暴力問題やパワハラ問題など、日本でも度々、マスコミを騒がす教育の現場。どうやら昨今では、どの国でも同じ問題を抱えているよう。
進学校のエリート教師が問題児だらけの中学校へ赴任。奮闘するフランス産の教育は大変だ映画『12か月の未来図』が現在公開中。
実はエロおやじゃねーか!!
そもそも、主人公の中年エリート教師が問題児だらけの中学へ赴任する理由が最高なんです。パーティーで知り合った美女に鼻の下を伸ばし、「ベテラン教師の派遣政策」を熱弁していたら、その美女は国民教育省の職員だったというアホ展開。バッチリ主人公に感情移入できました。官房長官は早速、移民の子供たちが多く在学する教育困難中学へ主人公を赴任させます。下心から問題だらけの学園ドラマが景気よくスタート。1年間という任期の中で主人公はどのような教育にトライしていくのか?!
フランスの社会問題
現在、フランスで大きな社会問題になっているのが、移民の子供たちの学力低下による教育格差。ルーツの様々な移民の子供たちの間では問題も多種多様。幼稚園レベルにやりた放題、落ち着きのない生徒たち。しかも移民の子供ばかりだから名前さえ読めないレベル。最初は、あたも名無しに生徒たちを叱りつける主人公。所が生徒たちの考えや家庭事情を知っていくうちに思いもよらない行動にステップアップ。他の教師たちを敵に回し、生徒を守ろうとする、グッとくるドラマへ発展していきます。
実はドタバタ喜劇?!
一見して、説教臭いヒューマンドラマかと思いきや、“携帯を生徒に取られた疑惑事件”や“大麻入りケーキ事件”、“ベルサイユ宮殿でかくれんぼ事件”など、破天荒なコメディ描写で微笑ましい笑いを提供。さらに、生徒たちに諦めの感情しかない若い教師たちは生徒を「クソ」呼ばわり。アメリカの大学生みたいなパーティーでアルコールの力&踊り狂いでウップン晴らし。そんな光景を目にするうち、「生徒たちは悪くないのでは?」と生徒たちを信じ始める主人公。すると生徒たちも変わってくる訳です。
本作の主題とは外れるかもしれませんが、著名な作家である父親に劣等感を抱き、周りの人間に「融通が利かない」と言われていた主人公。物語が進み、教育へのアプローチを考えてくうち、どんどん生徒たちの自由を優先してく所も、主人公の父親から受けた教育と真逆なんだろうと深読みでき、その変化にグッときてしまいました。
本気度がフライングした監督
本作が長編デビュー作となるオリビエ・アヤシュ=ヴィダル監督は、フォトジャーナリスト出身。リアルを追及するあまり、2年間も中学校へ通い、撮影に9ヶ月を費やす、本気度がフライングした人物でもあります。500人の生徒と40名の教師たちと学校生活を共にして、本作の脚本を執筆。本作を観れば、子供たちのリアルな会話や措かれている状況などのリアルさが伝わってきます。
そんなやり過ぎヒューマンドラマ『12か月の未来図』が日本公開中‼今後、様々な人種の子供が増えていくであろう日本にとっても“未来図”になりえる一本です。
(C)ATELIER DE PRODUCTION - SOMBRERO FILMS - FRANCE 3 CINEMA - 2017
ギボ・ログ★★★★☆(星4つ)