最近、「エシカルファッション」や「サステナブルファッション」という言葉をよく耳にするようになりましたが、実のところあまり意味が分かっていないという人もいるかもしれません。これらは「環境に配慮した」という意味を含むファッションのこと。ファッション業界は今、世界的に環境問題に取り組んでいます。
昨年12月、日本の大手繊維専門商社である豊島株式会社が、ファッション製品のサステナブルな素材調達についてWWFジャパン(世界自然保護基金)と協働することを発表しました。
この記者発表会の内容から、ファッション業界の課題と取り組みについて、業界の最新事情を紹介します。
■パンダのロゴマークがついた衣類が店頭に並ぶ!?
豊島とWWFジャパンが協働を発表
年間1億枚の衣服を供給し、国内アパレル産業を支える原料を取り扱う素材事業から最終製品を取り扱う製品事業までを手がける「繊維業界のスペシャリスト」といわれる豊島は、2019年12月10日に記者発表会を開き、WWFジャパンと協働して、サステナブルな繊維素材の調達を推進していくことを発表しました。
豊島とWWFジャパンは3年契約をし、今後、半年をかけて目標を設定していくといいます。
WWFジャパンは「繊維業界の優先的な環境課題と対策」として、「1.持続可能な水利用」、「2.責任ある綿の生産と調達」、「3.二酸化炭素排出削減」の3つを挙げました。
WWFのパンダマークのタグ
双方は、繊維素材の調達の観点から、当面はオーガニックコットン、テンセルなど環境に配慮した素材を90%以上使ったアイテムにWWFジャパンのロゴやパンダマークのついたタグをつけたものを広めていきたいと述べました。
洋服を見ただけでは、その洋服の背景が見えてこないため、タグがついていることによって、少しでも“知るきっかけになればいい”という意図が込められています。
●世界で一番安全・安心の「トルコオーガニックコットン」
トルコオーガニックコットン
このタグがつけられる素材の一つ、オーガニックコットンの中でも、豊島が注力しているものの一つが、「トルコオーガニックコットン」です。
トルコオーガニックがは世界で一番、安全で安心なオーガニックコットンといわれており、「誰がこのコットンを作ったのかがわかる」トレーサビリティコットンだといいます。
2019年3月、豊島はトルコ最大規模のオーガニックコットン生産量を誇るウチャク社と、日系企業向けのオーガニックコットン糸の独占販売契約を締結し、力を注いでいます。
今後は、ますます、このトルコオーガニックコットンを使用した商品に出会える日が来るでしょう。
■ファッション業界でサステナブルな取り組みが進む理由
WWFジャパン 自然保護室 東梅貞義氏のプレゼン風景
近年、地球温暖化が進んでいる背景には、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やすことによる、二酸化炭素の大量な大気中への放出があることは、すでに知っていることでしょう。しかしそれは石油産業だけではなく、私たちが捨てている衣服を廃棄する過程でも起こっているのです。
繊維産業は環境への負荷が大きく、世界で一番目の石油産業に次ぐ、二番目の環境汚染産業だといわれています。
WWFジャパンの担当者は、「このことが服を買う一人一人に伝わっていない。それを伝えることで、次の10年には、ファッション業界もサステナブルになれる」旨を話しました。
豊島株式会社 豊島半七社長のプレゼン風景
「“大量生産・大量消費”から“持続可能な社会”へ」。こうした取り組みが世界的に進む中、豊島としてはサステナブル素材の普及・開発や、ファッションテクノロジーによる生活の改善を実施していく旨も示しました。
■ファッションとの賢い付き合い方
今後、ファッションを楽しみ、日々利用する立場として、どうファッションと付き合っていくのがいいでしょうか。そのヒントが、この発表会で得ることができました。
●プロセスを知ることで服選びも楽しくなる
デザインはもちろんのこと、その服が作られる過程など全体のプロセスや、環境に配慮した新素材を知ったりすることで、服選びも楽しくなると考えられます。
●環境にやさしい素材は着心地の良さもついてくる
オーガニックコットンやテンセル素材など、環境にやさしい素材は、同時に柔らかく着心地がいいというのも特徴です。
●次世代へつなぐ考え方を持ってファッションを選ぶのはカッコいい
自分がサステナブルなファッションを率先して選んでいくことは、次世代の生活環境を改善するための一助となること。責任を持ち、かつ、ファッションを楽しむ姿勢は、一人の地球人としてカッコいいというメリットもあります。
これからは、店頭でパンダのロゴマークを目にする機会が増えていくことでしょう。
その際には、ぜひ率先して選んでいきたいものですね。
【取材協力】
豊島株式会社(https://www.toyoshima.co.jp/)