ30代~50代の親500人※オンライン授業を積極的に実施している地域を選定)では、VDT利用時間は大人が平均5時間に対し子どもは平均2.5時間であり、うち目の疲れを感じている頻度は、「毎日感じている」と答えた大人が28.8%、子どもは5.8%。また、「週1日以上疲れを感じる」大人は46.0%、子どもでは30.6%となったそうです。

この結果について有田先生は「大人も子どもも4人に1人が角膜の傷リスクを抱えているが、多くの人が十分なアイケアを行っていない」と指摘。「子どものアイケアは大人が気にかけてあげなければ難しく、さらに親がアイケアをしてない家庭の96.1%で子どものアイケアができておらず、大人が率先して行い習慣化していくことが重要」としています。

簡単にできる予防とアイケアの注意点

では、どのようなケアをしてドライアイを予防、改善したら良いのでしょうか。まずはドライアイか否かの可能性を調べる「まばたき測定テスト」をしてみることから始めます。

まばたきをせずに何秒目を開けていられるかを測定するもので、まぶたが閉じようと動いたり、ピクピクと少しでも動いたりした場合はそこでストップ。10秒以下ならばドライアイの可能性があります。

さらに山田先生は、目を労わるため長時間VDTを使用するさいに意識すべきポイントについて以下のようなアドバイスをしています。

・意識的にまばたきをして1時間に1回のペースで遠くをボ~っと眺める。

・目をつぶって毛様体筋の緊張をほぐしながら4~5分間の休憩をとる。

・目先は下向きにする。

・ディスプレイの照度を適度(500ルクス以下)にする。

・瞳が乾燥しないようにエアコンや扇風機の風が直接あたらないようにする。

ちなみに涙が乾きやすい原因は、まばたきの回数以外にも涙の質の低下(油不足)や乾燥・風などによる外的要因が挙げられ、年齢や先天的疾患、その他の疾患による原因も考えられるため、気になる症状がある場合は専門医に相談することをおススメします。

また、今日から実践してほしいアイケア方法として有田先生から「目を温めるケア」「点眼薬の適度な使用」「まばたきエクササイズ」の3点を挙げました。

「目を温めるケア」

40度くらいの蒸しタオルまぶたに5分くらいあて温めることで、涙の蒸発を防ぐ“油層”を溶かし“涙の質”をアップさせます。

注意点は、蒸しタオルを直接、まぶたに触れさせないようにすること。まぶたが濡れてしまうと気化熱で温度が下がってしまうため、ポリ袋などに蒸しタオルを入れて、さらに乾いたタオルでポリ袋ごと巻くなどの工夫をすると良いでしょう。

「点眼薬の適度な使用」

点眼薬は、角膜修復機能のあるビタミンA入りのものを使用し、防腐剤無しの無添加の商品を選びましょう。

瞳が乾いたからといって注し過ぎには注意。点眼薬を注し過ぎることで目に必要な成分も洗い流してしまう危険性があります。起床時など時間を決め、目薬の説明書にある点眼回数を守りましょう。

有田先生直伝「まばたきの筋トレ」

長時間VDTを使用するさいには、眼輪筋をほぐす有田先生おススメの「まばたきの筋トレ」1セット5回を1時間ごとに行うと効果的です。

1.パチ・パチと2回まばたきをし、3回目はギューと強くつぶる。※つぶるときは上まぶたに力を入れるような感じで。眉間にしわが寄らないように気を付けましょう。

2.やや上をむき、目を細めて強い光を見たときのような“まぶしい目”をします。このとき下まぶたを引き上げるような意識で目を細めましょう。

3.やや上をむいたまま、眉山の下のまぶた部分を指で引き上げ“キツネの目”をつくり、目を閉じます。上まぶたを指でひきあげることで下まぶたを強制的に鍛えることができます。

写真)上まぶたを指であげて下まぶたを鍛える“キツネの目”。

実践してみると、たったこれだけの動作で目がすっきりとし疲れも和らぎますが、この動作を1セット5回、1時間ごとにやるのはなかなか難しそう。有田先生によると、例えばトイレに行くたびにやるなど習慣化して取り組むと継続しやすいそう。先生による実演動画は、youtube(https://www.youtube.com/watch?v=Xj3pdnT3_nA)にて視聴できます。

酷使しがちな現代人の目。大人も子どもも適切なアイケアを習慣化することで長期的なリスクを減らし、角膜の働きを正常化することが大切です。疲れ目やドライアイによる目の痛みなどを感じている人は、紹介したアイケアを実践して目を労わってみてはいかがでしょう。

なお詳細は、専門家によるアドバイスやセミナーレポート、調査リリースなど、角膜の健康を守り生活の質を高めるために役立つ情報を発信している「現代人の角膜ケア研究室」https://www.kakumaku-lab.jp/ まで。

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